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美容のおかげで、歳をとるのが楽しい。前田紀至子さんの場合 #コスメ垢の履歴書

ひらりさ

コスメを偏愛する「コスメオタク」が増えている。中でもTwitterの「コスメ垢」は、よりディープな情報発信の場として話題。この連載では、ライターひらりささんがいま気になるTwitterコスメ垢にインタビュー。彼女たちのおすすめアイテムや美容愛、さらには人生までをも覗き見ます。

同人サークル「劇団雌猫」所属の美容オタクライターひらりささんが、いま気になるTwitterコスメ垢の実態を探る連載【コスメ垢の履歴書】

今回インタビューしたのは、元『nicola』専属モデルで、現在は美容ライター・プランナーとして活躍中の前田紀至子さん・34歳(@ki45m)。ハイセンスだけど飾らないコスメツイートが光る彼女の素顔とは?

きっかけは『nicola』に送った懸賞アンケート

――ビューティ系のお仕事を多数こなされている前田紀至子さん。美容に関心を持ったのはいつごろなんでしょうか?

子どものころから、雑誌がとても好きでした。和歌山の田舎で何もやることがなかったので、『CUTiE』とか『nicola』とか『Zipper』を熟読して、クレジットやキャプションを覚え込んだりしていて(笑)。

創刊されて間もない『VOCE』も読んでましたね。当時の『VOCE』はコンサバではなく、作り込んだロマンチック路線だったので、私のツボにハマって、かわいい! 素敵! とときめいていました。

――そんな地方の中学生が、『nicola』の専属モデル……いわゆるニコモに。

雑誌の世界には憧れてましたが、「モデルになりたい」と強く思っていたわけじゃないんですよ。『nicola』はまだ創刊されたばかりだったんですが、当時、懸賞アンケートにプリクラを貼って送ると雑誌に載せてもらえるという企画があり、それに応募したことがあったんです。そうしたら「専属読者モデルオーディションをやるのですが、参加しませんか?」と連絡をいただいて。

最終審査前に父親が勝手に断りの電話を入れるというハプニングもあったのですが、「6000人中50人に残ってるんですよ」と編集部から説得され、考えを変えてくれて。私は「東京行きたいよ〜〜!」と切実に思っていたので、うれしかったです。

――モデルになってみて、どうでしたか?

仕事のたびに東京に出て、プロにメイクをしてもらえるのは「楽しい! やばい!」って感じでしたけれど、まわりがかわいい子ばかりだから、へこむこともありました。モデルをはじめてすぐに「私がやりたいのって、モデルじゃなくて……雑誌を作ることなのでは?」と気づきました。

――気づくのが早い!

中学卒業後は実家で普通に高校生活を送っていたのですが、関東の大学への入学が決まったと同時に光文社『JJ』に履歴書を送り、編集アシスタントをさせてもらえることに。インタビュー時の買い出しや、撮影で使うコスメの仕分けなど、雑誌制作で発生するあらゆる雑用をこなし、独立して、今に至ります。

サウナ女子の愛用コスメは「コンパクトで実力派」

――メイクをはじめたのは、モデルの仕事がきっかけですか?

実はバレエを習っていて、舞台に上がるためのメイクをしていたので、小さいころから馴染みがありました。

あと母親が、ザ・専業主婦! という風情の人間なんですけれど、私以上にビューティ好きで。一緒にうめはん(阪急百貨店うめだ本店)に行って、コスメを見たりしていましたね。高校生のころにはもう「今年のコフレはどれを買おうかしら」なんて考える暮らしをしていました。

編集アシスタントとして編集部に所属してからは、仕事として、関心のないものも淡々と試して書いて……の繰り返しだったので、ティーンのころが一番熱心にメイクしていたと思いますね。今は、気を抜こうとするとどんどん抜けちゃう(笑)。

――思い入れのあるブランドはどこでしょう?

ティーンのころ、一番最初に美の概念を植えつけられたのはSHISEIDOでした。時代を経てプロダクトは変われど、文章を書く上での美意識も見せ方も、SHISEIDOのずっと続く美学のなかから、大きく影響を受けていると思います。

SHISEIDO以外にもっと具体的なアイテムでいうと、DE LA MERのスキンケア。早熟だったので20歳くらいから使っていました。独立して、仕事が少なくてお金がつっこめない時期もあったけれど、今はまたつっこめているので、幸せです(笑)。

日本にローンチする前から好きなのが、TOM FORD BEAUTY。ルージュ1本にしても色出しが素晴らしくて、当時かなり衝撃を受けましたね。海外旅行に行くと、必ずTOM FORDを買ってました。

――現在は、コスメをどれくらい買われるんですか?

月2回くらいは買い物に行きますね。ありがたいことに仕事柄、非常にたくさんの製品見本をいただくんです。でも、コンシューマー視点も持ってないと、仕事に役立ちませんから、自腹できちんと買わねば……と意識してますね。

プレスリリースや公式情報だけでなく、コスメカウンターでBA(=ビューティアドバイザー)さんの人気のアイテムを聞いて、リサーチするよう心がけています。

InstagramよりもTwitterのほうが、自分の好きなものを自由に発信している傾向はあるかもしれません。

――このあたりで、紀至子さんのメイクポーチを見せていただいていいでしょうか。

はい! こちらのポーチです。

前田紀至子さん化粧ポーチ

前田さんが「祖母に作ってもらった」と話すメイクポーチ。リバティーの布地から好きなものを選んで作ってもらったそう。

――すっごくかわいい布地ですね!

昨年亡くなったおばあちゃんに作ってもらったもので、大事に使ってます。作ってもらったときは眉ペン、リップ、フェイスパウダーくらいしか持ち歩いてなかったので、「これちょっと大きすぎるよ〜」って言ってたんですけど、実は最近銭湯やサウナにハマりはじめたので、ちょうどよくって。

――あー! 銭湯やサウナにハマる人、最近多いですよね。

「サ女子(=サウナ女子)」になった結果として、お風呂も好きになりましたね。この大きさだとかなりのアイテムが入るので、うしろに仕事があっても、きちんと顔を作り直せるんです。銭湯にハマったことで、コスメを選ぶ基準も「コンパクトで実力派」であることに特化しました。

前田紀至子さん化粧ポーチ

左上から右に
・無印良品 綿棒
・TOM FORD BEAUTY アイ カラー クォード03 ココア ミラージュ
・TOM FORD BEAUTY ファイバー ブロー ジェル 02 トープ
・アディクション アイブロウブラシ
・アクア・アクア オーガニックアイペンシル 03 ディープボルドー
・SHISEIDO シンクロスキン グロー クッションコンパクト オークル 10
・ランコム タンイドル ウルトラ ウェア コンシーラー
・レ・メルヴェイユーズ ラデュレ サンプロテクション メイクアップ ベース
・SISLEY ブラァ エキスパート

左下から右に
・ポーラ B.A カラーズ ブラッシュ DR ディープローズ
・ポーラ B.A カラーズ ブラッシュ リップスティック マグノリア
・レブロン バーム ステイン 55
・白鳳堂 ブラシ
・KOBAKO チークブラシ
・オペラ マイラッシュ アドバンスト01
・ラブ・ライナー ペンシルアイライナーR
・バイレード ラ・チューリップ

まずメイクアップベースはレ・メルヴェイユーズ ラデュレ。マイ・メイクアップベース四天王のひとつなのですが、持ち歩きはもっぱらこれ。SPFも50で、本当に心強いです。

クッションファンデはSHISEIDOのシンクロスキン グロー。これも小さくて便利なんですよ〜。クッションファンデってこの1年すごく流行っていて、散々いろいろ使って、最後に残ったのが、これと、クレ・ド・ポーボーテのタンクッションエクラでした。

この2つは仕上がりも似てるんですけど、お値段はSHISEIDOのほうがかわいいので、遠慮なく使っています(笑)。

――最高ですね。

コンシーラーはランコム タンイドル ウルトラ ウェア。この子はどこに塗っても馴染むし、カバー力もすごいし、何より軽いし小さいし最高!

――アイブローもものすごくコンパクトですね。

アクア・アクアのものですね。実は今まではずっと「眉ペンはTOM FORDじゃないと!」と思って生きていたんです。でもおそろしい速さで減るので、「私……寝てる間に眉ペン食べてる?」と不安に思って。

それで試しにアクア・アクアに変えてみたら、やわらかくて描きやすくてばっちりだったので、定番になりそうです。アイライナーも、TOM FORDからラブ・ライナーに変えたところ。

――でも、アイカラーパレットは、TOM FORDのものを持ち歩いてるんですね。ほかのアイテムがコンパクトなぶん、ものすごい存在感が。

アイ カラー クォード ココアミラージュね。どんなに大きくてもどうしても代用品がない……(笑)。これがないと顔が完成しないので、いたしかたない。もうひとつ自宅用とストック用もあるので、今3つ持ってます。本当に使い込んでるので、もう底見えしてますね。

最近気に入ってるマイ・ベストヒットだと、SISLEYのフェイスパウダー「ブラァ エキスパート」。プレスリリースを見ていい名前だなと思って試してみたんですが……手を貸してください。

――はい(手の甲に塗ってもらう)。

色が濃いんじゃない? と思いきや、ふわっと塗るだけで、見せたくないものをこの人が全部消してくれるんです。

――本当だ! しかもさらっと塗っただけなのに、ラメも輝いていて。

乗せるとすっかり明るくなっていいですよね。しかも小さくて最高! 本当にすごくて、ありがとうという気持ちで使っています。

正直に生きれば、いくつになっても後悔しない

――どのアイテムからも、きちんと使い込んでる感と紀至子さんの美学が見えてきて、すぐ買ってみたくなりました。お肌もとても綺麗だなと思うのですが、お手入れのこだわりはありますか?

化粧品メーカーのセミナーで「コットン持ってる指に力が入りすぎ!」と注意されて反省し、自分がやさしいと思っている力の5分の1くらいでメイクとクレンジングを行うように気をつけています。力を抜いて、そのぶん時間をかける。

――時間をかける! まったく欠けていた発想でした……。

最近はYON-KAのエステサロンに通ってるんですが、そこでも「クレンジングするときに小鼻のところで立ち止まってあげてください」と言われて。「そうだ! 私たしかに立ち止まってない……!」と思って、さらにゆっくりを心がけるようにしています。家でのケアも指導してくれるので、本当におすすめです。

――美肌は一日にしてならず、ですね。

美容って、続けることで新しい気づきがあるから、歳をとることが楽しくなってくるんですよね。若いときには若いときゆえのはつらつさやみずみずしさがあるけれど、昨日より今日のほうがお化粧はうまくなっていくから、加齢しても「現状維持よりも、よくなってるんじゃない?」と思うことができる。もちろん、そのためにはBAさんに相談してみたり、思いきって委ねてみたり、ということが必要になるんですけど。

――歳を重ねることに、美容以外でもいろんな面で不安を感じている人は多いと思います。

20代から30代になると、体力が右肩下がりになっていってしんどいのはありますよね。でも、つらいと思っていた人間関係や業務が、スムーズにさばけるようになるなど、歳をとってから楽になることもたくさんあります。若いときと今、どっちが楽しいとは言えないけれど、正直に素直に生きておけば、いくつになっても後悔しないはずだと思います。

――最後に、コスメに出会って人生変わりましたか?

こんなに楽しく生きられなかったと思っています。「コスメのことばっかりで中身がない」というような言葉をかけられることもあるんです。造形ばかりがすべてじゃない、というのはその通り。

でも、コスメや美容を通じて個性を楽しむのは素晴らしいことですし、誰かのコンプレックスを長所にするなんてことも、コスメの力なんですよね。新しいお化粧品を買って、鬱々とした気持ちが明るくなるなんてこともある。

私自身もコスメのおかげで人生変わったと思いますし、お仕事として携わるなかで、私が発信するものが、誰かの人生をさらに素敵なものにできたらいいと思います。

――ありがとうございました!

コスメ垢「前田紀至子」さんの履歴書

(取材・文:ひらりさ、編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部)

※コスメの写真はすべて本人私物です

『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』劇団雌猫

劇団雌猫の大人気同人誌『悪友DX 美意識』のグレードアップバージョン。化粧、ダイエット、エステ、整形、ロリータ、パーソナルカラー診断、育乳……。さまざまなジャンルのおしゃれに心を奪われた女性たちが、ファッション・コスメへの思い入れや、自身の美意識をつまびらかに綴り、それぞれが「おしゃれする理由」を解き明かす匿名エッセイ集。

※この記事は2019年06月16日に公開されたものです

ひらりさ

1989年生まれ、東京都出身。ライター・編集者。女性・お金・BLなどに関わるインタビュー記事やコラムを手掛けるほか、オタク女性4人によるサークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動。主な編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:@sarirahira

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