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干支(えと)にまつわるエトセトラ

突然ですが、皆さんは干支についてどれくらい深く知っていますか?

直感的に「子・丑・寅・卯・辰・巳…」のことでしょ?と思うかもしれませんが、それは十二支であって、正確には干支ではありません。

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だとすると、干支とはいったい何なのでしょう。そこで、今回は干支についてあらためて考えてみたいと思います。

十二支と干支の違い

よく、「今年の干支は…」と言ったりしますので、十二支=干支と捉えがちですが、十二支は干支の「支」だけを指しています。

それでは、残る「干」はいったい何を指しているのでしょうか?

実は、「干」とは「十干(じっかん)」のことで、具体的には「甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)」の10種類から成ります。

古代中国において、この世のあらゆる物は「木・火・土・金・水」の5つからできていて、さらにそれらの5つには陽(兄=え)と陰(弟=と)が存在するという考え方が生まれました。

このような思想を「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」と呼びますが、そこから、甲は木の兄(きのえ)、乙は木の弟(きのと)、丙は火の兄(ひのえ)、丁は火の弟(ひのと)……といった感じで、順番に5×2=10通りの意味を持たせています。

つまり、干支とはこの十干と十二支とを組み合わせたものなのです。

干支にまつわる身近な言葉

干支は十干の「甲」と十二支の「子」の組み合わせである「甲子(きのえね)」から始まり、「乙丑(きのとうし)」、「丙寅(ひのえとら)」、「丁卯(ひのとう)」…といった感じで、順に1つずつずらしていきます。そのため、全部で60種類(12と10の最小公倍数)のパターンが存在します。

今年(2014年)は午年ですが、厳密には「甲午(きのえうま)」にあたります。このようにして60年で暦が一巡し、生まれた年と同じ干支に戻ることから、60歳の人を「還暦」と呼んで、お祝いをするわけです。

そして、ちょうど90年前にあたる1924年(甲子=きのえね)8月1日に誕生したのが、阪神タイガースの本拠地であり、高校野球でも使われている「阪神甲子園球場」です。干支の一番目である「甲子」の年で縁起がよいというのが、その名が付けられた由来となっています。

また、幕末好きの人にはお馴染みとなっている「戊辰(ぼしん)戦争」も、旧幕府勢力と新政府軍との間でその戦いが始まった1868年の干支が「戊辰(つちのえたつ)」だったところから来ています。

時刻や方位を表す十二支

ところで、昔の人は十二支を時刻や方位を表す際にも使っていました。

時刻については、午前0時を「子の正刻(せいこく)」とし、その前後1時間ずつ(23時~1時)を「子の刻」といいます。さらに、そこから2時間ごとに「丑の刻」(1時~3時)、「寅の刻」(3時~5時)…といった感じで表します。

お昼の12時は「午の正刻」となるため、現在でもこれを「正午」といい、それより前が「午前」、後が「午後」となるわけです。

また、幽霊が出るとされる真夜中の時間帯を「草木も眠る丑三つ時(うしみつどき)」と表現し、これも「丑の刻」と関係があります。2時間をそれぞれ4つに分けて、30分ずつを「一つ」「二つ」「三つ」「四つ」と呼んでいます。

丑の刻は午前1時~3時を指していることから、丑三つ時とは丑の刻を4等分したうちの3番目、すなわち2時~2時30分頃を示しています。

続いて方位ですが、こちらは北から始まります。真北を「子」の方角として、そこから時計回りに30度ずつ区切ります。つまり、東が「卯」、南が「午」、西が「酉」となります。
北極と南極とを結んで、赤道と直角に交わる線を「子午線(しごせん)」と呼ぶのも、子の方角(北)と午の方角(南)とを結ぶところから来ています。

まとめ

身近な存在である「干支」ですが、「子・丑・寅・卯・辰・巳…」から成る12種類のことではなく、正しくは「十干」と「十二支」との組み合わせによるもので、実は全部で60種類もあったのです。

十干にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、還暦や甲子園球場なども、実はこの干支に由来するものだったと知ると、親しみが湧いてきませんか?

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年07月27日に公開されたものです

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