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メイクは鎧。ブラウンコスメを愛するぞのさんの場合 #コスメ垢の履歴書

ひらりさ

コスメを偏愛する「コスメオタク」が増えている。中でもTwitterの「コスメ垢」は、よりディープな情報発信の場として話題。この連載では、ライターひらりささんがいま気になるTwitterコスメ垢にインタビュー。彼女たちのおすすめアイテムや美容愛、さらには人生までをも覗き見ます。

同人サークル「劇団雌猫」所属の美容オタクライターひらりささんが、いま気になるTwitterコスメ垢の実態を探る連載【コスメ垢の履歴書】。

今回は、ブラウンコスメをこよなく愛するぞのさん(@zonocosme)にインタビューしました。

「かわいくしていいんだ」と気づいた高校生時代

——ぞのさんはTwitterとブログでコスメレビューを発信されていますが、いつごろはじめたのでしょうか。

Twitterは2018年3月で、ブログは今年の2月からですね。

——けっこう最近だ。きっかけはなんだったんでしょうか。

Twitterで発信する前から、ものすごい量のコスメを買っていて。当時の彼氏が「そんなたくさん持ってるのに自分だけで楽しんでるのはもったいないよ」と言ってくれたんです。写真を撮るのが好きだったのもあり、Twitterでコスメのスウォッチ(※色味を比較した写真)を発信するようになり、さらにデザイナーの姉に相談してブログを構築しました。

それまではTwitter自体やってなかったので、はじめたばかりのころは「ふぁぼって何?」「リプって何?」とオロオロしてました(笑)。

——それでもうフォロワーが2万7,000人に! では、コスメが好きになった経緯を教えてください。

ちゃんとメイクをはじめたのは高校生のときなんですが、子どものころから、強い思い入れを持っていました。小学校のとき、先生のことが好きだったんですけど、ある日お母さんのリップとファンデーションを塗って学校に行ってみたら、その先生にめちゃくちゃ怒られちゃったんです。まわりからも「マセガキ」とか言われて、お母さんも呼び出されて……。

そこからは「女の子らしくしようとするのはよくないんだ」と思って、長かった髪をベリーショートにして、女の子っぽい遊びからは離れ、ずっと男の子と木登りばかりしてました。

その意識が中学校でも続いていたのですが、入った高校が約9割女子の学校だったんですね。そこで「なんで化粧しないの?」「ぞの、二重にしたら絶対かわいくなるよ」って声をかけてくれた子がいて……。dodoとかパルガントンのアイシャドウで二重のように見せるコツを教えてもらって、めちゃくちゃハマっていきました。

そのときから「かわいくしていいんだ」「女らしくしていいんだ」とすごくラクになったんです。結局クラスの中で自分が一番メイクにハマって、アイテムやメイクテクを教えるためのブログまで作ったくらい(笑)。

——なんと過去に「コスメ垢」的な活動をされていたんですね!

すごいハマりぶりでしたからね。「ぞのは化粧の人」ってまわりからも言われるようになって。成人式に行って小中学校の同級生に会ったときには、本当にびっくりされました。

昔はベリーショートで男の子とばかり遊んでたから、女の子には「男子とばっかり仲よくしてる」って陰口言われて、一部の男の子からも「ブスだ」って言われていたんです。だから、彼らが私を見て目の色を変えた姿に対して、「ざまあみろ」という気分になりました。

幼いころにおさえていた欲求って、大人になって自分自身の考えで行動できるようになると、そのおさえていたものが爆発するらしいんですよ。私がここまでコスメを収集する理由は単に「好き」だけではなく、昔おさえていた欲求を満たしたいから、というのもきっとあると思います。

ブラウンブームのきっかけは「海外コスメ輸入」

——ぞのさんは本当にものすごい量のコスメを買われていますよね。

無印良品の大きいボックス……5つ引き出しがあるボックスを5個持っていて、そこに詰めています。口紅だけで、300本くらいはありますね。ひとつのことを知りたいと思ったらとことん知らないと気がすまないので、バンバン買っちゃうんです。

——1カ月にいくらくらい使っているんでしょう?

最低で5万円ですかね。もはや必要経費だと思っています。本当にほしいものが尽きなくて、海外コスメの通販サイトのカートにどんどん入れてあるんです。「これは来月買おう」とか「これは再来月買おう」とか。

——オレンジやブラウンのアイテムが好きになったのは、どうしてなんでしょう。

今はフリーランスで在宅勤務をしているのですが、前職がアパレルで。最初はモード系のブランドにいて楽しかったのですが、そのうちフリフリで花柄ファッションのブランドに異動することになったら、それが苦痛で……。青みピンクやコーラル系のメイクを合わせざるをえなかったんですが、それが明らかに似合ってなくて、嫌だったんですね。

アパレルをやめたあとでパーソナルカラー診断を受けたら「イエローベース秋」とわかって、ああやっぱり青みピンクやコーラル系は自分に合わない色だったんだと納得し、まずはオレンジのアイテムを集めるようになりました。

ブラウンブームが来たのは、海外コスメの「Color Pop」を輸入してから。1本500円くらいで安価だし、いろいろな色を試したくて20本くらい買ったんですが……塗っていてビビッときたのが、ブラウンで。そこからすっかりブラウンに夢中になりました。

——コスメにもいろいろなアイテムがありますが、ぞのさんは特にリップがお好きですよね。

ほかのアイテムも好きですけど、リップって一番顔の印象を変えてくれるアイテムだから、その変化を楽しむのが好きです。ひと塗りすると顔色が一気に変わるんですよ。一つひとつのちょっとした色合いで、メイクの出来が全然変わる。私にとっては、すべてがちがう子。毎日どのリップにしようか考えるのが楽しいです。

——このあたりで、メイクポーチを見せていただいていいでしょうか。

はい! 事務所や打ち合わせに行くのに外出するので、ポーチはいつも持ち歩いています。

左上から時計まわりに
・LOFTで買ったポーチ
・マキアージュ エッジフリー アイラッシュカーラー
・Little M・A・C プレップ プライム フィックス
・アルビオン スウィート モイスチュア シフォン
・IPSA ザ・タイムR デイエッセンススティック
・excel パウダー&ペンシル アイブロウ
・サンテ ボーティエ コンタクト
・ローラ メルシエ ヴェロア エクストリーム マット リップスティック 05フィアス
・ボビイ ブラウン クラッシュド リキッド リップ 01スムージームーブ
・NYX ストリクトリー ビニール リップグロス SVLG 06
・M・A・C プロ ロングウェア コンシーラー
・無印良品 クレンジング綿棒

——やはりリップの本数が多いんですね。

常時、3〜4本は持ち歩いていますね。一度落ちたら、同じ色をつけたくないので、お直しのたびに使うリップを変えるんです。今日はNYX、ローラ メルシエ、ボビイ ブラウンのリップを入れています。

このほか、フルメイクできるように、リップ以外のアイテムも入れています。アパレルで勤務していたときとは、メイクのスタイルはけっこう変わりましたね。当時はめちゃくちゃ厚塗りしていたんですが、だいぶ薄くなりました。

——よく買うブランドは?

ブランドには、あんまりこだわりがないんですよ。かわいい色味があれば、プチプラでもデパコスでも大好きです。海外コスメの輸入にはハマっていて、Color Pop、Sephora、Beauty Jointのサイトで一気買いします。ひとりで30本とか買うので、わりと関税がかかります(笑)。

——アイシャドウやチークなど、リップ以外で最近おすすめのアイテムはありますか?

先日購入したMISSHAのアイシャドウがとても気に入っています。

日本ブランドのコスメってコンサバティブなものが多いけど、韓国コスメを買うと日本人がわざわざ輸入するのも納得できます。めちゃくちゃかわいいですもん。品質もさることながら価格も安い!

——ぞのさんのスウォッチはいつも綺麗で、うっとりします。スウォッチ、あれだけの量をやるのは大変じゃないですか?

大変です(笑)。あと「もったいない」とも言われるし、自分でも思うんですけど、ちょびっとだけ塗っても、どんな色か、全然わからないじゃないですか。なのでケチらずにかなりの量を使っています。スウォッチが非常に綺麗なyuaさん(@yua____c)という方がいて、参考にしています。

——写真を撮るときに気をつけていることはありますか?

スウォッチはカメラで撮っているのですが、画質にはめちゃくちゃ気を使っています。肌のメラニン細胞が見えるくらい画質がいい写真じゃないと、納得してあげられないんです。あとは「色」ですよね。お昼の光で撮って、色味の調整をしないようにしています。Twitterに4枚の写真をあげるとしたら、100枚以上は撮影します。

「いい子」をやめたら、ファンが増えた

——ぞのさんがTwitterやブログで発信するときの文面で心がけていることはありますか?

質問されても答えないようにしているのは「肌荒れましたか?」「唇よわいんですけどどうですか?」といったものですね。「私は唇がむけました」と答えたら、みんなに合わないのかと思われちゃうし、「全然だいじょうぶ」って答えて、その人はめちゃくちゃ荒れましたってこともあるだろうし。色と質感しか言わないようにしています。

——「PRとステマについて」のブログエントリを読んでも思いましたが、ぞのさんってすごく誠実な方ですよね。

「まっすぐだよね」とは言われることが多いかもしれません。

——ぞのさんが今、Twitterで支持されているのは、どうしてだと思いますか?

自分の素を出せるようになってから、フォロワーさんが増えたんじゃないかな。最初は「いい子」でツイートしてたんです。みんなの求めるものに答えて、ちゃんと敬語を使って。

アンチに対しても丁寧に対応してきたんですが、いろいろ面倒なDMを送られるようになったとき「やかましいな」とツイートしたことで、吹っ切れたのかも。そこから自分を出せるようになって、「その性格が好きです」と言ってくれる人も増えました。

コスメについて発信できるだけでなくて、私を好きになってもらえるのがうれしくて、ツイキャスとかもやるようになりました。メイクの強さに反して根暗なので、「そういう感じだったんだ」「もっとギャルギャルしてると思ってた」とか言われることもありますけど(笑)。

——このコスメ欲はまだまだ続くと思いますか?

女性らしくいたいという意識を失わない限りは続くんじゃないかな。自分がコスメを楽しむだけじゃなくて、作る側にまわれたら楽しいのではないかと思って、ちょっとずつ勉強もしています。

——ぞのさんにとって、メイクをする意味はどこにありますか?

自分を強くするためにやっているんでしょうね。過去に「ブス」って言われた苦い思い出があるからこそ、「鎧」のようなイメージでメイクをしているところはあります。

フォロワーさんの中にも、いるんですよ。女の子らしくいるのが恥ずかしいけど化粧が好きって人が。そういう人に自信を持ってほしいし、世間ウケを狙わずに自分の好きなものを使っていいんだよ、と発信していきたいです。

コスメ垢「ぞの」さんの履歴書

(取材・文:ひらりさ、編集:高橋千里/マイナビウーマン編集部)

※コスメの写真はすべて本人私物です

『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』劇団雌猫

劇団雌猫の大人気同人誌『悪友DX 美意識』のグレードアップバージョン。化粧、ダイエット、エステ、整形、ロリータ、パーソナルカラー診断、育乳……。さまざまなジャンルのおしゃれに心を奪われた女性たちが、ファッション・コスメへの思い入れや、自身の美意識をつまびらかに綴り、それぞれが「おしゃれする理由」を解き明かす匿名エッセイ集。

※この記事は2019年05月03日に公開されたものです

ひらりさ

1989年生まれ、東京都出身。ライター・編集者。女性・お金・BLなどに関わるインタビュー記事やコラムを手掛けるほか、オタク女性4人によるサークル「劇団雌猫」のメンバーとしても活動。主な編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

ブログ:It all depends on the liver.
Twitter:@sarirahira

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