ガラスは「液体」だって本当?
コップや窓などの、日常生活で使われているガラスは「液体」なのをご存じだろうか?
常温のガラスは「過冷却(かれいきゃく)」状態と呼ばれ、冷やされて流動性を失ったものの、「固体」にはなれず「液体」のまま形をなしている。水やジュースでもこの現象は起き、ゆっくり冷やすと氷点下でも「凍らない水」が作れるのだ。
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ビンもジョッキも、じつは液体?
日常生活に使われているガラスは、「過冷却(かれいきゃく)状態」の液体だ。
物質には固体/液体/気体の3つの状態があり、水を例にすると、
・固体 … 0℃以下で「氷」
・気体 … 100℃以上で「蒸気」
・液体 … 固体~気体のあいだの温度で「水」
なのはご存じの通りで、固体が液体になる0℃を融(ゆう)点、液体が気体に変わる100℃は沸(ふっ)点と呼ばれる。融点を下回ると氷に変わるのは、分子が運動できずに規則正しく整列するからだ。逆にいえば、分子の整列が起きなければ「固体」とは呼べない。
ガラスが「液体」に分類されるのも同じ理由で、分子がバラバラな方向を向いているため、いわば「凍っていない」に等しい。これを過冷却(かれいきゃく)と呼び、「流動性が失われた液体」のまま、窓やコップに利用されているのだ。
液体なのに形が変わらないのはなぜか? ガラスは転移点と呼ばれる温度以上になると流動性が生まれ、それ以下では失われる。ガラス細工やコップ作りでは、真っ赤に熱せられたガラスを曲げたり膨らませたりするシーンを見かけるが、この段階でも溶けているわけではなく、その後に冷やしても固体になるわけでもない。
炎天下のクルマのなかにお菓子を置きっぱなしにして、アメやチョコレートがグニャグニャになった経験があると思うが、これらも液体に変わったわけではなく、固体に流動性が生まれたと表現すべきだろう。ガラスはこの逆の状態で、食器であれ装飾品であれ「流動性を失った液体」の状態が、「固体」にみえるだけなのだ。
「液体の氷」を作る
過冷却状態は、ガラス以外の物質でも起きるのか? 答えはYesで、水と家庭用の冷蔵庫があれば再現可能だ。
ポイントは、
・ゆっくり凍らせる
・チリや不純物を混ぜない
・振動を与えない
の3つで、家庭の冷凍庫であれば少し温度を高めに設定しておくと良いだろう。
水を入れた容器を冷凍庫に入れ、充分に冷やす。凍ってしまう場合もあるので、ペットボトルを使う場合はフタを閉めずに安全対策をしておこう。しばらくしてから静かに取り出し、「液体」のままなら成功だ。コップに注ぐ、容器に振動を与えるなど変化を与えると一瞬で氷に変化する。
変化よりも「氷に戻る」が正しい表現で、過冷却状態で液体のままの水が、本来の姿を取り戻すのだ。
TVのバラエティ番組でも紹介され、多くのひとがご存じの現象とは思うが、それをまの当たりにする機会は少ない。デザート作りやパーティの余興で受けること間違いないし、同じ原理でガラスが成り立っているなんてウンチクを語ってみるのも良いだろう。
まとめ
・日常生活でみかけるガラスは、固体ではない
・正体は、過冷却によって流動性を失った「液体」
・水をゆっくり冷やすと、逆のパターンで「凍らない水」が作れる
液体でありながらも流動性のないガラスは、表現のしようがないのか「ガラス化」「ガラス状」とも呼ばれる。
態度がはっきりしないひとは「ガラスのようなひと」と呼ぶべきかもしれない。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年09月30日に公開されたものです