雷は電気なのに、音がするのはなぜ?「短時間で3万℃近くまで温められた空気が、爆発的に膨張」
俳句の季語にも使われる雷。正体は電気なので光るのは理解できるが、ごう音を立てるのはなぜか?
雷鳴の原因は高温になった空気で、3万℃にも達した空気が音速を超える衝撃波を作り出す。建物が揺れるほどの大音響は、ジェットエンジンと同じ原理で生み出されているのだ。
3万℃の空気が「ゴロゴロ」の原因
雷は、雲の正体である雲粒(うんりゅう)と雨が激しくぶつかり、その摩擦によって生じた電気だ。規模の差はあるものの、1回の落雷は
・電圧 … 1億V(ボルト)
・電流 … 10万A(アンペア)
が一般的で、電力に換算すると10兆W(ワット)ものエネルギーが自然発生していることになる。この電気が有効に使えたら!と思うかも知れないが、極めて短時間なので電力量が少ない。おまけに雷はジグザグを描きながら落ちるので、どこに落ちるか正確に予測できないのだ。
最短距離を通って落ちないのはなぜか?これは空気が電気を通しにくいためで、1mm放電させるのにも3千V近くの電圧が必要になる。写真で見ると、雷が大きくカーブしたり、枝分かれしたりするのもこれが理由で、少しでもラクに通れる場所が見つかると、そちらにコースを変えてしまうのだ。
雷=電気は秒速30万kmものスピードで移動するのに対し、空気は電気の流れをジャマする抵抗の働きをする。人ごみを走り抜けるようなものだから、周囲とぶつかり摩擦が生じる。同じ原理で、雷のまわりの空気は3万℃近い高温に熱せられる。
太陽の表面温度の5倍近い温度に達した空気は、急激に膨張(ぼうちょう)し振動で音を発する。これが雷鳴の正体だ。
電気が生み出す衝撃波
建物が揺れるほどの大音量は、衝撃波が原因だ。これはいん石やロケットなど、物体が音速を超えて移動するさいに生じる現象だ。音の速さは約340m/秒で「マッハ1」とも呼ばれる。時速に直すと1,200km超だが、ジェット機でも音速を超えるものは多い。
もしマッハ2で飛べば、飛行機は音よりも速く進むことになるが、発せられた音はマッハ1でしか伝わらない。そのさいに圧力の差が生まれ、衝撃波を作り出すのだ。
雷が衝撃波を生みだす理由は、
・電気によって空気が押しのけられる
・ごく短時間で3万℃近くまで温められた空気が、爆発的に膨張する
で、なにかが破裂したような爆発音に聞こえるのはこのためだ。木や避雷針に落ちたとき、つまり雷がゴールに達した際も衝撃波は発生する。木の下にいるとアブナいのは、木からはみ出すように伝わる側撃(そくげき)で感電するだけでなく、感電しなくても衝撃波で吹き飛ばされてしまうからだ。
もし急に雷が鳴り出したら、
・電柱や木から、4m以上離れる
・木の枝や葉からも、2m以上離れる
・木造住宅の中では、壁や天井から1m以上離れる
電柱や木は、離れすぎると逆効果になるので、「その高さ」までが目安だ。鉄筋コンクリートの住宅や、オープンカー以外のクルマ、電車のなかはかなり安全なので、雨やどりも兼ねてバスや電車に乗るのも一手だ。
高さ20m以上の建物には避雷針が義務付けられているので、街中ではさほど神経質になる必要はないだろうが、山や海、広い公園では、ゴロゴロ鳴り出したらすぐに避難場所を探すのが良いだろう。
まとめ
・雷鳴の正体は、衝撃波
・空気は、電気を通しにくい
・雷で熱せられた空気は、3万℃にも達する
気象庁のデータによると、落雷被害の30%は8月に起きている。
とくに太平洋側に多いので、行楽にはご注意を。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年07月13日に公開されたものです