【新連載】苦しかった彼との恋は、今ではまるで夢のよう……
Story1 ★まぶしい朝に目覚めて
最近、目覚ましが鳴らないうちに目が覚める。
カーテンを半分開けて寝るようになったからだ。
時計を見ると朝の5時。
ベッドから身体を起こし、
残りのカーテンを開けて外を見る。
「おはよう」
誰に言うともなく朝の挨拶を口にすると、
すばやく着替え、軽く柔軟体操をして外に出た。
ジョギングをするためだ。
走り始めると銀杏の街路樹から、
夏の朝日がチラチラとこぼれてまぶしい。
空気がさらさらして涼しいのも、
あとほんの10分ほどだろう。
すぐに強い陽射しに温められて、
蒸し暑くなってしまう。
住宅街はどこも競うように朝顔が植えられ、
えんじや紺にみずみずしく花開いている。
「わたし生きているんだな」
……あれからずいぶんと、
時間を無駄にしたようにも思える。
今のわたしには身の回りのすべてが、
生まれたばかりの赤ん坊のように新鮮だった。