「いらしてください」は正しい敬語? 意味と使い方
「いらしてください」は正しい敬語なの? ポイントと共に意味と使い方を解説。「お越しください」「いらっしゃってください」などの言い換え表現も紹介します。
普段何気なく使う「いらしてください」という言葉。目上の人に「来てください」と伝えたい時に使う表現ですが、本当に正しい敬語なのか悩んでいる人も多い様子。
果たして「いらしてください」は、敬語として適切なのでしょうか。
言葉の意味や使い方、言い換え表現を解説していきます。普段、疑問に思いながら「いらしてください」と使っていた人は必見です。ぜひ参考にしてください。
「いらしてください」は正しい敬語?
日常生活で何気なく使っている「いらしてください」。これは正しい敬語なのでしょうか。まずは、言葉の意味と共に解説します。
「いらしてください」の意味
「いらしてください」は、「いらっしゃってください」の略です。
相手に「来てほしい」と依頼する時、「いらしてください」とすることで敬意を持った丁寧な表現になります。また、「行ってください」「居てください」といったお願いを、経緯を持って伝える時にも使える表現です。
「いらっしゃる」は「来る」「居る」「行く」の尊敬語で、「お入(はい)りになる」という言い方から誕生した言葉です。さらに、丁寧表現である「ください」を組み合わせています。
複数の尊敬語が組み合わさった表現であるためか、時折「いらしてください」を誤用だと勘違いする人もいるようですが、これは正しい敬語表現。
「来てください」という表現だとカジュアル過ぎてしまう場面で、相手に失礼なくその旨を伝えられる敬語です。
ただし、あまりに目上の相手や重要な取引先である場合、どんなに言葉を丁寧しても、「来てほしい」と依頼すること自体が好ましくない状況もあります。これについては後述しますが、相手の受け取り方などに注意して伝えましょう。
「いらしてください」を漢字で書くと?
ちなみに、「いらしてください」を漢字で書くと、どのような漢字になるのでしょうか。
「いらしてください」には明確な漢字表記がありません。「お入(はい)りになる」という言い方から誕生した言葉なので、「入らしてください」と表記することができそうです。
しかし、実際に「入らしてください」という表記はほとんど見かけません。無理に漢字で書こうとせず、平仮名で「いらしてください」と書く方が無難でしょう。
例文付「いらしてください」の使い方
「いらっしゃる」は、「来る」「居る」「行く」の尊敬語なので、「いらしてください」には「来る」「居る」「行く」の意味に沿ったそれぞれの使い方があります。
では、それぞれどのように使うのかを具体的に解説していきます。
「来る」の意味での使い方
相手に来てほしいことを伝える場合の「いらしてください」は、「来る」の尊敬語です。
自宅や会社に人を呼ぶ時、自分のお店やイベントを宣伝する時に「いらしてください」と使います。
【例文】
・今度はご家族でぜひいらしてください。
・明日、弊社までいらしてくださいませんでしょうか。
・気を付けていらしてください。
「行く」の意味での使い方
相手に先に行ってほしいことを伝える場合の「いらしてください」は、「行く」の尊敬語です。
ただし、「いらしてください」は「来てください」という意味で理解をしている人も多いため、相手に行ってほしいという意図が伝わらない場合があります。
「行ってください」と伝えたい時は「行かれてください」と言う方が無難かもしれまぜん。
【例文】
・先にいらしてください。
・11時になりましたら、会議室へいらしてください。
・○○さんがお呼びですので待合室にいらしてください。
「居る」の意味での使い方
指定した場所にいてほしいことを伝える場合の「いらしてください」は、「居る」の尊敬語です。
取引先の人と待ち合わせをする際、指定の場所にいて欲しいことを伝えたい時によく使われます。
【例文】
・午後2時に駅前のカフェにいらしてください。
・私も後で合流しますので、しばらくここにいらしてください。
「いらしてください」を使う際の注意点
相手との関係性や場面によっては、この尊敬語が適さないこともあります。続いて、使用上の注意点も押さえておきましょう。
目上の人には使わない方が無難な場面もある
「いらしてください」は、「いらっしゃる」と「ください」の2つの尊敬語を組み合わせた言葉です。日本語や敬語としては正しいですが、ビジネスの場において目上の人には使わない方が無難な場面もあるでしょう。
その理由は、「ください」に命令のようなニュアンスを感じるからです。目上の人に命令するのは失礼にあたるので、「お越しください」や「いらっしゃってください」を使う方が良い時もあるでしょう。
また、前述の通り、あまりに目上の相手や重要な取引先である場合、「来てください」というニュアンスの言葉を伝えること自体が失礼にあたることもあります。
状況によっては、こちらに足を運ばせるのではなく、自分が足を運ぶ誠意を見せるといいかもしれません。
「来る」「行く」「居る」の混乱を避ける
また、「来る」のか「行く」のか「居る」のかがはっきりしない点も分かりづらい部分です。したがって、使い方によっては相手が混乱する可能性があります。
言い換え表現などをうまく使いながら、その場面で最も伝わりやすい表現を選びましょう。
「いらしてください」の言い換え表現
「いらしてください」は「来てください」の意味で使われることが多い言葉です。
ここでは、さらに分かりやすく「来てください」と伝えるための、言い替え表現を紹介します。
お越しください
「いらしてください」と同じような意味で使える「お越しください」。
「お越しください」は、「来る」の尊敬語「お越しになる」と、丁寧語「ください」を合わせた言葉です。
取引先の人などに対して、自社に来てもらうことをお願いする時に「10時にお越しください」と使うと自然でしょう。
「お越しください」は、主に社外の人に向けて使うことが多いです。社内の上司に対して使うと、少し仰々しい印象を与えてしまうため避けた方がいいかもしれません。
おいでください
「おいでください」は、「行く」「来る」の尊敬語である「おいでになる」と丁寧表現の「ください」を合わせた言葉です。
取引先の人にも社内の上司にも使用できるため、ビジネスシーンで覚えておいて損はありません。
いらっしゃってください
「いらしてください」とほぼ同じニュアンスで使われる「いらっしゃってください」。
「いらしてください」をさらに丁寧にした表現なので、目上の人に対して来てほしいことを伝える時は「いらっしゃってください」を使うのが良いでしょう。
お待ちしております
ビジネスシーンやプライベートにおいて、相手に来てほしいことを伝えたい時に重宝する「お待ちしております」。人や物が来てほしい時に使う言葉で、「望む」や「願う」というニュアンスが強い言葉です。
「来てください」という強制感もなく、柔らかく伝えることができる表現でしょう。
ご来訪ください
「いらしてください」の類義語に「ご来訪ください」があります。人が来ることの「来訪」に丁寧語の「ご」を付けた表現で、取引先や顧客に「来てほしい」ことを伝える時に最適です。
「いらしてください」よりも形式ばった表現になるため、正式なメールや案内状などに使用するといいでしょう。
ご足労いただけましたら幸いです
「ご足労」には「足を苦労させた」「足を働かせる」という意味があり、来てくれる相手を敬った表現です。
本来であれば自分が訪ねるべきなのに、相手にわざわざ来てもらう時に使うといいでしょう。
「いらしてください」に対する正しい返答は?
ここまで、「いらしてください」の使い方について説明してきましたが、自分は言われた時に何と返答すればいいかも押さえておきたいところです。
間違った返答をすると非常識な人だと思われかねません。ポイントを押さえておきましょう。
「参ります」「伺います」と返そう
「いらしてください」に対する正しい返答は、「参ります」や「伺います」です。
まずは呼んでもらったことに対するお礼を伝え、その後に行くことを伝えるといいでしょう。
断る場合も、始めに「お声を掛けていただきありがとうございます」などと一言お礼を添えると◎。配慮のある伝え方になります。
【例文】
・ありがとうございます。では、週明けに伺います。
・承知いたしました。ただ今参ります。
・お声がけいただき、誠にありがとうございます。残念ながら、○日は伺うことができません。
シーンによって言い換えよう!
「いらしてください」はビジネスシーンでも使える正しい敬語です。しかし「行く」「来る」「居る」の意味を持ち合わせているので、使う場面や前後の文章によっては相手を混乱させてしまう可能性があります。
来てほしいことを伝える時は「お越しください」や「ご来訪ください」と言い換えた方が良い場面もありそうです。
このように、状況に合わせて言葉を使い分けましょう。ボキャブラリーを増やしておくと、いざという時に困らずに済みそうですね。
(すぎうら)
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