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あ~ウザい! 不幸自慢ばかりしてくる人の心理とは

笹氣健治(心理カウンセラー)

不幸な出来事があったときには、つい誰かに話を聞いてもらいたくなるものです。しかし、そんな不幸話をエンドレスで聞かされ続けてしまうと、「それって不幸自慢?」と、イラっとしたりウンザリした気分になってしまうもの。人はなぜ不幸自慢をするのでしょうか? 不幸自慢をされたときにはどんな対応をするのがいいのでしょうか? 今回は不幸自慢について考えてみたいと思います。

不幸自慢する人の心理

「私はいかに不幸なのか」を繰り返し話し続ける「不幸自慢する人」。そんなに自分の不幸をアピールして何が楽しいの? と思ってしまいますよね。まずは、不幸自慢する人の心理を解説しましょう。

不幸自慢とは

「先週お財布を落としちゃって、なんとか戻ってきたけど中身の1万円札がなくなってたの」
「それくらいいーじゃん。私なんて先月の海外旅行で10万円とクレジットカードが入ってたお財布スラれたんだよ」
「2人とも私より全然マシ。彼氏にお金を貸したら全然返してくれなくて、挙句の果てに浮気されてるのがわかって、2週間前に別れたとこだし、私。会社の上司はセクハラ発言ばっかりするし、毎日遅くまで残業だし、本当にツイてないわ」

このように「私はいかに不幸なのか」といった自分の不幸話をしたことがある人は少なくないのではないかと思います。自分の不幸な境遇を誰かに聞いてもらいたいと思うときは誰にでもあるものですが、そんな不幸話も繰り返し聞かされると、聞く側としてはだんだん嫌な気持ちになってきます。特に、「私は誰よりも不幸だ」と言わんばかりに自分の不幸をアピールされたり、いい加減にやめてほしいと思うのにエンドレスで話し続けられると、内心「もういい加減にして」とウンザリしたり、「また不幸話?」とイラっとしてくるでしょう。まるで自分の不幸を自慢するかのように話し続けるこの人は、いったい何が目的で「自分がいかに不幸であるか」をアピールしているのでしょうか?

「自慢」と言っても、実際には本当に自慢したいわけではありません。不幸自慢する人の話を聞いていると、「自分のつらさをわかってほしい」「なぐさめてほしい」ということなのかな、と一瞬思ってしまいがちですが、心理学的に考察すると、実は、そういったことが本当の目的ではないことがわかります。不毛な不幸話を繰り返し続ける行為の裏には、他に真の目的が存在しているのです。

不幸自慢をする理由と心理

心理学の理論のひとつに「ゲーム分析」というものがあります。ここでいう「ゲーム」とは、日常生活の中でいろいろな形で繰り返されるコミュニケーションパターンのことで、心理ゲームと呼ばれたりします。一般にゲームと言えば、楽しむために行う遊びのことであり、何か価値のあるものを作り出そうとする生産的行為ではなく、時間つぶしであったり、他人と交流するために行うものです。心理ゲームの「ゲーム」もそこから来ています。

不幸自慢は、心理ゲームの一種、すなわち、コミュニケーションパターンの一種と考えることができます。では、人はどうして不幸自慢のようなゲームをするのでしょうか? 「ゲーム分析」の理論から、次のように考えることができます。

時間をつぶすため

人は起きているときにまったく何もしないで時間を過ごすことができません。ひとりであれば、ボーっとしたり本を読んだりして過ごす。誰かといれば、会話をしたり一緒に遊んだりして過ごす。このように私たちは常に何かをしていなければ生きていられないのです。ただし、何かをするという場合、それが必ずしも楽しいことである必要はありません。嫌なことであっても、何もしないよりはマシです。たとえば、やることがなくて暇で仕方ないときに何かトラブルが発生した場合、困ったなあと思いつつも、心のどこかで「やることができてよかった」と思う、といった経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか? 不毛な不幸自慢をするのも、同じように時間をつぶすための絶好の手段のひとつだと言えます。

孤独を解消したい

不幸話をして他人から何らかのリアクションをもらうことは、自分がここにいる、という存在感を得ることに役立ちます。それはとても大きな安心感につながることです。心のどこかに寂しさを抱えている人がその孤独感を紛らわすためには、誰かと交流を持つのが手っ取り早い方法であり、その際の会話のネタとして不幸話をするのです。日常的に親しい人と頻繁にコミュニケーションする機会がある人が不幸話をすることはまずありません。わざわざそんなことで孤独を解消しなくても、自分の存在を常に感じることができているからです。

自分はダメな人間であることを確認したい

不幸自慢をしている人を励まそうとして、「そんなにクヨクヨしなくてもいいじゃない」とか「もっと前を向いたら?」と声をかける。それは裏を返せば、クヨクヨしているあなたはダメな人、前を向かないあなたはダメな人、と否定しているのと同じです。不幸自慢をする人は、心のどこかに「自分はダメな人間だ」という否定的な自己概念を持っています。そういう人が、クヨクヨしている自分、前を向かない自分を指摘されると、「ほら、やっぱり私はダメな人間なんだ」と再認識できて、安心感を得ることできるのです。なんとも不思議な心理ですが、その安心感を求めるため、わざと否定されるために不幸自慢をしてしまうのです。

不幸自慢してくる人への対処法

不幸自慢の人の話を聞き続けていると嫌な気分になる。それは不幸自慢の人のコミュニケーションパターンに知らず知らず巻き込まれてしまっているからです。どういう反応をすると巻き込まれるのか、巻き込まれないためにはどう対処するのがいいのか、考えていきたいと思います。

やってはいけない対処法

不幸自慢はある種の「ゲーム」だと言いましたが、ゲームに巻き込まれると往々にして、イラ立ち、理不尽さ、徒労感を味わって終わることになります。不幸自慢を聞き続けて、最終的に「なんなの、この人は!」とイライラしたり、真面目に受け答えしてあげた自分が馬鹿を見るような理不尽さを感じたり、何とか役に立とうといろいろ努力してもすべてムダに終わって徒労感を感じたりするのです。どういう対応をするとそんな嫌な気持ちになってしまうのか、そうならないためにはどういう点に気をつければいいのか、ひとつずつ解説したいと思います。

共感してはいけない

暇つぶし目的で不幸自慢をする人は、不幸のネタがなくなると会話が終わってしまって暇つぶしにならなくなりますので、不幸な話を延々と続けようとします。それにも関わらず、「大変だったのね」「それはつらいね」といったように共感的な言葉をかけられると、癒されて不幸な気分が軽くなって会話が終わってしまうので、無意識のうちに相手の気遣いを拒絶する態度をとります。気の毒に思って声をかけてあげたのに、「同情なんかいらない」といった反応を示したりするのもその理由からです。そんな反応をされると、思わず「なに、その態度!」とイラっとします。不幸自慢の相手に共感しても何もいいことはないのです。

助けようとしてはいけない

不幸自慢の人は、孤独を埋めるために会話を長引かせたいので、会話が終わってしまうような前向きなアドバイスもNGです。「くじけずにがんばって。私もできるだけのサポートをするから」と手を差し伸べようとしたり、「そういうツライときは気分転換に旅行でもするといいよ」とか「もっと不幸な人もいるから、あまり気にしないほうがいいと思うよ」とアドバイスしても、「気休めはやめて」「私のこの気持ちは、どうせ他人にはわからない」といったように、意固地な態度をとり続けます。「この人は不幸から抜け出す気はないの?」「こんなに心配して言ってあげてるのに、まるで私がバカみたい」といったように理不尽な気持ちにさせられてしまいます。

励ましてはいけない

自分はダメな人間だと思い続けたいのが不幸自慢の人です。そんな人に「あなたはちっともダメじゃない」「あなたにもいいところがある」と伝えようとしても、そのメッセージはまったく心に届きません。変な話ですが、自分がダメな人間であるためには、自分にいいところがあってはいけない、そう思い込んでいるからです。それなのに、不幸自慢の人になんとか少しでも前向きになって元気になってもらいたいと考えて、「そのうちきっといいことあるよ」とか「あなたなら大丈夫」と言っても、「そんなことない、私はずっと不幸なの」と反論が返ってきます。いくら励ましても、「自分はダメな人間」という思い込みの殻から出てくることはなく、結局は、いろいろやったけどムダだった、という徒労感だけが残ることになります。

上手な対処法

不幸自慢のゲームに巻き込まれないことが重要です。それには不幸自慢のコミュニケーションパターンに乗らないこと。そのための具体的なポイントは次の3つです。

他人事として淡々と聞き流す

とにかく相手の話の内容に関心を寄せないことです。他人の不幸話はつい興味をそそられますが、不幸自慢を繰り返す人だとわかっているなら特に、突き放した感じで話を受け流しましょう。それがどうした? といった他人事としてとらえて、表情は一切変えないようにします。感想も言いません。「へ~、そうなんだ」「ふ~ん」といったように、話し甲斐がないと思われるくらいを意識します。すると相手は、だんだん話す気力が失せてきて自然に会話が終わるはずです。

相手に今後のことを考えさせる

淡々と聞き流していると、「ちゃんと聞いてくれてる?」「なんか冷たいね?」といったように迫ってくる場合もあります。そんなときは、こう答えましょう。「そんなことないよ。私に何かできることある?」「私にできることがあったら言ってみて?」この質問をされたら、相手はその答えを探さなければならなくなります。会話が続かなくなるからです。しかし、そもそも不幸話を聞いてもらいたいだけであって、不幸な気分から抜け出そうという意識がないので、質問の答えは持ち合わせていません。すると言葉に詰まって、自然に会話が終わることになります。

制限時間を設けて話を切り上げる

「ごめん、このあと〇時に行かなきゃいけないところがあるから、あと10分くらいしか話を聞けないのよ」といったように、制限時間を設けるのもひとつの方法です。こう言われると、この人は私の話にずっと付き合ってくれないな、とわかるので、ほかの話し相手を探すために会話が終わることになります。

不幸自慢という心理ゲームから抜け出そう

会話をしていて嫌な気分になる、後味が悪い、そんなときは心理ゲームにはまっている可能性が高いと言えます。そういった嫌な状況から抜け出すには、知らず知らず繰り返されるパターンを意識的に断ち切る必要があります。それにはまず、あるパターンが繰り返されていることに気づくこと。そして、あえていつもやっているのとはちがう対応を試みること。そうすることで、心理ゲームから降りることができます。不幸自慢の話に付き合わされるのも、心理ゲームのひとつです。自分の貴重な時間をムダに浪費しないためにも、今までとはちがった新しい受け答えをいろいろと試してみてください。

(笹氣健治)

※画像はイメージです

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