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気持ちよく退職するには? 引き止められたときの対処法

水谷育恵(特定社会保険労務士)

新しい夢が見つかったとき、別のキャリアを築きたいとき……。今働いている会社を退職することを考えている人もいるかと思います。しかし辞める意思を会社に伝えても、退職を引き止められる場合があります。強く引き止められても退職の意思が固い場合は、説得に時間がかかって困ってしまうもの。そこで、退職を引き止められたときの対処法を、社会保険労務士の水谷育恵さんに聞きました。

よくある退職の引き止め方

上司など会社の人に退職の意思を伝えても、すんなりと受け入れられず、引き止められることが多く見受けられます。 会社が退職を引き止める方法や理由について、詳しく説明します。

会社が社員の退職を引き止める方法

情に訴える

「後任がいないので退職されたら困る」「今辞められたら周りの従業員の負担が大きくなる」等、労働者の気持ちに訴えて引き止めようとします。

労働環境の改善を示す

仕事の進め方やスピード、仕事量など労働環境の改善を提示して、引き止めることもあります。「残業」が多いことを退職理由として挙げた場合は、労働時間の改善や勤務地の変更を示すこともあります。

待遇改善を示す

「給与」が低い等の待遇面を退職理由として挙げた場合に多く見られるもの。「給与を上げるから」「昇格させるから」等、労働者の待遇を改善させて引き止める方法です。

脅す場合も……

残念ながら、「辞めたら顧客に迷惑がかかる。迷惑かけた分を賠償金として請求する」「退職を撤回するまで、面談室を出さない」など、労働者に対して何かしらの法的措置をすることや監禁するといった方法で脅して退職の意向を撤回させようとする場合も稀にあるようです。

会社が退職を引き止める理由

業務を把握している人材を手放したくない

人が退職する場合、引き継ぎ期間を設けることが一般的ですが、他の従業員も自身の業務で忙しいことが多く、引き継ぎを上手く行うことが難しいことがあります。また新たに人を採用したとしても、業務に慣れた人と同じように業務をこなせるようになるまでに時間がかかったりすることも。退職する人と同じくらいに業務を行える人を養成するのが難しいことが理由です。

人手不足に陥る

常に過剰人員がいる企業は少なく、多くの企業はそもそも人材が不足しがち。その中で辞める社員が出てきた場合、さらに人材が不足することになり、業務が回らない恐れから、引き止める企業が多いです。

上司の評価が下がる

企業によっては、部下が退職した場合にはそれを上司の責任と捉えて、上司の評価が下がってしまうような評価制度を採用しているケースも。その場合、自身の評価が下がることを嫌がり、保身のため、部下が退職するのを防ごうとすることがあります。

離職率が上がることを防ぐ

企業の評価として、離職率が低いことが求められる場合があります。3年以内に離職する人が多いと企業の評価が下がってしまうので、離職率が上がらないように引き止めることも。

採用コスト

新たに人を雇用するには、求人を出して募集する必要があります。そのため、求人広告費やエージェントに支払う料金など、費用がかかります。また新たに雇用した人を一人前の戦力として育てるためには、時間をかけて教育しなければなりません。その費用や教育にかかるコストを削減したいために、既に戦力になっている人材を企業は手放したくないと考え、引き止めることがあるようです。

退職の引き止められた時の対処法

辞める意思が固いのであれば、できるだけスムーズに辞められるように努めましょう。対応を誤ると、退職時期をズルズルと引き延ばされたり、辞めるまでの間会社に居づらくなったりする可能性があります。以下の対処法を参考にしてみてください。

退職を引き止められたときの上手な対応

情に訴えられたとき

「あなたがいないと業務が回らない」と労働者に罪悪感を抱かせたり、「今まで育てた恩を仇で返すのか」などと言われたりした場合、どちらの場合でも感情的にならってはいけません。「転職の意思は変わらない」ことを伝え、引継ぎ業務を淡々とこなしましょう。後任が決まらない場合には、引継ぎマニュアルを作成し、自身が退職した後の後任ができるだけ困らないように配慮しておくといいですね。

退職日を遅らせてほしいと言われたとき

「後任が決まるまで」と言われ、退職者の転職先が決まっていないとそのままズルズル引き延ばされてしまいがち。「〇月末に退職します」など、具体的な期限を伝えるようにしましょう。ただし、繁忙期などには本当に後任が決まらない場合や業務に差し支えることもあるかもしれません。退職まで余裕をもって計画を立てられるように、退職の意思表示をするようにしましょう。また、会社に就業規則がある場合は、それに従って退職時期を伝えることが望ましいです。

退職を引き止められたときのNG対応

待遇改善の交渉をする

ただ退職意思を撤回させることが目的の待遇改善には、安易にのらない方がよいでしょう。その上司が退職者の待遇を決定する裁量を持っているとは限りません。会社からの待遇改善に応じる場合には、本当に実行されることなのか、その後も働き続けることができる環境なのかをしっかり見極めてください。

引き止めの話を全く聞かない

引き止めを行う上司の話を一切聞かず、自身の主張のみを通そうとする姿勢は無用なトラブルを招きます。退職することが決まっていても、少なくとも数週間は引継ぎ業務などで勤務するので、反感を買うような態度は自身のストレスになるだけ。上司の話を聞いた上で、退職の意思が変わらないことを伝えるようにしてください。

条件の不満を退職理由にする

給与や勤務地、労働環境などの条件を理由に退職を考えている人は、退職の意思を伝える前に、改善の余地がないか会社に相談しましょう。その上でなお退職の意思が固い場合、このような話を改めて持ち出すのはあまりオススメしません。退職する際に不満を伝えたいと思う気持ちはよくわかりますが、「その部分を改善するから退職しないでほしい」と言われ、スムーズに退職できない可能性が高くなります。引き止められる理由をわざわざ提示する必要なないでしょう。

【番外編】強引な引き止められ方をしたなら……

もし、先述のように会社から脅しのような引き止めにあった場合、その引き止めは法律に触れるケースもあります。どのような引き止めが違法になるのか、また違法になる引き止められ方をしたときはどう対処すればよいかを、辞める側が知っておくことも重要です。

退職の引き止めが違法になるケース

退職の意向を示した労働者に対して、損害賠償請求すると脅したり、退職しないと言うまで監禁したりすることはもちろんですが、あまりにも長時間の説得や大人数で囲んで説得する等も違法と考えられます。その他、労働者が提出した退職届を受け取らないことなども違法になる可能性が。

違法な引き止めにあったときの対処法

退職について脅迫めいた対応をされた場合には、労働基準監督署(企業が労働基準法などの法律を遵守しているかを監督する国の専門機関)への相談 を検討しましょう。

退職を引き止められても冷静に

会社が退職を引き止める理由、引き止められた場合の対応についてご紹介しました。退職を引き止められた場合、さまざまなことを言われる可能性がありますが、落ち着いて自分の意図を述べましょう。また、退職の引き止めは法律に違反する可能性があります。もし脅しなどを受けた場合は労働基準監督署などに相談してください。

(文:水谷育恵、構成:篠崎夏美)

※画像はイメージです

 

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