「示唆」の意味と使い方。「示唆に富む」や「示唆的」とは?
ビジネスシーンやニュースで見聞きする「示唆」という言葉ですが、一体どんな意味か知っていますか? 今回は「示唆」の意味、「示唆する」や「示唆に富む」などの使い方を、会社員経験のあるライターのuzuraさんがわかりやすく解説します。
ビジネスシーンやニュースなどで使われている「示唆」という表現。
見たことや聞いたことはあっても、詳しい意味や使い方を知らない方も多いのでは?
今回は「示唆」の意味や「示唆的」「示唆する」などの使い方、類語まで解説します。
「示唆」とは?
示唆という言葉を自分で使えるようになるために、言葉の読み方や意味を知っておきましょう。
読み方は「しさ」
示唆は「しさ」と読みます。「視差」などと同じ読み方をするので、文脈の使い方で誤解がないように注意しましょう。
言葉の意味
示唆とは、「直接的ではなく、それとなく間接的に気付かせること」を意味します。
示唆の「示」には「分かるように見せる」「しめす」、「唆」には「その気になるように仕向ける」「そそのかす」という意味があります。
そのため2つの漢字を合わせた「示唆」とは、「分かるように仕向ける」などの意味となります。
仕向けるだけで、直接教えるわけではないという部分がポイントです。
動詞「示す」との違いと使い分け方
「示唆」をもっと簡単にすると「示す」という言葉になります。もちろん「示す」を使うのも正解ですが、示唆には上述のとおり、それとなく示す、分かるように仕向けるといった意味があります。
直接的に何かを見せたい時は「示す」、相手に理解してもらえるように誘導したい時は「示唆する」を使うといいでしょう。
使い分けの例
・新人教育のため、仕事のやり方について手順を示した。
・無断欠勤をした新人に、社会人としてのあるべき姿を示唆した。
「示唆」の使い方(例文付き)
「示唆」という言葉は、使うシーンや相手によってもニュアンスが変わってきます。
ここでは使用シーンに分けて、その使い方を例文付きで紹介します。
ビジネスシーンで使われる「示唆する」「示唆される」
日常会話では堅い言い回しになるため、主にビジネスシーンで使われる機会が多い「示唆」という言葉。
ビジネスシーンで使われる「示唆する」「示唆される」には、「物事をそれとなく相手に知らせる」といった意味があります。
アドバイスや物事の要点を直接相手に教えるわけではなく、ヒントや遠回しな表現を使い、相手に伝える場合に使われます。
ビジネスにおける「示唆する」「示唆される」を言い換えると、「それとなく言う」や「ほのめかす」といった表現が挙げられます。
例文
・社長から地方出張の可能性を示唆される。
・上司が退任を示唆した。
・競合会社同士が合併を示唆している。
論文で使われる「示唆する」「示唆される」
論文においても「示唆する」「示唆される」という言葉を用いて説明する場合があります。
ビジネスシーンとは違い、論文などの文章での「示唆する」「示唆される」は「憶測する」というニュアンスで使われます。
さまざまな実験や研究を経て生まれた複数のエビデンスから自分の仮説を立てる論文は、「示唆する」という言葉を用いて執筆されることが多いのが特徴です。
仮説を「~と示唆する」ではなく「~である」と言い切った場合、根拠のない結論が生まれてしまい責任問題などにも発展してしまいかねないからだと考えられます。。
そのため、まだ仮説段階の論文では「示唆する」「示唆される」という言葉を使って曖昧な表現に留める学術文書が多く見られます。
例文
・AよりもBの指数が高い傾向にあることを示唆している。
・下記のメリットがあることを示唆する。
・注目されていることを示唆している。
「示唆」を使った言い回し
ここでは、「示唆」を含む言い回しを紹介します。
さまざまな文章を覚えて、ビジネスシーンで役立ててみては?
「示唆に富む」の意味は「暗に教えられることが多い」
「示唆に富む」とは「暗に教えられるところを多く含む」という意味の言葉です。
直接的に教わることはない、「間接的に勉強になる時」や「それを見たり聞いたりすることで何かを学んだ時」など、ポジティブな表現として使うことができます。
また反対に、「考えさせられる」や「課題が残る」というニュアンスもあり、ネガティブな表現として使われることもあります。
例文
・示唆に富む本を見つけることができた。
・テレビの災害特集番組は示唆に富む内容になっている。
・示唆に富む資料を拝見した。
「示唆を受ける」の意味は「良い影響を受ける」
「示唆を受ける」は「人に良い影響を受けること」を指します。
別の言い方にすると、「刺激になる」「感化される」など、自分にとってプラスになる影響もたらすような状況のことを言います。
例文
・この本の著者はロマン主義の示唆を受けていることが有名である。
・示唆を受けた作品に対して敬意を払う。
・先輩から示唆を受けて構成を練る。
「示唆を得る」の意味は「ヒントをもらう」
「示唆を得る」とは、「ヒントをもらう」や「手がかりをもらう」という意味になります。
物事や人からヒントをもらった場合に「~から示唆を得た」と言い表すことができます。
例文
・昨日読んだ本から示唆を得た。
・上司の話から示唆を得て問題を解決することができた。
「示唆を与える」の意味は「情報を与える」
「示唆を与える」とは、相手に対して「それとなく情報やヒントを与える」という意味になります。
「示唆を与える」の類語には、相手のためになる情報を与えるという意味で「アドバイスする」「助言をする」、相手がキッカケをつかめるようにするという意味で「刺激する」「インスパイアする」などがあります。
例文
・煮詰まっている後輩に解決方法を直接伝えるのではなく示唆を与えた。
・定期的な集会を通して社員に示唆を与える。
「示唆的」は2つの意味合いがある
「示唆的」とは「暗に何かを指し示すこと」と「不適切なものや下品なことを提案すること」の2つの意味があります。
2つ目の「不適切なものや下品なことを提案すること」は、決して良い意味としては使われておらず、マイナスな表現として使われます。
例文
・上司の示唆的な言葉のおかげでプレゼンが成功した。
・示唆的な言動をする友人に困り果てている。
「ご示唆」とは?
「示唆」は、付属の言葉によって尊敬語としても、謙譲語としても取り入れることができます。
使う相手や使い方を詳しく見ていきましょう。
「ご示唆」を使う相手は上司・目上・取引先
「ご示唆」は、目上の相手の言動を表す場合に用いる尊敬語。
使う相手は、目上の人や上司、取引先など、自分よりも立場が上の人となります。
「ご示唆ありがとうございます」や「ご示唆いただけると幸いです」など、相手からヒントをもらった時や解決の糸口が欲しい場合に使うといいでしょう。
また、「ご示唆いただく」という形にすると、謙譲語として自分をへりくだって使うことができる、丁寧な言い方となります。
「ご示唆ください」は失礼? もっと丁寧な言い回しとは
目上の人や取引先など、悪い印象を与えたくない相手に使われる「ご示唆」ですが、言い方によっては少し冷たい印象に捉えてしまう可能性もあります。
「ご示唆ください」は失礼な言い方ではありませんが、強制感や冷たい印象を抱かれてしまうことも。
そのため、「ご示唆いただきたく存じます」や「ご示唆いただけますでしょうか?」などの言い回しをすると、より丁寧に伝わるでしょう。
「ご示唆」の使い方(例文)
ここでは、「ご示唆」の使い方を紹介します。
例文を参考に、取引先や目上の人から好感を持たれるようなやりとりを心掛けましょう。
例文
・ご示唆くださいますようお願い申し上げます。
・ご示唆いただきますようお願い申し上げます。
・ご示唆ありがとうございます。
「示唆」の類義語や言い換え表現
「示唆」という言葉の意味を知らない人にも分かりやすく伝えるためには、類語や言い換え表現をうまく使いましょう。
「匂わす」「ほのめかす」
示唆には、はっきり教えるのではなく「ヒントを与える」といった意味があります。
「ヒントを与える」の類語として使われている言葉は、「匂わす」や「ほのめかす」などがあります。
解決の糸口だけ助言して、明確には伝えない様子が伝わります。
「暗示」「サジェスト」
示唆には、「可能性として暗示する」といった意味があります。
「可能性として暗示する」は、「暗示」「サジェスト」などの言葉に言い換えることができます。
「足がかりになる」
問題に直面している時、示唆は「問題を解く助けになる」という意味合いでも使われます。
「問題を解く助けになる」は、「足がかりになる」などの言葉で表現することができます。
「示唆」の反対語・対義語は「明示(めいじ)」
直接的に伝えず暗に指し示す「示唆」の反対語は、「明示」になります。
「明示」とは「はっきり示すこと」や「直接的に示すこと」を指します。契約書や大切な資料など、はっきりとさせたい文書にも登場する機会が多い言葉です。
「明示」の反対語には「暗示」が挙げられますが、「示唆」と「暗示」は意味合いがほぼ同じなので、「示唆」の反対語も「明示」が使われています。
「示唆」の英語表記
「示唆」を英語で表現する場合は「暗示」や「ほのめかす」という意味の英語を使うと、示唆と近いニュアンスで伝えることができます。
示唆を表す英語は「suggest」や「imply」「hint」になります。
例文
・The director hinted at the contents of their new movie.(監督が新しい映画の内容を示唆しました)
・The text suggests a friendship with him.(文面から彼との親交を示唆する)
さりげない指摘やアドバイスには「示唆」を使っていこう
「示唆」とは、それとなく教え示すこと。
ビジネスでの取引先や上司からさりげなく指摘なアドバイスをもらった場合に「ご示唆ありがとうございます」を使ってみましょう。
さまざまな表現を知っていることで、「社会人としてしっかりしているな」と好印象を抱かれることもあるはずですよ。
(uzura)
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