金融の専門家に聞いた!ギリシャがユーロから離脱したらどうなる!?
ユーロ圏がごたついております。ギリシャが「お金貸してくれないんだったらユーロ圏から離脱したっていいんだぜ」とチキンレースを仕掛けているように報道されていますが、この騒動を金融のプロはどのように見ているのでしょうか?
フィデリティ投信株式会社 商品マーケティング部長 太田創さんにお話を伺いました。
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ユーロ圏は分かりにくい!
――ギリシャの件でユーロ圏がもめているようですが、日本人からするとユーロ圏はいまひとつ分かりにくい気がするのですが。
太田部長 ユーロ圏は分かりにくいですね。なぜ分かりにくいかというと、その理由の一つは、ユーロという通貨が「国」と直結していないからです。例えば、「円なら日本」「米ドルならアメリカ」というように、通貨はその国の金融政策の根幹で、通貨発行権という国の力の表れでもあります。
ところがユーロの場合、欧州中央銀行が発行していますけれども、欧州中央銀行ってどこの国の銀行なのよ? というとそれは分からないですよね。ドイツのフランクフルトにありますが、別にドイツのものではありませんしね。
ですから、従来の通貨と比べると分かりにくい点が出てくるのではないでしょうか。
実際にギリシャが抜けても困るのは自分!?
――もし仮に、本当にギリシャがユーロ圏から離脱するようなことがあったらどうなるのでしょうか?
太田部長 うーん、あんまり大勢に影響はないと思います。そもそもギリシャという国の経済規模はすごく小さいんですよ。IMFの統計によると2013年のGDP(国内総生産)が2,418億ドルです。経済規模でいえば神奈川県より小さいぐらいです。
ユーロ圏の最大の経済力を持つドイツが3兆6,359億ドルですから、100対6とか、7です。ユーロ圏全体(約12.8兆ドル)からすると、わずか1.9%とかそれぐらいです。ですからギリシャ一国が抜けたからといってユーロ圏の大勢に影響はないでしょうね。
また、ギリシャにお金を貸し込んでいる国やファンドが多いとも思えません。ギリシャの経済的な苦境も織り込み済みで動いていると思いますので、「一波乱」あるかもしれませんが、そんなに大した話にはならないと思いますけれども。
――なるほど。ユーロ圏の国々はそんなに困らないと。
太田部長 むしろギリシャが困るでしょう。例えば、ユーロをやめてまたローカル通貨のドラクマに戻ったとして、そんな通貨誰も欲しがりませんからね。取引するんだったら「ユーロか米ドルで……」となるので、すぐに外貨準備が枯渇しますわね。
そうしたらその時点で破産でしょう。今度こそ誰もお金を貸してくれませんよ。ドラクマで借金を返されても困りますしね。
――なるほど。
太田部長 昔、私は邦銀に勤めていて、ロンドンで資金ディーラーをやっていたのですが、まあ、ありとあらゆるヨーロッパの通貨を扱いました。ポンド、マルク、スイスフランは当然のこと、クローネなどなど……12種類でしたか。
でもね、誰も扱っていないのがドラクマでした。私だけじゃなく、周囲のディーラーも誰もドラクマを扱わない。つまりそれぐらいマイナーな通貨だったわけです。誰も取引に使っていないし、利ざやも稼げない。
だからドラクマに戻っても何もいいことないですよ。たとえユーロ圏から出ていったとしても、頭を下げて「またユーロ圏に入れてください」ということになるんじゃないでしょうか。
ユーロ圏から抜けて一番困るのはたぶんギリシャの国民ですよ。
――ありがとうございました。
日本人からすると、いまひとつ分かりにくいユーロ圏ですが、専門家にとっても面倒くさいところのようです。また、もしギリシャがユーロ圏から抜けても、少なくともお金に関しては大勢に影響はなさそうです。もちろん政治的に何が起こるかは分かりませんが。
(高橋モータース@dcp)
※この記事は2015年04月08日に公開されたものです