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【例文あり】「ご一考」の正しい意味と使い方。「ご検討」との違いとは

大部美知子

ビジネスシーンで目にしたり、耳にすることがある「ご一考」という言葉。その意味や使い方をご存知でしょうか? 今回は、ビジネスコミュニケーション指導に従事する大部美知子さんに、意味と使い方はもちろん「ご検討」や「ご思案」といった類語との違いについても例文付きで解説してもらいました。

「ご一考」はビジネスにおいて用いられる表現ですが、言葉は知っていても使い方はよく分からないという方も多いのではないでしょうか?

今回は、自信を持って使用できるように「ご一考」の意味や使い方について紹介します。

「ご一考」の読み方と意味

「ご一考」は「ごいちこう」ではなく「ごいっこう」と読みます。

「ご一考」に含まれる「考」は、「考える」や「思考を巡らせる」といった意味を持ちます。「ご」は尊敬を表す接頭語であり、「一」が「一度」を表しますから、「ご一考」は相手への敬意を込めた「一度考えてください」という意味になります。

「ご一考」の使い方(例文付き)

次に、ビジネスにおいてよくある「ご一考」の具体的な使い方を見ていきましょう。

提案する時

ビジネスでは、調整時や交渉時に「ご一考」を使って提案することが多いです。謙虚なニュアンスが含まれるので、上司など社内だけでなく、取引先といった社外のコミュニケーションにおいても使えます。

特に、「ご一考いただければ幸いです」という表現は、「決断を迫るわけでないけれど、考えてもらえたらありがたい」という気持ちが伝わり、目上の方への締めくくりのあいさつとしても使いやすいです。

例文

「こちらのプランについて、ご一考ください」

「新しい企画について、ぜひともご一考くださいますよう、お願いいたします」

「○○の提案書を送付いたしましたので、ご一考いただければ幸いです」

提案を断りたい時

「ご一考」は、相手からの提案や要望を断りたい時にも使います。

ビジネスでは、はっきり「No」と言うと相手との関係がぎくしゃくする可能性があるため、「ご一考お願いいたします」などと言って遠回しに「断りたい」という意志を伝えることがあるんですね。

例文

「再度、こちらのご提案についてご一考いただきたく存じます」

「一考」の使い方も解説

尊敬を表す接頭語の「ご」を外し、「一考」のみにして使用するケースもあります。ビジネスでよく使われる表現を解説しますね。

一考に値する

「一考に値する」とは、「考えてみる価値がある」という意味で、ビジネスでは主に採用する可能性がある案件に対して使います。「一考の価値がある」も同じ意味を持つ表現です。

例文

「この企画は、一考に値すると思います」

一考を要する

「一考を要する」とは、「考える必要がある」という意味です。「改めて考えた方が良い」というニュアンスもありますね。同じ意味で「一考の余地がある」という表現もあります。

例文

「この提案は確かに素晴らしいアイデアですが、予算面で一考を要しますね」

目上の人に「ご一考」を使う時のポイント

「ご一考」は、形の上では敬語表現ですので、上司など目上の方や取引先に対しても使うことができます。

ただ、「もう一度お考えください」という意味にもなりますので、場合によっては相手の意見を否定しているような印象を与えてしまう可能性もあります。目上の方に使う際は、上から目線と受け取られないように、以下のポイントを押さえておくといいでしょう。

「ご一考のほど」にする

「ご一考のほど」の「~のほど」は、敬語独特の婉曲表現の1つで、より角が立たない言い方になるため、相手が受け入れやすくなります。

また、「〜してくださいますよう」という表現もいいでしょう。

例文

「お忙しいところ恐れ入りますが、ご一考のほどよろしくお願いいたします」

「ご一考(して)くださいますよう、お願い申し上げます」

言い回しを調整する

目上の方に対し、より丁寧な表現にするには、言い回しを調整するという方法もあります。下記の順に丁寧さが高まりますので、参考にしてください。

例文

【口頭の場合】

丁寧度1「ご一考ください」

丁寧度2「ご一考くださいませんか?」

丁寧度3「ご一考いただけませんでしょうか?」

丁寧度4「ご多忙の中恐縮ですが、ご一考いただけませんでしょうか?」

【文書の場合】

丁寧度1「ご一考いただきたく存じます」

丁寧度2「ご一考いただければ幸いです」

丁寧度3「ご一考いただけますよう(くださいますよう)お願い申し上げます」

「ご検討」「ご思案」など類語との違い

「ご一考」と似た意味として使われやすい言葉に「ご検討」「ご思案」「ご考慮」「ご勘案」があります。最後に、それぞれの意味と「ご一考」との違いについて解説します。

ご検討

「ご検討」(ごけんとう)とは、「詳しく調べ考える」という意味の「検討」に、尊敬を表す接頭語の「ご」を付けた言葉です。「ご一考」は「もう一度考える」という意味ですが、「ご検討」は「詳しく調べて考える」という意味になります。

例文

「前向きにご検討いただきまして、ありがとうございます」

「この度は、弊社の商品をご検討いただきありがとうございます」

ご思案

「ご思案」(ごしあん)は、「思いを巡らす」「考察する」という意味の「思案」に、尊敬を表す接頭語の「ご」をプラスした言葉です。

「どうしたものか」と思い悩むのが「思案」の特徴ですので、ビジネスでの「ご思案」という表現は「いろいろ思いを巡らせて最善である方法を考える」というニュアンスを含みます。

「ご一考」が「一度良く考える」という意味に対して、「ご思案」には「どうするのがベストであるかを思い悩む」という内省的なニュアンスの違いがあります。

重大な案件で「考えてもらう」や「判断を仰ぐ」ような場面に適している表現ともいえます。

例文

「どちらのプランが最善か、ご思案くださいますよう、よろしくお願いいたします」

「この度は、ご多用の中、この案件についてご思案くださいましてありがとうございました」

ご考慮

「ご考慮」(ごこうりょ)は、「深く考えを巡らせる」という意味の「考慮」に、尊敬を表す接頭語の「ご」を付けた言葉です。「ご一考」よりも広い視点から物事について考えるというニュアンスを含みます。

例文

「勝手なお願いではございますが、ご考慮いただければ幸いでございます」

「こちらの事情をご考慮くださいましたことに、お礼を申し上げます」

ご勘案

「ご勘案」(ごかんあん)は、単純に考えるだけでなく、複数の意見や物事などのあれこれを考え合わせるという意味です。その上で総合的に判断するというニュアンスが含まれています。

「ご一考」とは違い、もともと官公庁や企業が発表する公的文書などで使われることが多いため、主に改まった場面で使われます。

例文

「諸条件をご勘案の上、今月末までにご回答をお願いいたします」

「こちらの事情をご勘案くださいましたことに、お礼を申し上げます」

「次回の打ち合わせまでにご勘案いただけると幸いでございます」

実際に使ってみよう

「ご一考」という言葉の意味や使い方、類語まで理解すると、いろいろな場面で利用できそうですね。

実際に使ってみることで、「知っている」から「使える」レベルに高めることができます。自分の職場でどのように用いることができるか、ぜひご一考ください。

(大部美知子)

※画像はイメージです

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