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居酒屋の「お通し」は断ることができるのか?

居酒屋や飲食店で必ずと言えるほど自動的に出される「お通し」。おまかせメニューだけに、どんな料理か楽しみな反面、苦手な食材だと「頼んでいなのに」と損した気分になる。

注文していないのに出される「お通し」は、断ることができるのか? 「料理」として扱われるなら、注文していないことを理由に断れるが、「席料」「サービス料」の一環であれば支払わざるを得ない。ファストフード店のように明朗会計が売りの居酒屋なら「不要」で済ませられそうだが、料亭やレストランではサービスの一環として考えたほうが良さそうだ。

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料理の注文は「契約」

居酒屋などで出されるお通しは、

・お通し … 注文後(注文が「通った(=伝わった)」の意味)

・突き出し … 注文前(最初に「突き出される」)

が語源といわれ、ポイントはどちらも「自動的」に出される点で、注文した料理ができあがるまでの「酒のあて」として当たり前の存在となっているが、なかには不要なひともいるはずだ。それでもお勘定の段で「お通し〇〇円」と課金されるのをみて、釈然としないまま店を出た経験をしたひとは少なくないだろう。

お通しや突き出しは、断ることができるのか? 料理=品物と考えれば、注文していない以上、受け取る理由も支払う義務も発生せず、断ることができる。

飲食店での注文は、まず客が品物と数量を伝え、店がそれを受けた時点で契約が成立する。これは諾成(だくせい)契約と呼ばれ、少々おおげさだが民法に照らし合わせると、

・541条 … 注文した料理が届かない

・543条 … 注文した料理を、店が用意できない

などの理由がない限り、一方的なキャンセルはできない。まだ料理が運ばれていなくても、注文した時点で「合意」したとみなされるからだ。

逆に考えると、注文していない=合意していないのだから、契約そのものが存在しないことになる。お通しに限らず、オーダーしていない料理が運ばれてきたら、その時点で「注文していませんが、なにか?」と伝えれば、あとでモメることはない。

お通し=サービス料の一環?

対して、料亭やレストランなどでは断れない可能性が高い。お通しが「席料」「サービス料」の一部とされていれば、そのお店を利用する以上、支払って当たり前の料金だからだ。

「サービス料」は日本特有の料金とも呼べ、海外で用いられる「チップ」が料金といっしょに徴収されるシステムだ。飲食や宿泊料金の10%が一般的だが、これも定めはなく、事前にわかるようになっていれば何%でも構わない。

「席料」は、個室を利用した際にかかることが多いが、これも明文化されたルールはなく、カウンター席でも「テーブル・チャージ」がかかる店もあり、まったく生じない店もある。サービス料とは別枠なため、両方を請求される場合もある。

サービス料や席料を支払わないことはできるか? 名前は異なるものの、どちらもその店を利用するための付帯(ふたい)料金とも呼べる存在のため、事前に知らされていれば、支払わずに済ませることは不可能だ。

旅館に宿泊した際に、部屋に用意されているお茶やお菓子と同じで、宿泊プランの一部=食べても食べなくても料金は変わらない仕組みが、お通しにも適用されるからだ。飲食店なら「席に座る」「料理を運んでもらう」のは特殊なことではないので、席料/サービス料自体がフシギな存在ではあるが、これらがかかるランクのお店なら趣向を凝らした料理が期待できるだろうから、お通しの料金よりも、楽しむことを考えたほうが建設的だろう。

まとめ

・お通し=注文していない料理なら、断っても問題なし

・注文は契約。料理ができあがっていなくても、一方的にキャンセルできない

・席料/サービス料の一部なら、断れる可能性は極めて少ない

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年09月30日に公開されたものです

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