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「溜飲が下がる」の意味は? 類語や「溜飲を下げる」との違いも解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「溜飲が下がる」という言葉を聞いたことはあっても、正確な意味は分かっていないという人も多いのではないでしょうか。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに「溜飲が下がる」の意味や類語、対義語について、例文とともに使い方を解説してもらいます。

「溜飲を下げる」は、「胸につかえていたことがなくなってスッキリする」という意味の言葉です。

例えば、今からコンペという時に「ぜひ突破してスカッとしましょう」というのと「ぜひ突破して溜飲を下げましょう」というのは同じ意味です。

分かりやすい「スカッとしましょう」に比べ、漢語使いの「溜飲を下げましょう」はやや堅めの語感ですね。意味を共有できる相手に対して使うと、知的な印象も与えられるでしょう。

「溜飲が下がる」とともに、詳しい意味や使い方を考えてみましょう。

「溜飲が下がる」の意味と語源

まずは、「溜飲が下がる」の意味と語源を確認しましょう。

「溜飲が下がる」の意味は「胸がすっきりする」

「溜飲が下がる」の読み方は、「りゅういんがさがる」です。

辞書によれば、次のような意味です。

りゅういんがさがる【溜飲が下がる】
胸につかえていた不平不満が解消して気持ちがよくなる。胸がすっきりする。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「溜飲が下がる」の語源

「溜飲が下がる」の「溜飲」の意味は、次の通りです。

りゅういん【溜飲】
胃の具合が悪く、酸性のおくびを生ずること。
胸焼け。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「おくび」とはゲップのこと。「溜飲」とは胃の調子が悪く、胸焼けして出てくる酸っぱい液や、ゲップのことで、ここでは「胸につかえている不平不満の例え」です。

不平不満があると、心理的にもやもやした状態のままで落ち着きませんね。

つまり、「溜飲が下がる」とは、そんな不平不満が消え去り、スカッと爽快な気分になることを意味する慣用句です。

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」はどんな時に使えるのか?(例文つき)

「溜飲が下がる」と「溜飲を下げる」は、具体的にどんな場面で使えるでしょうか?

他人を困らせている相手が処分された時

パワハラで部下を困らせていた上司が会社にバレて処分された。カスタマーハラスメント(顧客によるハラスメント)でお店に理不尽な苦情を言ってくるお客さまが他のお客さまから叱責された……そんな場面に遭遇したことはありませんか?

立場を利用して高圧的に接してくる人は、困ったものです。そのような人が、他人からやりこめられて、自分や周囲の気持ちがスカッとした時に、「溜飲が下がった」を使えます。

例文

・上司のパワハラが会社にバレて処分され、私たち部下の溜飲が下がった。

ある人物へさらに厳格な処分を求める時

ある人が処分を受けたものの、自分や周囲が「(周囲が受けた迷惑に比べれば)それくらいでは生ぬるい」と感じ、より厳格な処分を求める時、「溜飲が下がるわけではない」という使い方もできます。

例文

・パワハラをしていた上司が訓告を受けたが、それくらいで私たちの溜飲が下がるわけではない。

ライバルに勝った時

負け続けていた試合に勝った。王座を奪還した。万年2位だった営業でトップになれた。勝敗を決する場面で宿敵ともいえる相手に勝てた時「溜飲を下げた」を使えます。

自分が主語でも、自分以外の人が主語でも使えます。

例文

・彼は、ずっと不通過だったコンペで初めて企画が通り、溜飲を下げた。

たまっていた不平不満を吐き出したい時

心の中にたまっている不満を吐き出すよう他人に勧める時、あるいは自分でそうしなくてはと考えている時に、「溜飲を下げる」を使えます。

例文

・あなたは、今抱えているそのモヤモヤを全部吐き出して、溜飲を下げる方が良い。

・誰でも良いから、話を聞いてほしい。洗いざらいぶちまけて、溜飲を下げたい。

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」を使う時の注意点

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」を使う時は、下記の2つに注意しましょう。

「溜飲が下がる」と「溜飲を下げる」では意味が異なる

「溜飲が下がる」のほかに、「溜飲を下げる」という言い方もあります。

どちらも、最終的に気分がスッキリすることには変わりありませんが、「下がる」は自動詞、「下げる」は他動詞です。この違いがあることで、気持ちが晴れるまでの過程が異なります。

「溜飲が下がる」とは、「自分の働きではない何らかの働きによって、つかえていた不平不満が消え去り、すっきりした気分になる」という意味です。

いっぽう、「溜飲を下げる」とは「自分の働きによりつかえていた不平不満を解消して、すっきりした気分にさせる」という意味です。

「溜飲が晴れる」「溜飲を晴らす」は間違い

「溜飲が晴れる」「溜飲を晴らす」という表現を聞いたこともあるかもしれません。

しかし、例えば負け続けていた試合にようやく勝って晴れ晴れした気持ちになった時に「溜飲を晴らす」とは言いません。これは、「雪辱を晴らす」との混同だと思われます。

負けた時の悔しい気持ちがあって落ち着かない状態が、自ら試合に勝つことによってスッキリした。

そんな場合は、自分の力が状態を変えたのですから「試合に勝って、溜飲を下げた」と言うのが正しい使い方です。

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」の類語(例文つき)

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」に似た意味の言葉、言い換え表現を紹介します。

「スカッとする」

「気持ちが晴れて、爽快になる」という意味の言葉です。

「溜飲が下がる」と同じような状況で使えます。ただし、不平不満が募っている時だけではなく、単純に晴れやかな気持ちになる時も使えます。

例文

・いつも約束の時間に遅れる相手の担当者が、上司から怒られてスカッとした。

・バレーの試合では日本人選手のアタックが決まるたびに、スカッとする。

「憂さ晴らしをする」

「お酒を飲んだり、スポーツをしたりと、気持ちが晴れやかになる何らかのことをして、苦しさやつらさを忘れ去る」という意味です。

「溜飲を下げる」と似ていますが、相手をやりこめるような解決法ではなく、自分が忘れることで気持ちを晴らそうとする方法です。

例文

・その日は、お酒を飲んでさんざん愚痴をぶちまけて、かなり憂さ晴らしをした。

「胸がすく」

気分がせいせいする。心が爽やかになること。何らかの理由により、爽快な気持ちになることを意味する言葉です。

「溜飲が下がる」と近いものの、必ずしも具体的な不平不満が募っている時だけではなく、単にスカッとする時にも使います。

例文

胸がすくようなホームランが出て、スタンドが歓声に包まれた。

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」の対義語(例文つき)

「溜飲が下がる」「溜飲を下げる」の対義語を紹介します。

「胸が塞がる」

「心配ごとや悲しみ、不安などで、胸がふさがったようになる」という意味。日常的な喜怒哀楽よりも、深い悲しみに胸が覆われた状態の時に使います。

例文

・彼女は夫を亡くして以来、ずっと胸が塞がるような思いでいたに違いない。

「胸がつかえる」

「わだかまりがあって胸が詰まったように感じる」という意味。まさに「溜飲」がつっかえた状態です。

例文

・前の職場では言いたいことを言えずに、ずっと胸がつかえたような感じでした。

「鬱積(うっせき)している」

不平不満などが積もっている状態の時に使います。

例文

・苦情処理係になってからというもの、不満が鬱積している。

スカッと爽快な気持ちを文書で表したい時に使える言葉

「スカッとしましたね」は爽快な気分を仲間と共有するにはぴったりですが、やはり口頭での表現という印象です。

ビジネスメールや文書で使う場合には「溜飲を下げた」「溜飲が下がった」の方が、より知的な印象を与えるでしょう。

場面に応じて、使い分けると良いですね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです。

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