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「褒める」と「誉める」の違いは? 意味や使い分けを解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「褒める」と「誉める」の使い分け(例文付き)

「ほめる」「ほめたたえる」という意味を持つ「褒める」「誉める」ですが、具体的にどう使い分けたら良いのでしょうか?

多くの場合、一般的には「褒める」を使う

「褒」「誉」という漢字自体はいずれも常用漢字ですが、訓読みの「褒める」が常用漢字表に載っているのに対し、「誉める」は表外です。

公文書などで使われるのは常用漢字なので、私たちの日常生活でも「褒める」をよく目にすることには納得がいきます。

通常のビジネス文書で「ほめる」と書く場合にも、「褒める」を使うのが一般的です。

一定の判断基準として、迷った時には常用漢字の方を選ぶのが無難です。どちらも常用漢字であれば、読み方が常用漢字表にあるか否かで判断すると良いでしょう。

それでもあえて使い分けたい場合、例えばプライベートな手紙やブログなどでは、漢字を使い分けることで、よりニュアンスを表現することができるでしょう。

そんな時、判断のポイントになるのが、漢字の意味と熟語です。

それらのことを踏まえた上で、「褒める」と「誉める」の使い分けを見ていきましょう。

「褒める」は、「ほめる側」と「ほめられる側」がはっきりしている時

「褒」を使った熟語には「褒章」「褒賞」「褒美」「褒賜」などがあります。

大人が子どもに与えるご褒美から、日本の榮典でもある紫綬褒章まで、何らかのものを与えてほめる場面では「褒」の文字が使われます。

大人から子どもへ、会社から社員へ、国家から国民へ……など、優れた行為や作品などに対する称賛の印として、「褒章」や「褒賞」が与えられるわけです。

つまり、一般的に「褒める」と書く場合には、「褒める側」と「褒められる側」が明解です。誰が誰を褒めたという「褒め」のベクトルがはっきりしているわけですね。

この場合の「褒める」を冒頭の「ほめる」の意味に当てはめると、「(2)(同等または目下の者の)行いを評価し、よしとしてその気持ちを表す」に近いでしょう。

以下のように、目上の人が同等か目下の人をほめる時に「褒める」を使います。

例文

・子どもが「先生に褒められたよ」とうれしそうに教えてくれました。

・弊社では、部下のいいところを見つけたらどんどん褒めるようにしています。

「誉める」は、社会や地域から広くほめたたえられる時

「誉」を使った熟語は、「栄誉」「名誉」など形のないものがほとんどです。

褒章などをもらったその結果としてさらに誉れ高くなることもあるでしょうが、そんな人だけでなく、無冠の達人や名人のように「あの人の右に出る人はいない」と何かの分野で特に秀でた人はいるものです。

形のある褒美と違い、栄誉や名誉は簡単に手に入りません。周囲の人々がほめたたえるような功績や偉業には、「誉」の字がふさわしいでしょう。

その場合の「誉める」は、冒頭の「ほめる」で示した意味の「(1)祝う。ことほぐ。祝福する」に近いものがあります。

祝福に近い気持ちで、その栄誉を称えるのであれば、目下から目上に対しても本来は使えると考えられます。

ただし、読む側がそこまで意味を使い分けて読むかどうかは、また別です。目上の方の栄誉をたたえるためにどうしても「誉める」の字を使いたい場合には、「たたえる」も加えて「誉めたたえる」と表せば、誤解を与えずに済みます。

例文

・彼の功績を誉めたたえない人などいないだろう。あれほど長年地元に貢献している人を私は他に知らない。

・育児もしながら生涯を通して看護師の仕事をやり遂げた母を、私は誉めたい。

次ページ:「褒」「誉」以外で「ほめる」を表す漢字は?

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