「頭が下がる思い」の意味とは? 使い方と注意点、目上の人に使うのがNGな理由
「頭が下がる思い」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。実は目上の人に使うのはNGな言葉だと知っていますか? 正しい使い方や注意点、言い換え表現について解説します。
「あの人には本当に頭が下がる思いです」といった言葉を耳にしたことはありませんか?
「頭が下がる思い」とは、主にビジネスシーンで使われており相手の行動や考えなどに尊敬の念を持っていることを伝える言葉です。
使い方によっては間違った場面で言ってしまうこともあるため、正しい意味を知っておきましょう。
この記事では「頭が下がる思い」の意味や正しい使い方を解説していきます。
「頭が下がる思い」の意味
「頭が下がる思い」の意味とは、相手に対して敬服する、感服するといった気持ちを伝える言い回しです。
例えば、その人の行動や技術、考え方などに深く感心して、尊敬の念を抱いているという意味になります。
頭が下がる思い
読み方:あたまがさがるおもい
相手に対する尊敬・敬服・感服の感情が込み上げる、そのためにおのずから低頭したくなる、という意味合いで用いられる言い回し。出典:『実用日本語表現辞典』
辞書では、相手に対する尊敬の念が込み上げて、自分から頭を下げたくなるような気持ちの言い回しだと記載されています。
尊敬するというポジティブな感情ですが、実は使う相手によっては避けた方がいい言葉でもあります。
「頭が下がる思い」の使い方と例文
「頭が下がる思い」は、相手の行動や考え、技術などに対して、思わず頭を下げたくなるような素晴らしさ、尊敬を感じていることを表現する言葉です。
理由は後述しますが、目上の人に対して使用すると、失礼と捉えられてしまう可能性があるため、注意しましょう。
例文
ビジネスシーンでは同僚や同じプロジェクトで協力し合っている取引先など、立場がほぼ等しい相手に対してなら「頭が下がる思い」という表現が使えます。
仕事でまわりよりも時間をかけてプロジェクトに参加してくれた、高い成果を挙げてくれたなど、周囲への貢献度の高さをすばらしいと表現する言い回しです。
・「〇〇さんがこのプロジェクトに尽力してくださって頭が下がる思いです」
他にも、スピーチやセミナーなど複数人に向けて感謝や尊敬の気持ちを伝える時にも「頭が下がる思い」を使いましょう。
例えばリーダーや上司として皆の前で準備の苦労をねぎらい、努力してくれた感謝の気持ちを伝えたい時にも、「ただただ頭が下がる思い」といった表現により、深い感謝が伝わりやすくなります。
・「準備の苦労を考えると、皆さんにはただただ頭が下がる思いです」
「頭が下がる思い」を使う時の注意点
「頭が下がる思い」を使う時は、相手にとって失礼にならないように使う人の立場や、状況を考えることが大切です。
特に似た表現もあるため、気付かないうちに間違った言葉遣いになってしまう場合もあるでしょう。
ここでは、「頭が下がる思い」で知っておきたい、3つの注意点を紹介します。
(1)目上の相手には使わない
「頭が下がる思い」は、基本的に同じ立場の人に使う言葉です。
もともと目上や年上の人には、頭を下げる立場であり、敬意を払う存在です。
そこで「頭が下がる思い」と表現すると、今までは上司を敬っていなかったと受け取られる可能性があります。
そのため、基本的に立場が上の人には使わずに、「感謝しております」「尊敬しています」と、ストレートに表現しましょう。
(2)「頭が上がらない」との使い分け
「頭が下がる思い」と「頭が上がらない」は、似たような言い回しですが、それぞれ意味が違います。
「頭が上がらない」とは、相手の権力や力に圧倒されて、対等にいられないという意味の言葉。つまり、相手に強い恩や感謝があり、お世話になった時に使います。
「頭が下がる思い」は尊敬や感謝を伝える言葉のため、くれぐれも使い分けに注意しましょう。
(3)第三者を語る時は「頭が下がる思い」を使ってもOK
「頭が下がる思い」は目上の人に使うことが失礼にあたると紹介しました。ただし、例外として第三者目線で語る時は、上司など目上の人に対して表現しても問題ないという見解もあります。
例えば相手に直接言うのではなく、他の人に「〇〇さんは誰よりも努力していて頭が下がる思いです」と、表現することは失礼にあたりません。
あくまでも、尊敬し、感謝しているという気持ちがあると、他の人に語っている状態のため、対面で本人に言わなければ目上の人のことでも「頭が下がる思い」を使用できるでしょう。
「頭が下がる思い」の言い換え表現
「頭が下がる思い」には、さまざまな類義語があります。状況によって言い換え表現を使って、スマートなやりとりを心掛けましょう。
(1)「脱帽する」
「脱帽する」は、相手の行動に感動し、思わず帽子を脱いでしまうといった意味です。この脱帽とは、「身に着けているものを取る」という意味の「脱ぐ」が使われています。
また、相手に対して自分よりも上だと認める状況に、降参や敬意を評する意味で帽子を脱ぐという礼儀があります。
そのため「脱帽する」は相手が自分よりも上であり、尊敬する人物だという証明になる言葉なのです。
ただし気を付けたいのは、降参するという意味があるため、もともと立場が上である上司などの目上の人には「脱帽する」という言葉は使わないよう気を付けましょう。
(2)「恐れ入る」
「恐れ入る」とは、目上の人に対して感謝や敬意をあらわしたい時に使う言葉です。「頭が下がる思い」という表現は、基本的に目上の人には使わない言い回しです。
そのため、目上の人に似たような意味で、敬意をあらわしたい時には「恐れ入ります」を使いましょう。
「恐れ入ります」は感謝の「ありがとう」の意味でもよくビジネスで使われます。幅広い意味合いで使える言葉のため、目上の人や取引先に対して使うと良いでしょう。
(3)「一目置く」
「一目置く」は、相手の技術や行動に対して「自分より優れていることを認めて一歩譲る」という意味があります。
「一目」は囲碁が語源で、弱い方が最初に石を1つ置いて対局をスタートすることから、「相手の方が優れているため自分が一目置く」とニュアンスで使われます。
こちらも「相手と自分は対等だけれど、優れているところがあるので一目置く」という意味のため、年上や目上の人には使わないよう気を付けましょう。
「頭が下がる思い」は尊敬と感謝を伝える時に使える言葉
「頭が下がる思い」は、相手の振る舞い、考え、技術など、尊敬できるポイントがあると伝える言葉です。また、プロジェクトなどに努力してくれたことに深い感謝を示す時にも使われる表現です。
ただし「頭が下がる思い」は、目上の人に対して使うと失礼に当たる可能性があるため注意しましょう。正しい使い方を知り、相手に自分の気持ちをスマートに伝えましょう。
(にほんご倶楽部)
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※この記事は2023年05月18日に公開されたものです