もしもレゴの家を建てるなら「結合力が弱いので風で倒壊する」
2013年8月、デラウェア州で世界一高いレゴのタワーが完成した。34mにも及ぶタワーが作れるというから、レゴは玩具よりも建材と呼ぶべきだ。
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レゴの家は建てられるのだろうか? タワーが作れるぐらいだから強度は十分だが、もとよりバラすのが前提の玩具だけに結合力は弱い。座れない椅子、風で崩れる壁など、危険がいっぱいの家になりそうだ。
目指せ!3階建て
ポッチと呼ばれる突起と、ブロック状の本体の組み合わせでできたレゴブロックは1958年に特許が取得された。その後、軽くて丈夫なABS樹脂に変更されたり、パーツのバリエーションが増えたりしたものの、基本設計は同じなので当時のものと組み合わせて使うことができる。
4個のポッチが2列に並んだ通称8個ポッチのブロック2個だけでも24通り、6個の組み合わせは915,103,765通りもあり、当時は画期的すぎる玩具だったに違いない。シンプルな構造と高い自由度が人気を博し、世界中の幅広い年齢層に人気を博している。
レゴブロックは、ポッチの中心の間隔を基準にサイズが定められ、8個ポッチの場合、
・縦 … 4倍
・横 … 2倍
・高さ … 1.2倍(ポッチを含めない)
となっている。資料によると順に31.944mm/15.972mm/9.5832mmとなっており、実測すると31.7mm/15.8mm/9.5mmだった。また、10個をサンプルに計測したところ、平均重量は2.23gだった。
以後の計算がしやすいように、
・縦 … 32mm
・横 … 16mm
・高さ … 9.6mm(ポッチを含めない)
・重さ … 2.2g
として進めよう。
世界一のレゴタワーは高さ34.13m、50万個以上のブロックを使用したということ以外、はっきりとしたデータが入手できなかった。予想すると、十字の土台から頂上までが段階的に細くなっていることと、中央に芯が入っているがどれくらいの隙間があるのか不明、ぐらいしか分からない。
そこでピラミッドのように四角い底面から始まり、だんだんと細くなってゆく四角すいとし、隙間なくレゴブロックが埋め込まれていると仮定する。使用するブロックを8個ポッチ×50万個で計算すると、34.13m÷9.6mmから、3,555段積み重ねられていることが分かる。
これと総数50万個から逆算すると、最下段は422個、1辺46cm程度の正方形、と予想より少々小さい。
最下段に加わる重さはその上のすべての重さ、つまり(50万-422)×2.2gとなり、1つのブロックが2,604gを支えていることになる。これを荷重限界と仮定し1列に積み直すと2,604÷2.2×9.6=約11.4mで、3階建ての柱も作れることになる。
すごいぞレゴ。我が家の大黒柱となってくれ。
夢の我が家はヘンな形?
ただし、分解できるように設計されているので、結合力の弱さが問題だ。実測するとポッチの高さは1.7mm程度だったので、ブロックの高さの20%にも満たない。そのため真上から加わる力は問題ないが、横方向の力やねじれには弱く、すぐに外れてしまうのだ。
2009年・イギリスのTV番組で、外壁から内装までレゴで作られた家が報じられていたが、やはりこの問題は解決できなかったようで、ふんだんに木材が使われていた。つまり「木造住宅にレゴの内外装」を施したに過ぎず、レゴの家と呼ぶには難がある。
レゴ製の椅子も紹介されていたものの、座ると分解してしまい、まったく機能を果たしていない。世界一のタワーは中央の柱に加え、四方にワイヤーが張りめぐらされていたのも、風にゆられて分解しないための工夫なのだ。
これらを克服するには、
・風を受けにくいピラミッド状
・四方をワイヤーで地面に固定
・内部は柱を多くする
・寺社の組物(くみもの)のように柱~屋根間を逆ピラミッド状に積み、荷重を分散させる
で完成だ。
外観はテント、内部はお寺。しかも衝撃厳禁だから、なんとも落ち着かない空間になりそうだ。
まとめ
引っ越しもリフォームも容易な家が作れるかと思ったが、風で倒壊では危険すぎる。
接着剤を使えば解決しそうだが、レゴファンに怒られそうだからやめておこう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年01月31日に公開されたものです