アラサーから学ぶ、デヴィ夫人のマナー講座『選ばれる女がやっていること』書評
仕事、結婚、からだのこと、趣味、お金……アラサーの女性には悩みがつきもの。人生の岐路に立つ今、全部をひとりじゃ決め切れない。誰かアドバイスをちょうだい! そんな時にそっと寄り添ってくれる「人生の参考書」を紹介。今回は、『選ばれる女がやっていること デヴィ夫人のマナー論(ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ著・Clover出版)』を、ライターのミクニシオリさんが書評します。
SNSやテレビでたびたび話題にあがる、とある女性がいる。自分の意思をまっすぐ持つ姿勢を大切にしながらも、時にそれをユーモアにさえ変えてしまう。御年83歳を迎えてもメディア各所で活躍し、どのような注目のされ方をしても、ピンと伸びた背筋や力強い目線、品のある振る舞いで人々を魅了する……そう、彼女の名はデヴィ・スカルノ。通称・デヴィ夫人だ。
そんな彼女の生き様や人生は、取り上げられてはインターネットでバズる、を何度も繰り返している。夫人のポリシーや名言が拡散される度に、彼女の著書も注目されてきた。
特に有名なのは、2019年に発売された『選ばれる女におなりなさい デヴィ夫人の婚活論(ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ著・講談社文庫)』。だけど、実はその後に発売された本が、全女子必見の超絶ライフハック本であることは、まだあまり有名ではない話。
【この本を読んで分かること】
・マナーが「なぜ役立つのか」
・誰でもできる「女性らしさ」の演出方法
・どこにいっても恥ずかしくない「育ちのいい女性」の作り方
1ページ1マナーの「気軽さ」
デヴィ夫人の最新著書である『選ばれる女がやっていること デヴィ夫人のマナー論(ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ著・Clover出版)』には、恋愛・結婚・就職・受験など、女性の人生において重要なシーンで役に立つデヴィ夫人のマナー術がまとめられている。9つのチャプターの中で、なんと100を超えるマナー術が軽快に語られていく。
見た目、姿勢、表情、食べ方、話し方……デヴィ夫人によれば、その人の品位は振る舞いの一つひとつににじみ出るものなのだという。たしかに、テレビで見るデヴィ夫人は、たとえバラエティ番組に出ていても、高貴で品がある。
日常の中で「あの人、素敵だな」と、ふと注目してしまう女性って、細かな所作や気遣いが美しく、そしてスマートな人だったりする。本を読むとまず、マナーがどれだけその人の印象を変えるかが分かる。100超えのマナー術を今日から全部取り入れるのは難しいかもしれないけれど、意識するだけで変えられるテクニックも多かった。
だいたい1ページ弱の中に、一つのマナーとそれを気をつける理由やコツなどが書かれているので、意外にもサクサク読むことができる。自分が気になる項目を目次から探せば、5分もあれば気になるマナーを学び切り、練習するところまでいける。
100を超えるマナー術、身につけるべき理由
また、世の中にマナー本は数あれど、デヴィ夫人のすごいところはそのカリスマ性。他の人に言われるよりも、デヴィ夫人に言われた方が「そうした方がいいんだろうな」とすんなり受け入れられる。それは、デヴィ夫人が自身の苦労も努力も、すべてをさらけ出してメディアで活動してきた実績の賜物。
テレビでデヴィ夫人を見たことがある人なら誰でも、彼女の意思の強さやまっすぐ通った芯の強さを理解できる。そんなデヴィ夫人から教わるマナー術だからこそ、やってみようと思えるわけだ。
本を読む前は「そりゃあ、マナーはある方がいいに決まってる。けれど、そんなに肩ひじ張って生きるのは大変そう」と思っていた。でも、実際に本を読んでみると、品位を保つのがどれだけ大変なことなのか、その本質に気づく。
気品ある女性になるためには並々ならぬ努力が必要だけど、本の中で指摘されるマナーには「なるほど、そんなところもか」と思ってしまうような、今まで自分が全く気をつけてこなかった行動の改善方法も書かれている。歩き方や話し方など、普段何気なく行っていることは、意識を持って行動に移すことが難しい。だからこそ、本に書かれたすべてのマナー行動をやりこなす夫人は、意識することなく気品ある行動ができるのだろう。だからこそ、マナーにはお育ちが出る、と言われるわけだ。
マナーは相手に貴ばれるための「社交術」
本を読み終わってからは、Youtubeなどでデヴィ夫人が動いていたり、お話していたりする姿をわざわざ見にいくようになった。本でマナーの要点を押さえてから夫人の姿を見てみると、実際にマナーを取り入れた所作を見ることができるので頭に入りやすい。
この本を読んでみて一番メリットを感じたのは、さまざまなマナー術を知れたことよりも、夫人がマナーをどう駆使しているかを知れたことだった。社会人として生活している中では、最低限のビジネスマナーさえこなせていれば悪目立ちすることはない。
だからこそ、マナーの必要性そのものがピンときていなかった。「気品のなさ」が品のある人にとってどう映っているのか、どのような評価をされる可能性があるのかが知れたし、逆にマナーがあることでどう扱ってもらえるのかを知れた。
本の中で一番グサッときたのは『暮らし』チャプターの社交術「大切にされたいなら、まずやること」の中の一小節。
ふるまいや見た目、態度が変われば、自然とあなたに対する態度が変わってきます。なぜかというと、人は気品ある人を粗末には扱えないからです。もしあなたが大切にされていないと感じるなら、それはあなたを大切に扱わなければいけない存在なのかが相手に伝わっていないということなのです。
マナーや教養がなくても、ラフさのある女性は親近感があるように見えるかもしれない。けれど、相手に大切に扱われたいなら、親近感よりも高級感を演出した方がいい。もちろん常に隙なく、お高くとまる必要があるわけではないことは、デヴィ夫人その人を見ていれば分かる。
本を読んでいると、自分が変われば、周りの環境も変わるのだということをまざまざと感じさせられた。決して裕福な家庭に生まれたわけではなかったデヴィ夫人。彼女は努力で得た知識や教養、そして気品を持って、誰もに貴ばれる存在となった。
デヴィ夫人は、周囲から大切にされたいなら、自分の行動の理由も、そして周囲も大切にしなさいとも教えてくれた。マナーに気を配るのは、自分のためだけではなく、周囲のためになることでもあるのだと。
想像以上に奥深い、マナーとそのマインド論。読んで損になることは、まずない。
(ミクニシオリ)
※この記事は2023年08月20日に公開されたものです