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2021年09月29日 09:55 更新

【医師監修】高位破水は気づかない?量が少ない破水と尿もれとの見分け方

妊娠・出産のどこかのタイミングで起こる「破水」の1つが、子宮の出口付近ではない場所から起こる「高位破水」です。出口付近で起こる「低位破水」と何が違うのでしょうか? また、ちょろちょろと出る高位破水と尿もれはどのように見分けるのでしょうか。高位破水は予備知識として知っておきたいことをまとめます。

高位破水は気づきにくいってほんと?

破水を待っている妊婦
Lazy dummy

「破水」とは卵膜(らんまく)が破れ、羊水(ようすい)が外に流出することです。

破水は多くの場合、「陣痛による子宮内圧の上昇」と「赤ちゃんの頭の下降」の影響で子宮口が開ききるころに起こりますが、そのほかにも妊娠中のすべての期間に、さまざまな原因から起こることがあります[*1]。

なお、破水によって出てくる羊水とは、卵膜の内側(羊膜腔)を満たしている弱アルカリ性の淡黄色透明の液体のことです。肺の成熟など、赤ちゃんの発達に重要な役割をもっていて、赤ちゃんを外部からの刺激からも守っています [*2]。

では、破水が起きているのに、それが破水だと気づかない・わからないということはありえるのでしょうか?

ちょろちょろと出る高位破水は気づきにくい

破水は卵膜のどこが破れるかによって「低位破水(ていいはすい)」と「高位破水(こういはすい)」に大別されます。 子宮の出口付近で起こるのが「低位破水」、それ以外の、出口より高い位置で起こると「高位破水」と呼ばれるのです。

低位破水は『水風船が割れたみたい』などと表現されることもあるほどわかりやすい症状がありますが、高位破水は羊水の出方が『ちょろちょろ』ということもあり、自覚しにくいかもしれません。

なお、低位破水と高位破水はどちらも原因などに違いはありません。位置の違いを示すだけで、いずれも起きた時期によって『前期破水』『早期破水』『適時破水』のいずれか判断し、対応が必要になります。

(松峯先生)

破水かおしっこ(尿もれ)か見分ける3つのポイント

これって破水?おしっこ?見分けるポイントはある?
(イラスト=杉井亜希)
高位破水の場合、破水と気づきづらいことはあるものの、次のようなポイントから尿もれと間違うことはあまりないようです。

見分けのポイント1 一瞬ではなく、「ちょろちょろ」でも出続ける
見分けのポイント2 下着がずっとぬれている
見分けのポイント3 尿とは匂いが違う

妊婦さんの多くはポイント1または2で気づき、連絡をしてくれます。尿漏れは妊娠中期以降の妊婦さんにとても多い症状なので、破水と尿もれとの違いは分かりやすいようですね。

(松峯先生)

破水したらどうすればいい?

破水後は基本的に産院に入院して経過を見ながら、それぞれに適した対応を受ける必要があります。

まずは産院に連絡

破水したと自覚したり、判断に迷うようなときはすぐ産院に連絡をして、指示に従ってください。
産院へは用意があれば「産褥パッド」、なければ「生理用ナプキン」をあて、家族などが運転する車かタクシーで移動を(自分では運転しない)。座席にレジャーシート(またはビニール袋)とバスタオルを敷いて乗車するといいでしょう。

破水と同時に発熱や腹痛があったら、それを電話で伝えてください。産院が徒歩圏内の場合も、動くたびに羊水が流れ出るので、可能ならタクシーや自家用車での移動が安心でしょう。破水後、入浴は赤ちゃんの感染の可能性がわずかながら高まるのでやめておきましょう。

(松峯先生)

高位破水した際の対処(治療)

破水した位置にかかわらず入院となり、経過観察や検査結果による治療など必要な対応がなされます。中でも前期破水の場合は必ず感染症を予防するための治療が行われます。

早めに破水したらどうなるの?

破水は、起きた時期によって「前期破水」「早期破水」「適時破水」に分けられます。

前期破水|陣痛が起こる前に破水

分娩開始(1時間に6回以上の規則的な陣痛が始まること)前に破水することで、「前期破水」が起こる確率は全妊娠の5~10%とされます[*3]。前期破水が起こると腟から子宮に細菌が侵入し、赤ちゃんにも感染するリスクが高まるので、感染予防のための対応が必要になります。
そして破水が起きると多くの場合は陣痛が起き、分娩が進行するので、次のような点を検査などで確認し、対応を分けます。

・37週以降か、それ以前か
  (とくに34週未満)
・前期破水が起きた原因は何か
  (とくに絨毛膜羊膜炎※などの子宮内感染があるかどうか)
・赤ちゃんはさまざまな点で安全か、元気か

※絨毛膜羊膜炎は卵膜に細菌が感染して起こる炎症性の病気で、早産の原因として最も多い病気とされています[*4]。

前期破水の対応
妊娠37週以降の前期破水の場合、約90%が24時間以内に陣痛がきて[*3]「分娩開始」となります。
妊娠37週未満に前期破水した場合は、産院で経過を見ていると約50%が24時間以内に、そのほかの約70〜80%が1週間以内に陣痛発来し[*3]、切迫早産となります。早産になると、赤ちゃんが未熟な状態で生まれる可能性があり、とくに34週未満の場合は呼吸器障害などの合併症のリスクが高いとされています。

まずなるべく正期産(37週以降の分娩)となるように対応しますが、感染兆候があれば“赤ちゃんをレスキューする”意味で分娩を誘発する場合もあり、なければ分娩を抑制する場合もあります。赤ちゃんの肺の成熟やその他の状態などと総合的に見て、個別に最善の対応をします。

(松峯先生)

前期破水の原因
前期破水が起こる原因は一般的に「卵膜の異常(絨毛膜羊膜炎など)」「羊水過多」「多胎妊娠」「胎位異常(さかごなど)」「子宮頸部円錐切除術の既往」などとされていますが、不明なこともあります。

原因はいくつかあげられますが、原因不明の場合もあり、一概に言えません。前期破水は妊娠中のどの時期でも起こる可能性があることだと覚えておいてください。

(松峯先生)

早期破水と適時破水|陣痛が始まってからの破水

早期破水とは
陣痛が始まってから、子宮口が分娩に十分な状態に開くまでの間に破水することです。
関連記事 ▶︎陣痛の始まりってどんな痛み? 痛みの時間・間隔・程度など

適時破水とは
陣痛が来た後、子宮口が分娩に十分な状態に開いてから(全開大)破水が起こることです。
関連記事 ▶︎出産のとき、子宮口はどれくらい開く?

早期破水、適時破水の対応

早期破水と適時破水が起きるときはすでに入院している場合が多く、分娩につながる陣痛が始まっている「分娩開始」後なので、そのまま赤ちゃんが出てくるのに備えることになります。

まとめ

「高位破水」は羊水の出方が「低位破水」とは違い、気づきにくいようですが、いずれの場合も、破水が起きたら早急に何らかの対応が必要な状態ということです。下着のぬれなどから破水かもしれないと思った場合は、すぐに産科に連絡し、指示に従って行動してください。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p246
[*2] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p34
[*3] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p182
[*3] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p172

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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