こんにちは、トイアンナです。
1986年に男女雇用機会均等法が施行されて40年。2025年現在、「雇用の均等」は果たして現実のものとなったのでしょうか?
結論から言えば、数字は追いついていないのが現実です。
■男女で給与格差はある、ただし原因は差別だけではない
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」を見ると、女性の平均給与は男性より低いまま。労働者の平均年収は男性が約540万円、女性が約390万円と、約150万円もギャップがあります。
しかし、これには2つの要素が絡まっています。
1.男性と同じくらい働いても、賃金を上げてもらえない問題
2.子育てや介護を優先するため、女性がキャリアダウンを選びやすい問題
■男性と同じくらい働いても、賃金が上がらない会社もある
信じられないことに、「女性=アシスタント職」に就ける企業はまだ残っています。アシスタントという名目だからと賃金は安く、それでいて管理職ばりにこき使うのです。
そうすると、「男性と同じ仕事をしているのに、私だけ給与が低い」という事態が起こります。れっきとした差別です。こんな昭和時代のレガシー制度を引きずる経営者へ男女平等を訴えても「でも、〇〇君は家族を養っているんだから」といなされて終わります。いや、家族を養っているのは女も同じだが!?!? と煮え湯を飲まされるのです。
最近、「パートのおばちゃんが辞めて会社がまわらなくなった」なんて話がよく出てきますが、これぞ女性をアシスタント職として非正規にし続け、いざ辞められると業務が立ち行かなくなるケース。こればかりは、重要な職務を担う女性社員に辞められてから慌ててもらうしか、処方せんがありません。
■「家庭を優先したい」と思わざるをえない女性たち
続いて、「家庭を優先したい」と思って、あえて昇進を拒否するケースです。特に子どもがいる女性は、子どもがいつなんどき病気やけがをして看病のために休みをとるかわかりません。しかも子どもは笑えるくらい、すぐに感染症をもらってきます。そうなれば一週間くらい保育園にも、学校にも行けません。
こんな状況を抱えていて、「夫婦のどちらもがフルタイムで働く」ことに限界を覚える母親は少なくありません。そして、夫と自分のどちらがキャリアダウンすべきかを話し合うと、日本では女性が「ダウン」を選ぶことが多いわけです。
私自身、子どもが1歳ごろから深夜3時に起きる癖がつきました。毎晩、3時から5時まで遊んであげないと寝ないのです。
私は0時から3時まで残業することでフルタイムの仕事を回していたため、睡眠時間は朝5時から7時だけの1日2時間に激減。ストレスでぶっ壊れてしまい「適応障害」として薬をもらっていました。そうでもしないと、暴発していたと思います。さすがにあのときは、「専業主婦になりたい……」と口走りました。すぐに自分の家事ポンコツ具合を思い出して、撤回しましたが。
だからこそ、「フルタイムでやりきった人」は“ゴリラ”と自虐してしまうほど、強くなるのです。というか、強くない人はキャリアダウンしているわけです。
■女性は昇進を恐れなくていい
こういった事情から、「既婚・子持ち・昇進」をそろえた女性は、いわゆるゴリラだらけになります。独身でも、激務企業でサバイブする女性は強くなります。男性と同じくらい強くなるだけですが、それが「かわいくない」とか言われるわけです。
ここまでを踏まえて、
「普通の人が、普通に昇進できないか?」
という問いについては、「できる」と答えます。
ただし、そのためには夫にキャリアダウンしてもらう必要があるだけです。子供が熱を出したら迎えにいってもらう、子どもの栄養・健康・能力開発は夫に任せる。自分は週末に公園で遊んであげるだけ。これくらいまで振り切らないと、部長職以上は厳しいです。なぜなら、世の男性はそうしている世界だから。
でも、家庭より仕事を優先してもいい。女性だって出世をしていい。家族のために稼ぐことで、家族に貢献してもいいのです。そうすれば、あなたは昇進して「心から喜んで仕事ができる」し、年収も伸ばせます。出世すればやりたい仕事を自分で選べるので、言われるままに動かざるをえない平社員時代と比べ、仕事の楽しさを感じやすくもなります。
■いま、女性に必要な強さとは
この話で、別に夫へ「完全無職になれ」というのではありません。時短してもらう、育休を一年取ってもらう、出世コースから外れてもらって、子どもを優先してもらう。これまで女性が「当たり前」として選んできた……選ばされてきた道を、男性がやる可能性を考えるだけです。
いまの女性が“ゴリラ”だらけなのは、男性にも同等の激務パートナーが多いから。男性が専業主夫や時短パートのお父さんになれれば、こちらは仕事に集中できるわけです。
「女性は強くなければ出世できない」とよく言われますが、本当に必要な強さは「頼る強さ」です。夫へ、「ごめん、仕事を減らしてちょうだい」と頼む強さです。私が、稼いでいいのです。私が、昇進していいのです。
そして、夫のキャリアダウンは永遠のものではありません。私たちが、子どもの成長とともにキャリアへ復帰できるように。子どもが大きくなるまで、「誰か」が家族を優先する必要はありそうだ。だったら、それは「自分でなくてもいい」というだけの話なのです。愛着の対象は必要ですが、それが母親である必然性は、特にない。
■制度は熟してきた、あなたはあなたらしく働いていい
そして、制度設計も徐々にですが「共働き」に耐えられる制度になっています。少なくとも東京都では、病児保育施設が公立・私立問わず増えています。ベビーシッターさんも増えました。未来は真っ暗ではありません。私たちは、もっと楽しく働いていいのです。
(文:トイアンナ、イラスト:タテノカズヒロ)