太陽光発電でもうけが出るか?「今から10年だけやるのが賢い」

今年3月、経済産業省が電力買取価格の引き下げを報じた。2012年は40円台だった買取価格が今年は36円程度となる見通しで、わずか2年で10%の大幅ダウンとなる。
【オーロラはきれいだけど……フレア、コロナなど太陽活動が激しくなったら】
太陽光発電はお得なのか? 今年始めれば10年間は36円で買い取ってくれるが、その先はいくらか保証がない。発電設備の老朽化を考えると、10年で打ち切りにするのが「賢い方法」になりそうだ。
5~6年はタダ働き?
太陽光発電による電力買取価格は、発電設備の値段に深く関係している。電力買取が始まったころは初期費用があまりにも高額だったため、高値で買い取らないと釣り合わなかった。機器の値段が下がった現在に買取価格は、値下がりというよりは適正化とも表現できる。
いま始めるなら、初期費用はいくらかかるのか? これは、(1kWhあたりの装置の値段)×(発電量)で決まるので、分けて説明しよう。
住宅用太陽光発電の場合、1kWあたりの価格によって補助金が異なり、
・2~41万円以下 … 2万円
・41万円超~50万円以下 … 1.5万円
・50万円超 … なし
の3タイプに分かれる。つまり、41万円に抑えれば実質39万円で済むのでもっともお得だ。
つぎに発電量は、パネルの設置可能な面積に比例するので、標準的な4.5kWhで計算しよう。パネルの材質やメーカーによって能力差があるが、きりがないので公称値通り発電できると仮定する。
初期費用は(41-2万円)×4.5=175.5万円だ。ただし売電が目的だから、電気をためておく蓄電システムは含まない。あとは太陽が1時間あたり162円稼いでくれるので、初期費用175.5万円÷162円=10,836時間経てばもとがとれる。
果報は寝て待て。
総務省統計局の資料から、2008~2012年を平均した年間日照時間と、10,836時間になるまでの年数を計算すると、
・全国平均 … 1,892時間 … 5.72年
・(1位)東海地方 … 2,151時間 … 5.03年
・(最下位)東北地方 … 1,666時間 … 6.50年
で、地域によって1年半もの差がついてしまう。
平均でも利益が出るのは5.72年後となり、10年計画ならそれから4.28年で約131万円もうかるが、120か月で割ると毎月の黒字は1万円程度にしかならない。発電設備のほとんどは10年保証なので大きなリスクはないが、スペースや労力を考えると「ぜひとも導入!」と言えるか、かなり微妙だ。
10年経ったら打ち切りがお得?
災害に備えて蓄電できるようにしたいひとは、さらに利益が出にくくなる。蓄電池が非常に高価だからだ。
クルマのバッテリーと同じ鉛蓄電池・4.8kWhの装置は75万円で済むが、157kgの超ヘビー級なので置ける家庭は少ないだろう。リチウムイオン電池・3.2kWhなら111kgとやや軽量になるものの、破格の160万円は利益の131万を上回ってしまう。
さらに、どちらも寿命は10年程度なので、つど買い直さなければならない。
ほかの機材も遅かれ早かれ寿命を迎える。主役のソーラーパネルは15~20年だが、破損や汚れで20年後も同じ性能か疑問が残る。やっかいなのはパワー・コンディショナーで、これはパネルが発電した直流電流を交流に変える装置で、寿命は10年程度と言われている。
4.5kWクラスなら25万円前後、住宅用の上限となる10kWになると65~70万円と一気に跳ね上がるが、これがなければ売電できないのだ。
これらを加味し、4.5kWhの設備でパネル寿命の20年まで頑張ると、
・最初の10年間のもうけ … プラス131万円
・10年目でリチウム電池とパワー・コンディショナーを交換 … マイナス185万円
11年目以降で54万円を埋め合わせなければならないが、日照時間が同じく1,892時間/年なら、買取価格は28.54円/kWhがボーダーラインとなる。今までと同様に2年で10%のペースで値下がりしたら、20年後は35%の13.9円となるので「継続しないほうが得」になりそうだ。
まとめ
利益だけが目的なら、
・蓄電池は用意しない
・寿命を迎えなくても、10年経ったら打ち切り
が最良のようだ。
10年後の買取価格がいくらか予想すらできないが、老朽化した設備の修理に日々追われながら安い単価で発電するには、強い信念が必要になるだろう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年03月20日に公開されたものです