やりたいことは実現させる「突破キャリ」。りそなアセットマネジメント山口佳子さんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:太田冴
撮影:洞澤佐智子
編集:鈴木美耶/マイナビウーマン編集部
アラサーにもなれば、なんとなーく気になってくる「お金」のこと。
将来、結婚して子どもを育てるならお金はかかるだろうし、一人で生きていくにしても準備は必要。「資料を集めなきゃ」「勉強しなきゃ」と思っても、なんだか面倒でついつい後回しに……なんていう人も多いはず。
今回訪ねたのは、りそなアセットマネジメント「未来資産形成ラボ」で所長を務める山口佳子さん。資産運用の会社で所長を務めるくらいの人なのだから、さぞかしお堅い雰囲気の方なのかしら?(偏見が強くてすみません……) と予想していたら、そのギャップにびっくり。
「私、とてもズボラですよ!」「お金のことを考えるのとか、正直面倒くさいですよね〜」と、あっけらかんと笑うのです。
所長なのにお金にズボラって、どういうこと!? お話、もっと聞かせてください!
新設部署は「社長に直談判して作ってもらった」
そうですよね……! そんな中、時間を取っていただきありがとうございます。そもそも「未来資産形成ラボ」って、どんなことをするところなんですか?
他の業界では、「いかにお客様に心地よく商品を使っていただくか」というようなことが重視されているのに、金融業界では「分かりやすさ」がないがしろにされてきたところがあるんです。
そこを私たち「未来資産形成ラボ」では打破していきたいんです。私自身が過去にお客さまに接する現場にいたこともあって、現場目線と運用の専門家としての目線を融合させた形で、資産形成について発信をしていきたいと思いました。
そこで、社長に直談判して「未来資産形成ラボ」を作ってもらいました。
はい(笑)。既存の部署で新しいことをやるよりは、新たに部署を作っちゃった方が自由にやれると思ったんです。とは言いつつ、やっぱり仕事は増えるだろうなというのは覚悟していました。
予想通り忙しく過ごしていますが、やりたいことをやれているので楽しいです。
そういうところも、狙いの一つでもあります。ファイナンシャルプランナーの方に話を聞くとしても、生真面目でいかにも金融の専門家って感じの人が説明しているとなんとなく「難しそうだな……」と構えちゃいませんか?
私自身は「資産形成なんて面倒くさいな〜」と思ってしまうほどズボラな人間(笑)。だからこそ、私のような人が発信する方が、より一般の方に近い目線で資産形成の大切さをお伝えできるんじゃないかと思うんです。
入社後のモヤモヤは資格取得が突破口に
本当にお客さまの役に立っているのだろうか、と自信がなかったんです。私がご提案している商品で、お客さまは幸せになるのだろうか、と。
もちろん一生懸命やっていましたし誠心誠意お客さまに向き合っていましたが、だからこそ自分の仕事の意義みたいなものに疑いを持ってしまって……一度は退職も考えたくらいでした。
ちょうどモヤモヤしている時、タイミングよく東京の支店へ異動することになったんです。一度は東京で働いてみたかったし、「これはチャンスだ」と思い踏みとどまりました。でも、いざ上京したら、友達もいないし暇で暇で(笑)。
土日に何をすればいいか分からなくて、資格の専門学校に通い始めたんです。キャリアの幅を広げたかったので、資産運用の仕事をする人が一般的に取得している「証券アナリスト」という資格を取りました。
きっと、上昇志向が強いんだと思います。当時すでに入社して5年が経っていましたが、そこで転職して全く別の業界で働くとしたら、ただ単に5年出遅れただけの人になってしまうと思ったんです。
それよりも、今までの経験を生かしながら何ができるか、というふうに考えた方が自分にとってプラスになると考えました。
これまで自分がやってきたこと、つまり、お客さまに金融商品・サービスをご提案するということに、アカデミックな裏付けができたことがうれしかったんです。というのも、勉強するまでは少し感覚的に仕事をしている部分があって。
資格の勉強をすることで、「全てにちゃんと理論があるんだ」と納得できたんです。
はい。資産運用に関してアドバイスをする仕事は、勘に頼るようなものではなく、アカデミックなプロのお仕事なんです。資産形成は、お客さまにとって必要なこと。そう確信できたことが、現状を突破するきっかけになりました。
そして「これしかない!」と迷いなく今のキャリアを歩めるようになったんです。
アラサー女性は、まずは積み立てから!
きちんと積み立てなどに取り組んでいる方もいらっしゃる一方で、将来のお金のことを考えるのが面倒で何も手をつけられていない……という女性も多いのではないでしょうか。
私の周りでも、お給料の高い会社で働いているはずなのに、海外旅行や買い物で散財して貯金はゼロ、というような人も中にはいます。
逆に、資産形成に興味は持っているけれど、株などの短期的な運用のみに興味を引っ張られ過ぎているというケースもあります。もちろんちょっとした遊びくらいの感覚なら良いのですが、それとは別に土台となる資産形成にはぜひしっかり取り組んでほしいですね。
まずは積み立てをおすすめします。年齢が若く、しばらく使わないお金が少しでもあるのであれば、非課税枠を使って「つみたてNISA」を始めるといいと私は思います。税制優遇があり、本当におすすめです。
その上で、まだ余裕があるのであれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用もおすすめです。60歳まで引き出せない点は注意が必要ですが、その代わりに税制優遇を活用して確実に老後の資産形成ができます。
よかったです。お客さまがより良い資産形成ができるようにお手伝いをするのが私の役割ですから。ただ、今まで伝えられてきたことを疑ったり、今まで当たり前とされてきた考えを変えようとしたりしているので、なかなか理解してもらえないことも多いです。そこを乗り越えるのはやっぱりしんどいなとは思います。
乗り越えようというよりも、反対されて諦めるくらいだったら、そもそもそんなにやりたいことじゃなかったんだろうなと思います。そこまでの気持ちだったんだろうな、と。
結局私が諦めずにやってこられたのは、周りに手を差し伸べてくれる人がいて、志を持ち続けられたから。やりたいことができないなら、実現できる場所を自分で作っていくしかないんです。
そうだと思います。思い返せば、これまでの仕事は全て自分で手を挙げて切り拓いてきました。同じ会社にいても、できることって無限にあるんです。
不平不満を言うのは簡単だけれど、その中で自分に何ができるのかというのを考え続けていれば、自分なりに満足のいく働き方ができると信じています。
「面倒くさくて、煩わしいもの」ですね。
基本的に、面倒くさいじゃないですか、お金の管理って。ぼーっと置いておいたら勝手にお金が増えてくれたらどれだけラクかと思うんです。
でも、だからこそできることがあるとも思うんですよね。その煩わしさを分かっているからこそ、同じ目線で発信できることがある。その視点を大切にしていきたいですね。