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「目をつぶる」と「つむる」で意味は違う? 類語も解説(例文つき)

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「目をつぶる」と「目をつむる」では、意味は違うのでしょうか? また、どちらが正しい表記なのでしょうか? 今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、「目をつぶる」「目をつぶる」の意味や類語、対義語について解説してもらいます。

「目をつぶる」と「目をつむる」

普段よく使う言葉ですが、どちらを使っても大きな問題はありません。迷ったら「つぶる」を使うと良いでしょう。

その理由とともに、「目をつぶる」の正確な意味や使い方を解説します。

「目をつぶる」の意味

「目をつぶる」という言葉には、次のような意味があります。

めをつぶる【目を瞑る】
(1)目を閉じる。また、眠る。
(2)死ぬことを婉曲にいう語。
(3)欠点・過失などを見ぬふりをして咎めない。
(4)がまんする。あきらめる。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

「目をつぶる」は、文字通り「目を閉じる、あるいは目を閉じて眠る」という意味ですが、他にも、その目を閉じる動作からくる比喩的な意味があります。

その1つには、「死ぬ」ということを婉曲的に表す意味があります。

また「欠点や過失が見えないふりをする」「欲しいものを我慢し、諦める」という意味もあります。

「目をつぶる」と「目をつむる」はどちらが正しい?

私たちが目にするかな遣いには、「目をつぶる」「目をつむる」の両方があります。

どちらが正しいという決まりはなく、報道記者のハンドブックなどでも統一された用例はありません。

どちらを使っても問題ありませんが、同じ文書の中では統一するようにしましょう。

ただし、広辞苑で「つむる」を調べると、「つぶる」を参照するようになっているため、どちらかといえば「つぶる」の方が多用されているといえます。

「つむる」と「つぶる」、どちらも漢字では、瞑想の「瞑」を用いて「瞑る」と書きます。

ただし、常用漢字ではないため、公文書ではひらがなで書かれます。

「目をつぶる」はどんな時に使えるのか?(例文つき)

「目をつぶる」という言葉は、実際に目を閉じる動作を表す他にも、いくつかの比喩的な意味があります。実際に目をつぶると、その意味に納得がいきます。

順に解説しましょう。

「目を閉じる」「眠る」という意味で使う時

まずは、読んだまま、見たままの意味です。特に眠くて仕方がない時などは、自然に目が閉じてしまいますね。

「目をつぶる」は単に目を閉じることや、目を閉じて眠りにつくことを意味します。

例えば、自分や第三者が眠る様子を表したり、目を閉じる様子を表したりする時などに使います。

例文

・母は「おやすみ」と言い、目をつぶった

・私は目をつぶって、今日起きたことを静かに思い返していた。

死ぬことを婉曲的に表す時

「死ぬ」という意味を婉曲的に表す時、「目をつぶる」という言葉を使います。

「永眠しました」という言葉がありますが、同様に「目をつぶる」も死ぬことを婉曲的に意味する言葉です。

人は、人生でたった一度だけ、死という永い眠りにつくために「目をつぶる」のです。

身内が逝去したことを婉曲的にいう時には使えますが、目上の人について「目をおつぶりになりました」と敬語にして使うことはしません。

その場合には、「永眠されました」「他界されました」などの方が適切です。

例文

・母は、「ありがとう」と言うと、そのまま静かに目をつぶりました。

誰かの失敗や過失を故意に見過ごす時

失敗をしたり、迷惑をかけたりした本人や親などの関係者に対して、それをとがめる立場にある人が使う表現です。

また、注意をする人のさらに上の立場の人が「今回は目をつぶってくれ」などと使う場合もあります。

「目をつぶる」という言葉には「欠点や過失を見て見ぬふりをする」という意味があります。

起こしてしまったことが消えるわけではありませんが、強引に見ないふりをすることで、処分なしにするわけですね。

ただし、目をつぶる側、迷惑を被った側としては何度も繰り返されては困ります。

そのため、「今回限りは」「今回だけは」「一度だけなら」「○○さんがそうおっしゃるなら」「○○に免じて」など、何らかの理由や条件と一緒に使われることがよくあります。

例文

・弁償だけしてもらえたら、被害届は出しません。謝ってくださって、誠意は感じたので、今回だけは目をつぶります。

・今回のことは、私に免じて目をつぶってもらえないだろうか?

何かを我慢したり、諦めたりして妥協する時

欠点を我慢したり、諦めたりする時に「目をつぶる」と使います。

ビジネスでもプライベートでも、私たちはさまざまなことで折り合いをつけながら生きています。

例えば、部屋探しなどは、その良い例です。

「駅には近いけれど、部屋が狭い」「日当たりは良いけれど、エレベーターがない」など、たいていは好条件と悪条件が同居しているもの。

そんな時、人は好条件に目を向け、悪条件を小さなマイナスとして我慢することが往々にしてあります。いわば、妥協です。

「目をつぶる」には、「見ないようにして、気持ちを抑える」という意味があります。

交渉上、「目をつぶる」という言葉を使うことで、相手に対して「全面的にOKと言っているわけではないですよ」と予防線を張ることもできます。

マイナス面も意識しつつ、前に進めたい契約の際には、この「目をつぶる」をうまく使うと良いでしょう。

例文

・本当はもっと駅近が希望でしたが、この際、徒歩20分には目をつぶります。

「目をつぶる」の類語(例文つき)

「目をつぶる」の類語・言い換え表現を紹介します。

「見過ごす」

「失敗や過失をとがめない」という意味の「目をつぶる」と同じ意味です。

例文

・これまでは大した損害ではないと見過ごしてきましたが、今回だけは社長に報告いたします。

「大目に見る」

「失敗や過失をとがめない」という意味の「目をつぶる」と同じ意味です。

「目をつぶる」は目を閉じて見えなくすることから来ていますが、「大目」とは「物の見方が大ざっぱ」という意味で、寛大なニュアンスがあります。

例文

・そこまで言うなら大目に見ますが、もし次もあれば、厳重処分は免れませんよ。

「まぶたを閉じる」

「目を閉じる」「眠る」という意味の「目をつぶる」と同じ意味です。

例文

・彼女はまぶたを閉じたかと思うと、すやすやと寝息を立てた。

「息が絶える」

「目をつぶる」の婉曲的な意味と同じで「死ぬ」「亡くなる」という意味です。ただし「息が絶える」の方が婉曲度は低く、意味が伝わりやすい言葉です。

例文

・彼は最後まで病気と闘ったが、昨夜未明に息が絶えた。

「涙をのむ」

「我慢する」という意味の「目をつぶる」と同じ意味です。

「目をつぶる」が「見ないようにしてじっと我慢する。気持ちを抑える」というニュアンスであるのに対し、「涙をのむ」は、「涙を抑えて悔しさを我慢する」というニュアンスです。

例文

・選手たちは、涙をのんで甲子園の土を袋に入れた。

「目をつぶる」の対義語(例文つき)

「目をつぶる」の対義語・反対の意味を持つ表現を紹介します。

「大目玉を食らう」

「にらまれ、怒られる」という意味。威勢よい叱声を受けながらも、どこかに愛情を感じているかのようなニュアンスを持つ言葉です。

例文

・彼は試験で赤点を取って、父親から大目玉を食らった。

「とがめる」

「人の過ちや怠慢を責め立てる」という意味。目上の人からとがめられることを、名詞にして「おとがめ」とも言います。

例文

・お客さまのお皿を間違えてしまいましたが、心を込めて謝罪したところ、とがめられることはありませんでした。

「妥協しない」

「我慢したり、諦めたりしないで、自分の主張や意思を貫く。ゆずらない」という意味の言葉です。

例文

・席間隔を開けても、当初の定員数は確保したいので、会場の広さについては妥協いたしません。

ビジネスにおける漢字遣いやかな遣いで大切なこと

冒頭で、「つぶる」と「つむる」について書きました。

漢字やかなの使い方は「同じ文書の中で混在させることは避け、統一する」ということが最も大切です。理由はもちろん、読み手を迷わせないためです。

例えば、同じ文書の1枚目で「目をつぶる」とあるのに、2枚目では「目をつむる」、3枚目では「目を瞑る」になっていると、「違う理由があるのかな?」と悩んでしまうでしょう。

読み手が違いに気づくと、その文書で書き手が伝えたいことが伝わらなくなることさえあります。

もちろん、もしも使い分ける明快な理由とこだわりがあるなら、その理由が分かるような文脈にする必要があります。

「目をつぶる」「目をつむる」のように表記に明確な使い分けの決まりがないからといって適当に使うのではなく、読み手の視点に立った表記を意識しましょう。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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