【医師監修】妊娠初期の飛行機はOK? リスクと搭乗する場合の注意点

【医師監修】妊娠初期の飛行機はOK? リスクと搭乗する場合の注意点

最近、妊婦さんの間でもその危険性が知られつつある、妊娠中の旅行「マタ旅」。妊娠中は、俗に言う安定期であっても不要不急の遠出は避けたいところですが、どうしても飛行機に乗らなければいけない時もあるかもしれません。ここでは、とくに「妊娠初期」に飛行機に乗るとどんな影響が考えられるのか、搭乗時の注意点とともにまとめました。


妊娠初期は飛行機に乗れるの?

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最初に、そもそも妊娠初期の妊婦さんは飛行機に乗れるのか? という点を確認しておきましょう。

乗ってはいけないという決まりはない

結論から言うと、妊娠初期に飛行機の搭乗を禁止したり拒否したりするような制度上の制約はありません。また医学的にも「妊娠初期の飛行機の搭乗は禁止」と妊婦さんに言える根拠はありません。

例えば、以前は「飛行機搭乗中の低酸素症により、赤ちゃんに心臓の奇形や神経系の異常が発生する確率が高くなるので要注意」とする考え方もあったのですが、今はその心配は否定されています。 その根拠の1つに、妊娠初期に搭乗勤務している女性キャビンアテンダントに、何ら影響がみられないという報告があります。

確かに飛行機が上空にあるとき機内の気圧は低下するので、血液中の酸素の濃度は少し下がりますが、もともと「健康な女性」であればこの程度の低酸素は問題ないことがわかっています 。

「妊娠経過に問題ないこと」が必須の条件

ただし、妊娠の経過が順調ではない場合には、飛行機は避けたほうがよいでしょう。また、問題なしとされている妊婦さんであっても、どうしても必要というわけではないのであれば、飛行機に乗る乗らないに関わらず、妊娠中の遠出は避けたほうが無難です(理由は後半で解説します)。

妊娠初期には診断書は不要

妊婦さんが飛行機に搭乗するにあたって診断書が必要になるのは妊娠後期のことで、妊娠初期には不要です。

妊娠後期の搭乗には制限あり

妊娠後期の妊婦さんの搭乗に関しては、ほとんどの航空会社が何らかの条件を設けています。具体的には、国内線ではだいたい妊娠36週以降、国際線ではおおよそ32週以降、何かしらの制限があります。ほとんどの航空会社が診断書の提出を求めます。

とくに、出産予定日を含めて28日以内からは、診断書や同意書の提出のほか、付添人あるいは医師の同伴が求められるケースもあります。医学的にも、急に分娩が始まるなどのリスクが考えられるため、この時期はそれまでにも増して搭乗を推奨できません。里帰り出産のために航空機に乗るのであれば、妊娠後期の前半(妊娠32週ごろ)までの帰郷を計画しましょう。

また、国によっては妊婦さんの入国を制限しているケースもあるので、海外渡航の予定がある場合、この点についても事前に確認が必要です。

妊娠初期に飛行機に乗るときの問題点

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妊娠初期に飛行機に乗るときにはどんな点に注意したら良いのか、解説します。

搭乗により体調が悪化する場合がある

妊娠初期は体調が安定しない時期ですが、とくにつわりの症状が飛行機搭乗の支障になることが少なくありません。機内の気圧の変化が吐き気や嘔吐などの消化器症状を誘発することもあります。具合が悪くなっても飛行中は十分な対処ができません。

また、飛行機が離発着する際に耳鳴りや頭痛がするという人は少なくありません。これは離発着の際に機内の気圧が大きく変化するために起こります。上空での機内の気圧は富士山の5合目程度に相当します。そうでなくても妊娠初期は頭痛などが起きやすいため、頭痛がひどい場合には飛行機搭乗は避けるようにしましょう。

機内では知らない人との長時間の接触が起こる

妊婦さんは生理的に免疫が抑制されていて、感染症のリスクが高い状態です。飛行機の中はきれいな空気が循環されていて、通常のオフィスビルなどよりはずっときれいな空気です。しかし、両隣や前後の席の人とずっと一緒にいる状況になるため、そこから感染する可能性はあります。

また、内部の湿度は5~15%で、なんとサハラ砂漠よりも乾燥しています[*1]。このため、のどを痛めやすい環境と言えます。

何かあってもすぐに対処できない

飛行機は陸上の交通機関と異なり、機内で何か緊急事態が起きてもすぐには着陸できません。ですから、たとえば大量出血などになったりしても、迅速に処置を受けるのは難しいのです。妊娠初期に、命に関わるほど大量出血する可能性は低いですが、たまにそういうことも起こります。

妊娠初期に飛行機に乗るときの注意点

妊娠初期でも、仕事などのためにどうしても飛行機搭乗が避けられないケースもあることでしょう。妊娠初期に飛行機に乗る際の注意点をまとめておきます。

気分が悪くならないように

まずは吐き気などが起きて気分が悪くなる確率を少しでも下げるための対策です。

炭酸飲料は避け、食べ過ぎない

上空に行き気圧が低下すると腸が膨張し、お腹が張った感じがしたり、吐き気を催すことがあります。それを防ぐために、炭酸飲料は避けたほうがよいでしょう。また炭水化物などのガスを発生しやすい食べ物も控えたほうがよいかもしれません。機内で食事をする場合、量を軽めにして、飲み物はミネラルウォーターがよいでしょう。

翼の上、通路側、トイレ近くの座席を確保

座席選びも大切です。揺れが少ない翼の上がお勧めです。そして、もし何かあったらすぐにキャビンアテンダントに声をかけられる通路側が安心です。また、トイレに近い席ならなおよいでしょう。
もし可能なら、自分の席の前に広いスペースのある席(例えばドアの横や、バルクヘッド席)を予約しましょう。

旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)の予防

血液が固まるのを防ぐために、水分を十分とるようにしてください。そして長時間のフライトなら、座りっぱなしは避け、こまめに席を立つようにしましょう。水分を多くとるとしばしばトイレに立つことなりますが、トイレのために歩くことも血栓予防に役立ちます。

座席に座っているときも、その場で脚を動かしたり、ふくらはぎをマッサージするとよいでしょう。また、弾性ストッキングを履くのもよいでしょう。反対に、腰回りを締め付ける衣類は避けてください。

なお、妊娠中なので口にする人はあまりいないと思いますが、アルコールは脱水を助長するのでよくありません。


搭乗時の持ち物

搭乗時、常に手荷物として持っておきたい物があります。

エチケット袋を準備

妊娠初期のつわりの症状は人それぞれですが、吐き気などの消化器症状は少なくありません。飛行機の座席にはエチケット袋が用意されているものの、追加で数枚持参しておくと安心です。

母子健康手帳を手元に

何か緊急事態が起きた時、救護してくれる人にあなたとお腹の中の赤ちゃんの状態を的確に伝えるため、母子健康手帳を携えておくと役立ちます。母子手帳をもらう前ならば、予定日だけでもわかっていると状況が伝わりやすくなります。

妊娠初期の飛行機、よくある疑問

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最後に、妊娠中の飛行機搭乗に関するよくある疑問にお答えします。

放射線の影響は大丈夫?

飛行機が飛ぶ約1万メートルの上空は、地上よりも放射線が強いことは確かですが、被曝量はわずかで、有害なことが発生したという報告はありません[*2]。

具体的には、ニューヨークと日本を往復すると、0.15mSv(ミリシーベルト)、7往復で1mSvをやや超える程度です。これは、妊娠中の被曝により流産や胎児奇形のリスクが増えるとされる100mSv以上より十分に低い値です[*3]。

なお、搭乗前に通過する磁気探知機やボディースキャナーは、赤ちゃんへの影響はないと考えられていますが、心配なら検査員に申し出ると別の方法で検査してくれます。

海外旅行はOK?

入国に際して予防接種が必要な国もあります。予防接種には大きく分けて「生ワクチン」と不活化ワクチン」の2種類があり、このうち病原体の毒性を弱めて病原性をなくした「生ワクチン」は、妊娠中には原則的に接種はできません。

病原体の感染性をなくした「不活化ワクチン」は妊婦さんにも接種可能です。

まとめ

妊娠初期の飛行機の搭乗に、制度上の制約はありません。出血や下腹部の痛みなどの不調がなく、赤ちゃんの心拍がしっかり確認できていれば、飛行機に乗ることが流産のリスクを高めるような心配もありません。

そうはいっても、妊娠初期はつわりなどの体調不良が起こりやすいもの。そして飛行機は気圧の変化に加えて、同じ姿勢をとり続けることによって不調を引き起こしやすいものです。どうしても乗らなければならない場合以外、あまりおすすめできませんが、乗る必要があるときは、通路側の席を確保する、母子健康手帳を必ず携帯するなど、できるだけ安全安心な旅行になるよう心がけましょう。

この記事の監修ドクター
産婦人科医 太田寛先生
アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

(文:久保秀実/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]南山堂「治療」増刊「こんなとき先生ならどう対応しますか―プライマリケア診療で困ったときに―」, 2002, p.327.
[*2]メディカル・サイエンス・インターナショナル「トラベル・アンド・トロピカル・メディシン・マニュアル」, 2012, p.264.
[*3]日本旅行医学会学会誌, 9(1), 2011, p.94

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、[内閣官房][厚生労働省]妊婦に関する情報[日本小児科学会]幼児に関する情報など公的機関等で発表されている情報をご確認ください。

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