ビッグマック指数で、なにがわかる?「インドのハンバーガーは1,600円相当!」

この7月、世界中で販売されているハンバーガーの値段から、通貨価値を比較する「ビッグマック指数」が更新された。もっとも高価なノルウェーでは7.76ドル相当で、いまの日本円なら約800円、最安値はウクライナの1.63ドルで、電車の初乗り料金並の170円前後と差が激しい。
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本家アメリカでは4.795ドルもするが日本では370円なので、1ドル=77円相当となり、102円前後が続く為替とは30%もの差が生まれてしまう。おとなの事情で日々上下する為替とは裏腹に、ハンバーガーの値段はその国の平均年収と物価で決まるのだ。
政情不安でハンバーガーが安くなる?
1986年から英国の経済誌「エコノミスト」がおこなっているビッグマック指数は、世界規模のチェーン店のハンバーガーの価格をもとに、各国の通貨価値を比較するデータだ。この7月の日本とアメリカを比べると、
・日本 … 370円
・アメリカ … 4.795ドル
もしビッグマックが世界共通の通貨だったら、370円=4.795ドルとして扱われる。現在は1ドル102円前後だが、ビッグマックの価格から割り出すと1ドル=77.16円となるので、30%もの差がある。物価やひとびとの経済水準から考えると、日本円の価値は不当に低く見積もられているともいえるのだ。
2010年から2014年の、7月のビッグマック指数の最高値/最低値を、当時のアメリカドルで比較すると、
・2010年 … (高)ノルウェー : 7.20ドル / (安)インド : 1.84ドル
・2011年 … (高)ノルウェー : 8.31ドル / (安)インド : 1.89ドル
・2012年 … (高)ベネズエラ : 7.92ドル / (安)インド : 1.58ドル
・2013年 … (高)ノルウェー : 7.51ドル / (安)インド : 1.50ドル
・2014年 … (高)ノルウェー : 7.76ドル / (安)ウクライナ : 1.63ドル
と、それぞれノルウェーとインドのひとり勝ち状態が続いている。牛肉を食べないインドでは鶏肉が使われているのも安い理由だが、ウクライナはご存じのように緊迫した情勢が続いているのが原因で、通貨であるウクライナ・フリヴニャ(UAH)の価値が下がっている。
今年1月は1UAHあたり0.12ドル程度だったのに対し、不安材料が多い現在は0.08ドルと、3分の2にまで下落してしまったため、170円程度まで下がってしまったのだ。
ファストフードは高級レストラン?
国によって4~5倍もの差が生じるのはなぜか? ハンバーガーの原価よりも「その値段でも買えるのか」、つまり平均収入が最大の理由だ。
毎年のように最高値を記録しているノルウェーは、通貨であるノルウェー・クローネ(NOK)が1NOK=約16円、アメリカドルでも約6ドル相当なので、どちらで計算しても800円程度となる。ファストフードにしては高価過ぎるように思えるが、この価格で販売できるのは、ひとえに「購入できる」からだ。
世界保健機関(WHO)の資料から、2009年の国別の平均年収(米ドル)と、今年7月のハンバーガーが何個買えるかを比較すると、
・ノルウェー … 54,880ドル(約513万円) / 7,072個
・インド … 3,250ドル(約30万円) / 1,993個
・日本 … 33,470ドル(約313万円) / 9,195個
・アメリカ … 45,640ドル(約427万円) / 9,518個
となり、最高値のノルウェーでも「ちょっとお高い」程度に過ぎない。対して最安値のインドでは年収の2千分の1を占める。当時の16.78ドルは1,571円に相当するので、インドでは高級食品となるのだ。
さらにノルウェーでは25%もの消費税が加わるので、ハンバーガーに限らず物価は日本よりもはるかに高い。ただし平均収入も多いのでさほど負担にならない仕組みだが、収入が少ないインドでは1,600円相当となってしまう。
もしノルウェーと同じ収入対比で設定すると、インドのハンバーガーは0.45ドルとなり、50円以下で販売したら店の経営が成り立たなくなってしまう。
まとめ
・「ビッグマック指数」は、ハンバーガーを通貨に見立てたデータ
・ほぼ毎年最高値はノルウェー、最安値はインド
・インドのハンバーガーは、日本円で170円弱
・平均収入から考えると、インドのハンバーガーは1,600円相当!
1,600円のハンバーガーは、買うのに勇気が必要だ。しかもビーフではなくチキンだから、インドのハンバーガーはお買い得感がきわめて薄い。
それでも存在するのだから、さぞかしおいしいに違いない。ナマステ。
(関口 寿/ガリレオワークス)