梅干しは腐るって本当?「減塩だと防腐作用は期待できない」
おにぎりやお弁当に欠かせない梅干し。防腐作用もあるので外出時に最適と思われがちだが、ヘルシー志向がアダとなり、塩分控えめの梅干しでは効果が薄いものが多い。
伝統的な製法で作られた梅干しは20%もの塩分が含まれ、正しく保存すれば腐ることはないが、減塩された「調味梅干し」の賞味期限は半年程度。家庭での食事とお弁当では、梅干しを使い分ける必要があるのだ。
梅干しは薬だった!
梅干し作りは、まず梅の実を塩で漬けることから始まる。この状態をJAS法では「梅漬け」と呼び、これを干したものが梅干しだ。伝統的な製法では天日で3~4日間干し、これを容器に入れて冷暗所で熟成させる。ほかの漬物と様子が違うものの、梅干しも立派な漬物で、賞味期限が3年もある製品も存在する。
日本最古の梅干として1576年に漬けられたものが現存するほど、高い保存性を誇る食品なのだ。
梅干しが腐りにくいのは、ひとえに塩分の多さだ。漬けるときに使う塩は梅の実の10%前後が一般的だが、塩と重石で水分が抜かれた後に干されるため、塩分は20%以上に高まる。殺菌の目安となる塩分は10%なので、傷みにくくて当然だ。
これにシソが加わると、さらに保存性が高まる。シソ独特の香り成分であるペリルアルデヒドには抗菌/防腐作用があるからだ。いつからシソも使われるようになったのか、はっきりした記録に巡り合えなかったものの、梅干しは戦国時代には傷の消毒、明治10年代にコレラが流行した際に需要が増えたように、薬品代わりに使える殺菌力を持っているのだ。
減塩・梅干しは、梅干しじゃない!
対して、塩分控えめの梅干しは少々頼りない。そもそも梅干しではないからだ。
塩分控えめの梅干しは、元祖・梅干しと作り方は同じで、出来上がってから塩分を抜く。もっとも簡単な方法は40℃程度のぬるま湯につけるだけで、家庭でも簡単に減塩梅干しが作れる。ただし、抜けるのは塩分だけでなく、味や風味も減ってしまうので、そのまま食べてもおいしいはずがない。
そこで調味液を用いて味を補っているため、「調味梅干し」に分類されるのだ。
文部科学省が作成している日本食品標準成分表から、梅漬け、梅干しのおおよその塩分濃度を比較すると、
・梅漬け … 19.3%
・調味梅漬け … 6.9%
・梅干し … 22.1%
・調味梅干し … 7.6%
とされ、調味梅干しの塩分は元祖・梅干しの3分の1程度に抑えられている。減塩=ヘルシーの風潮から生まれた調味梅干しは、殺菌の目安となる塩分10%を下回っているため、賞味期限は3~6か月と大幅に短縮されている製品が多い。
それらをおにぎりやお弁当に入れても、防腐作用があるとは考えにくい。
それでも塩分が気になるひとは、家での食事には調味梅干し、お弁当には元祖・梅干しと使い分けると良いだろう。
まとめ
・本当の梅干しには、20%もの塩分が含まれる
・保存食としてだけでなく、昔は薬としても使われていた
・減塩されると「調味梅干し」に名前が変わる
・殺菌の目安となる塩分は、10%
・調味梅干しは8%ほどなので、防腐作用は期待できない
健康のためにと減塩梅干しを使ったらお弁当が傷んでしまった、ではシャレにならない。
これからの季節は汗をかく機会も多いので、塩分補給も兼ねて、お弁当には元祖・梅干しをお勧めする。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年06月01日に公開されたものです