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シンパシーの意味とは? エンパシーとの違いや類語・対義語

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「シンパシー」は、相手に同情・共感すること。では「エンパシー」とはどういう違いがあるのでしょうか? ライティングコーチの前田めぐるさんに、「エンパシー」との意味の違いや「シンパシー」の類語・対義語、使い方を例文と共に解説してもらいます。

「シンパシーを感じる」「シンパシーを持つ」。私たちが日頃よく使う「シンパシー」という言葉は、英語の「sympathy」に由来しています。

日本語と英語とで、意味や用法に違いはあるのでしょうか? 気をつけたいことも含めて、解説します。

「シンパシー」の意味と語源

まずは「シンパシー」の意味と語源を確認しましょう。

「シンパシー」の意味

辞書によれば「シンパシー」は次のような意味です。

シンパシー【sympathy】
同情。共感。共鳴。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「シンパシー」は、相手のつらさに同調したり、何らかの感情を共有したり、相手の意見や言葉に共鳴したりすることを意味する言葉です。

「シンパシー」の語源

「シンパシー」は外来語で、語源は英語の「sympathy」です。

元々は、ギリシャ語の「syn(=一緒)」と「pathos(=苦しむ)」を組み合わせた言葉に由来しています。

一緒に苦しむ。つまり、仲間のように共に苦しみ、共に感じるという意味の言葉が語源になっています。

「エンパシー」との違い

「シンパシー」と同じような言葉で「エンパシー」という言葉があります。マーケティングではよく聞かれる言葉です。

「エンパシー」を辞書で引くと、下記のように記載されています。

エンパシー【empathy】
感情移入。人の気持ちを思いやること。
[補説]シンパシー(sympathy)は他人と感情を共有することをいい、エンパシーは、他人と自分を同一視することなく、他人の心情をくむことをさす。
(『デジタル大辞泉』小学館)

「シンパシー」は「同情、共感」という意味です。一方「エンパシー」は「共感、感情移入」という意味です。

これら2つの言葉は、共感に至るまでの流れに違いがあります。

「シンパシー」は他人と気持ちを共有する「自然な感情の動き」を表す言葉です。

一方、「エンパシー」は、別の価値観や考え方を持つ他人に自分を投影し、その人が何を考え、どう感じるのかを想像する力を意味する言葉です。

例えば仕事で失敗して落ち込んでいる人を見た時。

「なんとなく自分までつらい気持ちになってきた」というのがシンパシー。

「その人にとってその仕事がどういう意味を持っていて、なぜそこまで落ち込むのか考えて理解しようとする」のがエンパシーです。

つまり、「シンパシー」は感情の動きによるもの、「エンパシー」は知的な思考の作業によるものだといえるでしょう。

「テレパシー」との違いは?

また、「テレパシー(telepathy)」という言葉もあります。「シンパシー」よりも長く使われており、なじみの深い外来語ですね。日本語の辞書にも載っています。

テレパシー【telepathy】
ある人の精神から他の人の精神に思考・観念・感覚などの内容が伝達されること。実証的には確認されていない。遠感現象。精神感応。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

辞書にも「遠感現象」とあるように、「テレパシー」は、いわば超能力のようなものです。

その能力自体の実証はされていなくても、日常生活の中で相手の考えを読み取るマジックを見た時や、偶然相手と同じことを考えていた時などに、私たちは「テレパシー」という言葉を使うことがあります。

「テレパシー」には、「シンパシー」のような共感や同情の気持ちはなく、普段私たちが使う場合の多くは、互いの考えが一致した際の「以心伝心」に近い意味です。

「シンパシー」はどんな時に使えるのか?(例文つき)

ここからは、「シンパシー」という言葉はどんな時に使えるのか、場面ごとに解説します。

相手に共感して意気投合した時

 

私達は相手と話をするうちに、自分との共通項を見出して、共感することがあります。そのように意気投合した場合に「シンパシー」を使えます。

例文

・私達は、初めて会ったにも関わらず、あまりにも共通項が多すぎて、互いにシンパシーを抱いた。

相手のビジョンに共鳴した時

ビジネスの場面で、リーダーが話す会社のビジョンに希望を感じ、共に尽力して実現したいと共鳴した時に「シンパシー」を使えます。

例文

・社長が唱えるビジョンに聞き入ってしまい、自分も頑張りたいとシンパシーを持った。

映画や本の中の登場人物に同情を覚えた時

映画などの登場人物が苦労しているのを見て、「自分にも同じようなことがあった」と、同じようにつらい気持ちを感じることがあります。このように他人に同情した時にも「シンパシー」を使えます。

例文

・映画の主人公があまりにも運がなく、自分のことのようにシンパシーを覚えた。

「シンパシー」を使う上での注意点

英語の「sympathy」には、「同情、思いやり、哀れみ、弔慰(ちようい)、弔問(ちょうもん)、お悔やみ」などの意味があります。

相手が事故や災害など思いがけないトラブルに遭った時や、誰かが亡くなった時など、使う機会は限られています。

日本語の「シンパシー」が相手への共感を示す言葉だからといって、英語でも同じ感覚で「sympathy」を不用意に使うことのないようにしましょう。

「そんなに哀れみを受ける覚えはない」と相手を怒らせたり困らせたりするかもしれないからです。

「シンパシー」の類語(例文つき)

ここでは、「シンパシー」の類語や言い換え表現を紹介します。

「共鳴」

「共鳴」は、「人の話を聞いたり様子を見たりして、主義主張や考え方などに同感すること」です。

例文

・私がこの会社に入ったのは、社長の生き方に共鳴したからです。

「同感」

 

「他人と同じように感じること」を意味します。自分を主語として「同感する」「同感だ」と使う場合がほとんどです。

例文

・あなたの意見に、私も同感です。

「意気投合」

「互いに気持ちが一致すること」を意味します。

例文

・私と彼女は、会ったその日に意気投合した。

「シンパシー」の対義語(例文つき)

次に、「シンパシー」の対義語を紹介します。

「反感」

「相手に不快を感じたり、逆らったりする気持ち」を意味します。

例文

・彼は、幼い頃から父親に反感を持つことが多かった。

「違和感」

「周囲と調和が取れていない感じ。しっくりしない感じ」を意味します。

例文

・あなたがいくら説得しようとしても、私には違和感しかありません。

「シンパシー」は共感性の高い日本人になじみが深い言葉

英語では「sympathy」をネガティブな場面でしか使わないのに対し、日本語では「シンパシー」をポジティブ・ネガティブ両面で使うことを解説しました。

古くから他者への共感を持つ機会が多い、日本人ならではの用法が広まったといえるのかもしれませんね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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