「人となり」の意味とは? 語源や例文・使い分け表現
たまに耳にする「人となり」という言葉、なんとなくニュアンスは分かるけど、どういう意味なのかはあまりよく知らない。そんな方も多いのではないでしょうか。今回は「人となり」の意味や語源、使い方などについて、株式会社櫻井弘話し方研究所の櫻井弘さんに解説してもらいました。
「人となり」という言葉を聞いたことはありますか?
「彼の人となりに惹かれました」というように、その人の「人間性」を示す時に使われる言葉です。
この記事では、「人となり」の意味や語源、言葉の使い方について紹介します。
「人となり」は「生まれつきの人柄」という意味
「人となり」とは、「生まれつきの人柄」という意味で、生来の性質・人間性といったことを指します。
似た言葉に「人柄」などがありますが、それらと比較すると「人となり」はやや古風な言い回しとなります。
「話し方には人となりが出る」といったように、その人の「人間性」を示す時などによく使います。
「その人の人となりを教えてください」という場合は、「その人はどのような印象なのか、どんな人物なのかを教えてください」といった意味になります。
「人となり」の由来・語源
「人となり」は、「為人」という漢語に由来した言葉だと考えられています。
「為」は「〜たり」という意味で使われ、「為人」という言葉は「人たること」「人としての在り方」のような意味合いです。
「為人」は、その人の性質、気性、体付きなどを表す他、「天性」という意味もあります。「生まれつきの性質」、「先天的な持ち前」という側面が強調される言葉です。
「人となり」という言葉は、この「為人」を「ひととなる」と訓読したところから生まれた言葉とされています。
「人となり」を使った例文
前述の通り、「人となり」は、その人が生まれ持った人柄という意味を持ちます。
また、相手に対して使うことが多く、「私の人となりは~」と自分自身のことを表現する場合にはあまり使いません。
それでは実際に、「人となり」を使った例文を紹介します。
・「ビジネスにおいて、想定外や予想外の緊急事態に陥った時こそ、その人の人となりが浮き彫りになってくることが多々あります」
・「今回のコロナ禍の元で起きたさまざまな行動において、その人の人となりを垣間見ることができたような気がします」
・「ご実家にあいさつに伺った時、さりげなくおばあさんの手を取って歩く姿に、〇〇君の人となりを見たような気がして、この人と結婚できて良かったと改めて思ったよ」
以上のように、「人となり」とは、「相手の本質的な人間性が見えた場合などに用いる言葉」といえるでしょう。
「人となり」の類語・使い分け
「人となり」と似た言葉は他にもあり、どのように使い分けるべきか悩む場面もあるかと思います。
ここでは、『似た言葉使い分け辞典』(創拓社出版)を参考に、3つの言葉を紹介します。
「人柄」
「人柄」とは、その人の性格・気質・品位などのにじみ出た人間性を意味します。
「人となり」と大きな違いはないので、類語として使うことができます。
言い回しが古風な「人となり」と比べると、「人柄」は日常生活でも頻繁に使う言葉で、誰に対しても分かりやすく伝わる言葉です。
会話においては、「話しぶりに人柄が表れる」というような使い方をします。
「人格」
「人格」は、人の品格を示す場合に使用します。
「人柄」と同義で使うこともできますが、心理学では「行動の主体」、社会学では「共同生活の主体」、倫理学では「道徳行為の主体としての個人」、そして法律上では「権利・義務の主体となりうる資格」のことを指します。
・「高潔な人格の持ち主だ」
・「子どもの人格を認める」
・「人格のない社団」
というような使い方をします。
「品性」
「品性」は、道徳的な面から見たその人の性格を示す場合に用います。
品位や品格は人や物にも用いますが、「品性」は人にだけ使う言葉です。
・「教養が品性を養う」
・「品性下劣な人」
というような使い方をします。
丁寧に伝えたい場合に使える「人となり」
いかがでしたか?
日常生活で「人となり」という言葉を使う機会もあまり多くはないと思いますが、少しかしこまった場面などで「〇〇さんの人となりに~」など会話中に用いてみると、その人への思いがより丁寧で柔らかく伝わるでしょう。
「相手の人柄に対して使う言葉」ということさえ認識しておけば、使い方を間違って恥をかくという言葉でもないので、ぜひこの機会に使ってみてはいかがでしょうか?
(櫻井弘)
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