「おこがましい」の意味は? ビジネスでの使い方をわかりやすく解説
「おこがましい」の意味、正しく理解できていますか? よく聞く言葉ですが、あいまいな使い方をしている人は多いでしょう。今回はビジネス系ライターのSaiさんに、意味や使い方をわかりやすく解説してもらいます。
職場などでよく使われる「おこがましい」という言葉。
うまく使えば上司や取引先を立てることができる表現ですが、正確な使い方がよく分からない人もいるでしょう。
今回は、「おこがましい」の意味やビジネスシーンにおける使い方を詳しく解説。また、使用する上での注意点や類語も併せて紹介します。
「おこがましい」の意味や語源
まずは、「おこがましい」の意味や語源を確認しましょう。
辞書によれば、「おこがましい」の意味は以下のように説明されています。
おこがましい【烏滸がましい】
(1)ばかげていて、みっともない。物笑いになりそうだ。
(2)出過ぎている。さしでがましい。なまいきだ。(『広辞苑 第七版』岩波書店)
このように「おこがましい」とは、自分のことをへりくだっていう時に使う表現です。
語源は古語「をこがまし」
「おこがましい」は古語「をこがまし」に由来しており、『源氏物語』などをはじめとする古典にて使われてきた大和言葉です。
「をこ」は漢字では「烏滸」や「痴」と表記し、主に「ばかばかしい」とか「おろかなこと」「みっともない」などという意味で使用されていました。
ビジネスでは「差し出がましい」の意味で使う
「みっともない」という意味で使われていた古語「をこがまし」。
現代ではそのニュアンスが転じて、「差し出がましい」や「分をわきまえていない」といった意味で使われることが多くなっています。
特にビジネスシーンにおいて謙遜の意味を込めた言葉としてよく使われており、相手を立てたり、自分のことをへりくだって言ったりしたい時に便利な表現です。
ビジネスでの「おこがましい」の使い方(例文つき)
謙虚な姿勢を示せる「おこがましい」という言葉。
ビジネスシーンでは、目上の人とやりとりをする際にクッション言葉として使うと、物事を円滑に進められる効果が期待できます。
ここからは「おこがましい」の使い方や例文を紹介しますので、具体的な使用シーンや用法を確認しておきましょう。
依頼をする時に使う場合
目上の人に何かを依頼する時は、「おこがましいお願い」という表現が非常に便利です。
通常頼みにくい願い事などをする時に「おこがましいお願いで恐縮ですが」などと添えると、「自分の立場で依頼して申し訳ない」という意図をうまく伝えることができるでしょう。
また、お願いをした後に「おこがましい」を使うと、感謝の気持ちと共にお詫びの気持ちも示すことができますよ。
例文
・おこがましいお願いをして大変申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
・おこがましいお願いかと存じますが、新しいプロジェクトは私に任せていただけないでしょうか。
・おこがましいお願いを聞き入れてくださったこと、大変感謝しております。
意見を述べる時に使う場合
「おこがましい」は、目上の人に指摘をしたり意見を述べたりする時にも使う表現です。
上司や取引先など立場が上の人に意見をする場合は、失礼な態度を取らないよう細心の注意を払う必要があります。
そのような時に「自分の立場で差し出がましいのですが」というニュアンスで「おこがましい」を使うと、謙遜しながらも思い切った意見を述べることができるでしょう。
また、謙虚ながらもしっかりと自分の考えを伝えられる表現のため、面接や営業などで自己アピールをする時に使うこともできます。
例文
・私がいうのもおこがましいのですが、このプロジェクトには無理があるように感じます。
・私の立場で意見を申し上げるのはおこがましいのですが、マネージャーに相応しい人を再選出すべきだと思います。
・自分で言うのもおこがましいのですが、ビジネス英語のスキルには自信を持っております。
注意をする時に使う場合
基本的には自分を下げる表現である「おこがましい」ですが、上司が部下に注意をする場合などにも使うことがあります。
ただし、相手に対して「おこがましい」と指摘する場合はかなり強い表現となるため、むやみに使用することは避けた方が良いでしょう。
例文
・あのようなおこがましいことを言うのは、顧客に対して失礼だ。
・部長におこがましいお願いをすることは今後避けるように。
・取引先に対しておこがましいことを言うと、君の評価が下がってしまうだろう。
「おこがましい」を使う上での注意点
周囲の人とのやりとりを円滑に進める効果がある「おこがましい」という言葉。
しかし、使う相手や状況を間違えると悪い印象を持たれる可能性があるため、注意点はしっかりと押さえておく必要があります。
ここからは、「おこがましい」を使う上で覚えておきたいポイントを解説します。
自分の立場が上の場合は安易に使わない
「おこがましい」は、基本的に謙遜の意味を込めて使う言葉です。
そのため、自分の方が明らかに相手より立場や年齢が上なのに使ってしまうと、状況によっては嫌みっぽく聞こえることがあります。
例えば、上司が部下に対して「私が言うのもおこがましいけど、朝はもう少し早く出社するべきじゃない?」などというと、皮肉を込めた表現のように取られてしまうでしょう。
この場合はまわりくどい言い方はせず、「朝はもう少し早く出社してね」とストレートに伝えた方が無難です。
相手が使った場合は否定の相づちを入れる
相手が「おこがましい」を使った場合、その返答には十分注意をする必要があります。
例えば、「私が言うのもおこがましいのですが」と言われて安易にうなずいてしまうと、「相手がおこがましい人であることを認めている」と取られてしまいます。
この場合は「いえいえ」とか「そんなことはないです」などの否定の相づちを入れる方が無難なため、必ず覚えておくようにしましょう。
「おこがましい」の類語は?
言葉の意味をより深く理解したり使い方を把握したりするためには、類語を知ることが効果的です。
「おこがましい」にも似た類語がいくつかあるので、それぞれの意味や「おこがましい」との違いなどを確認しておきましょう。
「身の程知らず」
「身の程知らず」は、「自分の身分や能力をわきまえずにでしゃばった行動をする人」を指す言葉です。
「おこがましい」にも「身の程を知らない」という意味があるため混同されがちですが、「身の程知らず」には謙虚なニュアンスが含まれていません。
また、「おこがましい」は人に対しては使いにくい言葉ですが、「身の程知らず」は第三者の性格や態度を表す時にも頻繁に使われる表現です。
例えば、「彼は身の程知らずだ」などというように使用することができるので、「おこがましい」との違いを把握しておきましょう。
「厚かましい」
「厚かましいお願いではありますが」などのフレーズでよく聞く「厚かましい」という言葉。
「おこがましい」と似ているように感じる人は多いですが、「厚かましい」は「図々しく行動や態度に慎みがない」という意味であり、「おこがましい」のように目上の人に配慮するようなニュアンスはありません。
また、「あの人は厚かましい人だ」のように相手を悪く言う時に使う点や、上下関係を気にせず使えるという点も「おこがましい」とは異なっている部分です。
意味や使い方を理解して正確に使おう
ビジネスシーンにおいてよく聞く「おこがましい」という言葉。
目上の人とやりとりをする際にクッション言葉として使われる表現ですが、意味や使い方がよく分かっていない人もいるでしょう。
しかし、「おこがましい」の意味や場面に応じた使い方を一度理解してしまえば、正しく使いこなすことはそこまで難しくありません。
使用上の注意点や類語との違いなども押さえておき、上司や取引先などの前で自信を持って使えるようになりましょう。
(Sai)
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