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【前編】イケメン俳優の成長にドキッ! 2022年夏ドラマ演技レビュー

#2022年夏ドラマ演技レビュー

小田慶子

7月よりスタートした2022年の夏ドラマ。ゴールデンタイムの連続ドラマには、今をときめく人気イケメン俳優が数多く出演しています。そこで、ドラマのコラムやインタビュー記事を執筆しているライター・小田慶子さんが、今期ドラマで注目すべき俳優とその演技の見どころを紹介します!

7月も終わりに差しかかり、今年の夏ドラマが出そろいました。今期はゴールデンタイムの連続ドラマに人気上昇中の“いい男”がいっぱい! 俳優としても今後さらなる飛躍が期待される人がそろっています。そこで今回は、ふだんドラマのコラムやインタビュー記事を執筆しているライターが、注目の俳優とその演技の見どころを前後編で紹介します。

「競争の番人」(フジテレビ系)坂口健太郎さん

元祖塩顔男子だけに、女性に対しても塩対応のクール系男子がハマる坂口健太郎さん。朝ドラ「おかえりモネ」ではマイペースで不器用な医師・菅波を演じ、Twitterに“俺たちの菅波”という応援のハッシュタグができたほど。

悪役演技を経て、表情に大人のすごみが出てきた

今回の「競争の番人」では、東大法学部を首席で卒業したスーパーエリートである公正取引委員会の審査官・小勝負を演じています。杏さんが演じるヒロインの白熊に対してはやはり塩対応の役。原作小説では小勝負は「ロボットのような均整美」のイケメンということなので、そのイメージとは違うのですが、かっこいいことには変わりないので問題なし。

ビジネスでズルをする人間は許せないという正義感を持って不正に立ち向かう役ですが、ひょうひょうとしたところもあり、坂口さんがこれまで演じてきた中では「イノセンス 冤罪弁護士」の主人公に近いですね。しかし、悪徳業者と渡り合う場面などで見せる表情には、30代の俳優らしい貫禄が。

実は坂口さんはこのドラマより前、映画『ヘルドッグス』(9月公開)の撮影では狂犬と呼ばれる暴力団構成員を演じていて、悪役を経験したからこそのすごみが、小勝負役にも出ています。そんな坂口健太郎の第二章、始まっています。

「魔法のリノベ」(フジテレビ系)間宮祥太朗さん

坂口健太郎、綾野剛、小栗旬、田中圭というトライストーン(所属事務所)四天王の先輩たちと肩を並べるポジションに立ちつつある間宮祥太朗さん。「#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜」「オー!マイ・ボス! 恋は別冊で」でヒロインを他の男に奪われてしまう“当て馬”ポジションを演じて女性視聴者からの人気が高まり、今年の冬ドラマ「ファイトソング」ではついに男性の一番手に昇格。ゴールデンタイムで初主演した春ドラマ「ナンバMG5」では、もともとコメディも上手いだけに、高校1年生の元ヤンキーという役どころを29歳にして振り切って演じていました。

長い当て馬時代から脱皮して大ブレイクの兆し

「魔法のリノベ」では、工務店の社長の長男で住宅リノベーションの営業をしている玄之介を演じています。工務店に転職してきたすご腕の営業ウーマン・小梅を演じる波瑠さんとは「#リモラブ」に続いての共演。前作では結ばれませんでしたが、玄之介と小梅は初回から2人でイタイ恋愛遍歴を明かし、「僕ら、仕事に生きるしかない!」と意気投合。

2人の丁々発止のやり取りは間宮さんも上手いのですが、波瑠さんも上手い。一緒に演じていて楽しそうです。玄之介は成約件数がゼロで2回の離婚歴があるという設定ですが、間宮さんは目が大きくキョトンとした表情にも見えるので、“かっこいいはずなのにちょっと抜けている”というキャラがハマる。

「ファイトソング」では「ムササビ~」という一発ギャグで笑わせてくれましたが、今回も小梅に営業のやり方をダメだしされては「なんということでしょう……」と心の声で言ってしょんぼりしたり、かと思えば「やっと僕のターンが回ってきました」と激シブの重低音で決めてみたり……。リアルベースの物語の上でのギャグなので、最初から最後まで絵空事だった「ナンバMG5」より断然、見ていて面白いです。

「ユニコーンに乗って」(TBS系)杉野遥亮さん

「やっと僕のターン」と言えば、杉野遥亮さん。5年前の映画『キセキ-あの日のソビト-』でGReeeeNをモデルにした4人組を菅田将暉さん、成田凌さん、横浜流星さんと一緒に演じ、他の3人が次々と主演級になっていくのを見て来ました。洗剤のCMの「洗濯愛してる会」でも松坂桃李さんや間宮祥太朗さんと並びつつ、「みんなの弟分」という末っ子ポジションですが、「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」「妻、小学生になる。」などで人気上昇し、ファッション誌『ViVi』の「国宝級イケメンランキング2022年上半期」では10位にランクイン。ついに彼のターンが来たのです。

国宝級イケメン10位に入った2022年の最注目株

「ユニコーンに乗って」の男性一番手は西島秀俊さんですが、永野芽郁さん演じるヒロイン・佐奈と同世代の20代視聴者がキュンキュンしているのは杉野さんでしょう。

杉野さん演じる須崎は大企業社長の息子で、佐奈のビジネスパートナーであり佐奈が好き。キラキラしたインフルエンサーの元カノに復縁を迫られても「30歳までは誰とも恋愛しないって決めているから」と断ってしまいます。このときは「そんなわけあるか!」と全視聴者が元カノに共感してツッコミましたね。

小さくてかわいいヒロインと彼女に思いを寄せる御曹司がいて、美人の元カノがヒロインに身分違いだとマウントする。これは50年以上前から少女漫画の世界で展開してきた古式ゆかしき三角関係の王道です。

杉野さんはドラマの記者会見やParaviのオーディオコメンタリーを見ると、「もうちょっと話そう?」と思ってしまうほどコメントが控えめなのですが、ひたすら優しい須崎役には彼のそんな素顔も反映されているよう。今後は西島さん演じる20歳以上年上の小鳥が恋のライバルになってきたり、会社の経営がいよいよ厳しくなったりと試練がありそうなので、杉野さんの演技もソフトからハードモードへ変化していくのでは?

「テッパチ!」(フジテレビ系)町田啓太さん

本作は、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)」「SUPER RICH」などで知名度がアップした町田啓太さんの主演作。28歳になってから陸上自衛隊の自衛官候補生となった国生宙(こくしょう)を演じています。第1話は無職の状態からスタートし、無造作なロン毛姿がワイルドでいい感じと思わせてからの、入隊しばっさり髪を切るという変化が印象的でした。

「筋肉あります」のサービスシーンより有能ぶりを見たい

最近は、仕事のできる“シュッとした”ビジネスマン役が多かった町田さんだけに、筋肉バキバキのガテン系男子という役は新鮮。町田さんは「チェリまほ」のようなボーイズラブから歴史劇である大河ドラマまで、作品のジャンルを正確に理解し、そのジャンルのお客さんが喜ぶ演技を最適解で導き出す人。今回は原作なしですが、「友情・努力・勝利」という少年漫画の王道を行くようなこのドラマにうまくチューニングを合わせ、単細胞の主人公を嫌味なく演じています。

ただ、演出はちょっと筋肉を強調しすぎというか、毎回、町田さんや佐野勇斗さんが演じる馬場など、候補生仲間8人でのシャワーシーンや上半身裸での腕相撲大会などが展開されるのにやりすぎ感が。時節柄「感染対策は大丈夫?」と心配にもなってしまいます。町田さんと同じ劇団EXILEの佐藤寛太さんも出演しているので、みんなで「Choo Choo TRAIN」を踊るという悪ノリは微笑ましいのですが……。

そもそも軍隊の話で主人公と美人教官の恋があってと、日本版『トップガン』のような設定だけに、今後、国生宙が正式な自衛官になり能力を発揮していくという本業でのイケイケの展開も見たい!

それぞれの成長・新たな一面が見える今期ドラマ

まずは前半の4名を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。今までの経験を生かして成長した姿を見せてくれる人や、俳優として新たな顔を見せてくれた人など、これからも見届けたくなる俳優さんばかりでしたね。次回は、木曜~日曜に放送しているドラマに出演中の4名を紹介。ぜひお見逃しなく!

(文:小田慶子、イラスト:ヘロシナキャメラ)

※この記事は2022年07月29日に公開されたものです

小田慶子

出版社に13年勤務後、フリーランスに。雑誌、書籍、WEBメディアの編集およびライティングを担当。芸能人著名人インタビューはのべ300人以上。映画やドラマのキャスト、脚本家、監督、小説家などに取材し、作品オフィシャルの仕事も。ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞の総評や受賞者インタビューを担当。共著に「脚本家・野木亜紀子の時代」(blueprint)がある。Yahoo!公式コメンテーター

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