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マタハラの定義とは。3つの事例とマタハラになる言葉

トイアンナ

マタハラとは「マタニティハラスメント」の略で、妊婦に対する嫌がらせなどと指す言葉です。具体的にはどのような言葉や行動がマタハラになるのでしょう。この記事では、お仕事コラムニストのトイアンナさんに、マタハラの原因と対策について具体例を交えながら教えてもらいました。

「〇〇ハラスメント」の中でも知名度が上がっている、マタハラ(マタニティー・ハラスメント)。日本語では、妊婦への嫌がらせを定義した言葉です。

大事なことですが、ハラスメントは大抵「その気もないのに」やってしまう行為です。「ヘッヘッヘ……妊婦を傷つけてやろうぜ」なんて感覚でマタハラをする人がいたら、明らかな異常者ですよね。そうではなく、思わぬ一言が受け手にとってはマタハラになってしまうのです。

そこで今回、職場の同僚や上司、部下へのマタハラを防ぐために「私たちが気を付けるべきこと」を考えてみましょう。

マタハラとは。意味や定義について

マタハラは和製英語で、maternity harassment(母親らしさ・嫌がらせ)を訳した言葉になります。英語圏ではpregnancy discrimination (妊婦差別)と表現する方が通じるでしょう。

ただ、日本で行われるマタハラを表す時は「pregnancy discrimination」と区別して和製英語の、「maternity harassment」として記載することもあります。つまり、それくらい「日本のマタハラ」が世界的に知られているともいえます……。

日本では妊婦さんの5人に1人がマタハラの被害に遭うといわれています。マタハラを受けた職場に復帰したくなくなる女性もいるでしょうから、マタハラがいかに女性の生涯所得を下げているかや、復帰を妨げているかを考えているだけでもぞっとしますね。

どこからマタハラ? マタハラにあたる事例

マタハラで考えるのは「どこからがマタハラか」という線引きです。まずは、過去にマタハラとして取り上げられた事例(※)を見てみましょう。

※参考:マタハラネット

マタハラの事例1:妊娠に伴う解雇や降格

・会社へ妊娠を報告したら、数週間後に「勤務態度が悪い」と解雇通知を受けた。後から知ったことだが、上司は産休・育休を取るような社員は勤務態度が悪いと見なしていた。

・産休中に解雇通告が来た。

マタハラの事例2:職場での嫌がらせ

・妊娠中、つわりがひどくて残業を減らしてもらっていたら、同僚から「いいよね、プライベートの都合で自分だけ仕事を減らしてもらえて」と言われた。

・「産休育休中って、何もしなくても給料がもらえるなんてラッキーですね」と言われた。

マタハラの事例3:出産後・復職後の嫌がらせ

・復帰直後に保育園が無い地域へ転勤命令を出され、遠回しに退職を迫られた。

・子どもが小学校に入るまで、総合職ではなくアシスタント職に就いてほしいと言われた。

マタハラになる言葉とは

マタハラの事例を見ると、解雇や降格など処遇にかかわるものから、同僚や上司の言動など「自分も気を付けないとやってしまいかねない」マタハラまでグラデーションがあることに気付かされます。

そこで、実際にマタハラになる言葉の例も見ていきましょう。

マタハラ発言1:時短や産休・育休をやっかむ発言

 

妊婦さんや新生児を抱えた家庭は、決して楽をしているわけではない。と、分かっているはずなのに、残業で夜遅くまで残る日が続くと、つい「いいですね、先に帰宅できて」なんて嫌味を言ってしまいそうになりませんか?

それって、問題があるのは「そこまで残業させる会社の仕組み」であって、その同僚じゃないですよね。だって、1人が妊娠したくらいで回らない人数しか配置してないって、明らかに会社に問題があるじゃないですか……。

マタハラ発言2:妊娠による見た目の変化をばかにする

妊娠すれば、外見はどんどん変化します。誰もがお腹は出てきますし、人によっては息切れ、胸の張りや肌トラブルといった悩みのタネも抱えています 。

そういった変化を

「妊娠しておっぱいが大きくなったね」
「お腹がボテっとしてきた」

などと発言するのは、マタハラ発言です。そしてさらに、セクハラも重なってどっちもアウトです。

マタハラ発言3:仕事の愚痴に見せかけたマタハラ

同じチームに妊娠した人がいたとして「おめでとう!(でも仕事が増えるなあ……)」とモヤるのは構いませんが、カッコの部分が声に出たらマタハラです。

先ほど書いた通り、妊婦が増えた分だけ他の人の業務が増えるなら、それは会社が解決すべき問題であって、妊婦が責任を負うものではありません。

職場のマタハラの原因と対策

では、職場でどうしてマタハラ発言が起きてしまうのでしょうか。その原因は2つあります。

何がマタハラか、研修不足

セクハラは研修でどんなことをしてはいけないか指導されることが増えました。しかし、マタハラに限定した研修は、まだ進んでいないのではないでしょうか。

そんなわけで、無自覚なマタハラが横行しやすい原因は「そもそも、誰もマタハラが分かっていない」からかもしれません。

私のような出産経験が無い人間や、独身女性、男性にとってはマタハラを無自覚にやってしまうリスクがあるでしょうし、妊娠出産を経験した人も「私の時は大変だったのに、楽をさせてもらってズルい」といった発言をすれば、マタハラになってしまいます。

現場に人的な余裕がなさ過ぎる

また、プロジェクトごとに割り当てられた人数がギリギリで、妊娠する人が出たら職場が崩壊するくらいの労働環境だと、マタハラが起きやすくなります

仕事が増えて自分も限界だからこそ「あの人はいいよね」と言いたくなってしまうからです。そういった場合は、抗議の矛先を妊婦ではなく部門長やさらに上の人へ向けてみましょう。

マタハラをしない・させないためにできること

ここまでご覧いただいた方は、ざっくりとマタハラの避け方も見えてきたのではないでしょうか。マタハラを避ける簡単な方法は以下の通りです。

欲しいサポートを教えてもらう

妊婦といっても、切迫流産、つわりがひどい、何事もなかった……など感じるつらさは人それぞれ。

妊娠した社員に、どんな配慮が欲しいか「未経験だから勉強不足で申し訳ないんだけど、どういったことがつらいか教えていただけたら、サポートしやすいから教えてもらえますか」と相談してみましょう。

マタハラを見かけたら助けに行く

もしマタハラを見かけたら、あなたが援護射撃しましょう。

例えば、誰かが「いいっすよね、〇〇さんだけ早く帰れて」と妊婦をこき下ろしたら、「そうですよね、こんなパツパツの人員しか配置してない部門長に問題ありますよね」と、課題の矛先を正しい方向へ修正しましょう。

そして、妊婦・経産婦の社員が聞いてしまったら「あなたは何も悪くないから」と伝えてください。あまりにマタハラがひどいようだったら、社内のコンプライアンス部門に報告しましょう。

あなたの一言が、マタハラから女性を救います。この記事がマタハラを自分がしないだけでなく、させないムード作りに、少しでも貢献できれば幸いです。

(トイアンナ)

※画像はイメージです

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