「最初はできないと思っていた」小池徹平が語る、3度目の『キンキーブーツ』
“前回を超える”という表現は絶対にしたくない
ーー今回座長として3回目の『キンキーブーツ』になりますが“ここを大事にしたい”という部分があれば教えてください。
色々もちろんありますが、今回3回目をやるにあたっての一番大きな変化は、やはりローラ役が城田優になること。作品は演じる人が変わると雰囲気や印象が変わることもあると思うのですが、変わらないものとしては、『キンキーブーツ』を愛する気持ち、大切にする気持ちですね。それは絶対に忘れてはいけない大切なことだと思っています。
これまでの『キンキーブーツ』を作り上げたのは、初演、再演を作った日本カンパニーの力でもあるし、春馬の力でもある。だからこそ、春馬の思いは僕らが引き継いでいきたい。
だからこそ“前回を超える”という表現は絶対にしたくないと思っていて、「新しいカンパニーの『キンキーブーツ』も最高だよね」と言われる作品にしたいと思っています。
春馬に、新しいカンパニーの『キンキーブーツ』を“いいな”って悔しがられて、僕がそれに対して「どうだい、いいカンパニーだろう!」と言えるくらいのチームでやりたいなと思っています。
ーー3度目の公演となると、作品の理解が初演と変わってくると思うのですが、『キンキーブーツ』で小池さんが今一番好きなシーンを教えてください。
王道なところではあると思うのですが、僕は最後にみんながブーツを履いて踊る『Raise You Up(レイズ・ユー・アップ)』が一番好きです。
あの瞬間が『キンキーブーツ』の最高潮というか、本当に「ここって日本なのかな?」と錯覚するくらい、(初演・再演はコロナ禍ではなかったので)客席のみなさんが立ち上がってワーッと盛り上がって、ステージと一体化するようなエネルギーをすごく感じるシーンなんです。
10年くらい僕はミュージカルをやってきているんですが、それは『キンキーブーツ』でしか感じたことのない感覚で、ここまでハッピーなパワーに包まれる舞台は今までに無いなと感じます。
『キンキーブーツ』で得た“他人を受け入れることの大切さ”
ーー今回は3度目の公演となりますが、観客の皆さんに小池さん自身が特に注目していただきたいところはありますか?
これもやっぱりローラですね。この作品は “僕よりローラを見て!”という気持ちで演じているので……。
もちろんチャーリーがストーリーを進める主人公ではあるのですが、やはりお客さんに楽しんでもらえるところは、ローラのパフォーマンスかなと。僕はこの作品を観た人が「ローラ最高だったよね」と言ってくれるのが、最高に嬉しいんです。
ーーなるほど。チャーリーとローラの友情も見所ですよね。
チャーリーとローラは育った環境も、見た目も、キャラクターも全然違うけれど、共通するのが父親関係のこと。お互い父親とのことで葛藤があって、それを乗り越えて、出会って、心を通わせているんですよね。“心の蓋を開けたら同じ形をしていた”みたいな……。
そうやってお互い分かり合えた瞬間から、一つの目的に向かって、“一緒にブーツを作っていこうよ”となった時の歌『Not My Father’s Son(ノット・マイ・ファーザーズ・サン)』は本当に好きです。
本当に心からお互いのことを分かり合えた友達のような、じわーっと心が温かくなって広がっていく家族のような感情でいっぱいになる瞬間で……。チャーリーとローラの関係はそういった友情の芽生えや、人を受け入れたときの繋がりがすごく良いなと思います。
ーー『キンキーブーツ』では今語っていただいたような“自分自身や他者との向き合い方”が描かれますが、この作品から小池さんが影響を受けたことはありますか?
この作品の根本となる“他人を受け入れることの大切さ”というのは、影響を受けている大きな部分だと思います。“他人を受け入れる”というのは、簡単なようで非常に難しいことなんですよね。自分や相手を受け入れる勇気もそうですし、優しさや器の大きさというか……。
それをぱっと気づかせてくれるようなことがこの作品にはあるので、そこは非常にすてきなメッセージだと思います。
ーー今後、挑戦したい役やお仕事、ファンの方に期待してほしいことがあれば教えてください。
一つの場に絞らず、色々なところで自分が活動している姿を見せられたらいいなと思っています。
舞台のようなお芝居を生で観てもらうような“生”に変わるすばらしいことはないのですが、映像だと残ったりもしますし、コロナ禍で始めた自分で配信できるコンテンツもある。
これから新しいコンテンツが増えることもあると思うので、今後も色々なことに挑戦して進化していきたいです。
ーーありがとうございました。
ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』
日本中を熱狂の渦へと巻きこんだ伝説のミュージカルが帰ってくる!
誰もが不安を抱える中、大きな愛で気分を引き上げてくれる『キンキーブーツ』。圧巻の歌唱力にダンスとさまざまなエンターテインメントで魅了し、観客の世界を輝かせてくれること間違いなし。多様化の時代だからこそ、自分自身そして、他者との向き合い方を教えてくれる、ブロードウェイ・ミュージカルの最高傑作。
東京公演:2022年10月1日(土)~11月3日(木・祝)東急シアターオーブ
大阪公演:2022年11月10日(木)~11月20日(日)オリックス劇場
脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力/上演台本:岸谷五朗
訳詞:森 雪之丞
出演:小池徹平、城田 優、ソニン、玉置成実、勝矢、ひのあらた 他
※この記事は2022年10月03日に公開されたものです