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「見る」と「観る」の違いは? 意味や使い分けを解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「見る」と「観る」にはどんな違いがあるか、説明できますか? 他にも「視る」「診る」「看る」など、「みる」と読む漢字は複数あり、それぞれにニュアンスが異なります。ライティングコーチの前田めぐるさんに、「見る」と「観る」の違いや使い分けについて解説してもらいました。

「見る」と「観る」は、どちらも視覚で物事を「みる」時に使う常用漢字です。

一般的な「みる」では、ほとんど「見る」で間に合いますが、使い分ければより細かいニュアンスを伝えることができます。

「見る」と「観る」、場面ごとにどちらを使えばいいか考えてみましょう。

「見る」と「観る」の意味はどう違う?

「見る」と「観る」は、どう違うのでしょうか。

まずそれぞれの意味を調べます。

「見る」は意図せず視界に入ってくること

広辞苑を引くと、3つの漢字が「みる」として掲載されています。

みる【見る・視る・観る】
自分の目で実際に確かめる。
転じて、自分の判断で処理する意。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

この後に大きく分けて8つの意味が示されていますが、漢字の違いは判然としません。

そこで、漢和辞典を引いてみましょう。

【見】
(1)目でみる。ながめる。また、目にはいる。みえる。
(2)もののみかた。かんがえ。
(3)人に会う。まみえる。
(4)あらわれる。
(5)(助字)「る」「らる」と読み、……される、の意。受け身を表す。
(『例解 新漢和辞典』三省堂)

「見る」という場合の、一般的な「みる」は「ながめる。目に入る。みえる」という(1)の意味です。

つまり、「見る」は、「ぼーっと眺める。景色や文字などが意図せずして視界に入ってくる」という、受動的な意味での「みる」です。

「観る」は目の前にある物に視線を集中させること

【観】
(1)広い範囲をぐるりとながめる。みわたす。みる。 例「観光」「観覧」
(2)注意して、よくみる。みきわめる。 例「観察」
(3)みせる。しめす。 例「展観」
(4)ながめ。けしき。 例「壮観」
(5)ものの見方や考え方。 例「人生観」
(6)道教の寺院。
(『例解 新漢和辞典』三省堂)

「観る」には、「観光」などに使う(1)の意味、「観察」などに使う(2)の意味があります。

観光も観察も、偶然で行うものではありません。そこに体を運んだり、顔を近づけたりして主体的に「みる」行為です。

つまり「観る」は、「どこかに行って、みたい物をみたり、目の前にある物に視線を集中させてみたり」と、能動的な意味での「みる」を表します。

「見る」は受動的、「観る」は能動的

以上のことから、狭い意味でいえば「見る」と「観る」の間には、明解な違いがあります。

ずばり、「見る」と「観る」の違いは、そこに「意識」があるかどうかです。

「見る」は、無意識で、受動的。

一方、「観る」には、前提として動植物や自然、試合や芸能などの対象を見きわめようという意識や行動があり、能動的です。

「見る」と「観る」の使い分け(例文付き)

ここまで述べたように、「見る」と「観る」の違いは、「意識」の有無です。

「見る」は対象が無意識に視界に入った時に使い、「観る」は対象を意識的に視界に入れた時に使います。

例えば、野球の試合を球場へ行って「みる」時には、「観る」を使うと良いでしょう。応援したり、得点を見守ったりして意識的に「みて」いるわけです。

また、同じ野球の試合でも、たまたま通りがかり、試合の様子が目に入った場合には「見る」がふさわしいでしょう。

「見る」を使うのは、無意識に「みて」いる時

次のように、日常的な動作で無意識にテレビを見ている時や、電車の中でたまたま視界に入った時などには「見る」を使います。

・昨日は、夕食後にテレビを見ていて、そのまま寝入ってしまいました。
・電車の中で化粧品の中吊り広告を見ていたら、衝動的に欲しくなりました。

「観る」を使うのは、意識的に「みて」いる時

たとえテレビで「みる」場合でも、気になっているチームの試合などを意識的に「みる」場合には、「観る」の方が適切だといえます。

特に「観戦、観劇、観賞、観察」など、「観」を付けて熟語にできるような場面では、「観る」を使うと良いでしょう。

・正月は、親子で全国高校ラグビー大会を観るのが恒例だ。
・夏休みの自由研究では、毎朝目が覚めたらまず、アサガオの成長を観るようにしたものだ。

「見る」と「観る」の使い分けに迷ったら?

以上のように、「見る」と「観る」の使い分けは、意識的に視界に入れたのかどうかによって区別できますが、それでもどちらか迷った時はどうすれば良いでしょうか。

結論から言えば、使い分けに迷ったら「見る」を使うのがおすすめです。

確かに狭い意味でいえば、「見る」は映像や対象が無意識に入ってきた時に最適ですが、それ以外でも広範囲に使えるからです。

例えば観察で虫を「みる」ことや、後見人として面倒を「みる」ことなど、「見る」は、目で「みる」こと全般に使うことができるのです。

なお、「見」も「観」も漢字自体は常用漢字ですが、訓読みの「観る(みる)」は常用漢字表外です。

特に公用文などの文書では、常用漢字表にある漢字を使うのが一般的なので、使い分けに悩んだら「見る」を使うのが無難です。

「見る」や「観る」以外で「みる」を表す漢字

「みる」を表す文字は、他にも「視る」「診る」「看る」があります(全て常用漢字)。

「視る」

「視聴」「注視」「直視」でなじみのある「視」には、「注意してじっくりみる」という能動的な意味があります。

一点に集中してじっと「みて」いる状態を表したい時に使う漢字です。

例文

・社長のインタビューが朝の番組で放映されたので、仕事の手を止めて皆で視た。

「診る」

「診」は「病気の具合をしらべる。みる」という意味の漢字で、医療の場で限定的に使われることがほとんどです。

例文

・かかりつけの病院で、オンライン診療が始まったので、母を診てもらいました。

「看る」

「看病」「看護」「看守」の「看」は、手をかざしてみる様子から生まれた会意文字(意味を組み合わせて作られた漢字)です。

「手をかざしてながめる。目の前にあるものをしっかりみる。見守る。見張る」という意味があります。

世話をし、見守る時に使います。

例文

・彼女は病気の父親を本人の希望に添い、自宅で看ることにしました。

立場に合った表現を臨機応変に採用することが大切

通常、ビジネス文書では、公文書にならい、常用漢字表にある漢字と読みを使うのが一般的です。Webサイトもそれに準じるところが多いでしょう。

しかし、例えば、介護の会社であれば、「見る」よりは「看る」の方がふさわしい場面も多いはずです。

表外の漢字や読みであっても、企業理念やお客様への思いをその方が的確に表現できるのであれば、臨機応変に採用し、より良い表現を目指しましょう。

(前田めぐる)

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