恐ろしい毒を持つ「ヒョウモンダコ」「スベスベマンジュウガニ」―もしもタコ・カニにかまれたら
2013年、神奈川の茅ヶ崎港で、猛毒を持つヒョウモンダコが発見された。もしもヒョウモンダコにかまれたらどうなるのか?テトロドトキシンを含んだ毒は視覚障害や呼吸困難、重症になると呼吸まひに発展する。かわいらしい外観とは裏腹に、煮ても焼いても食えないスベスベマンジュウガニなど、海辺は危険でいっぱいなのだ。
【もしも体重が増え過ぎたら「300kgオーバーだと身体が重すぎて立ち上がることもできない」】
フグの毒を持つタコ
ヒョウモンダコは体長15cmほどの小さなタコで、普段は黄色がかった褐色の身体をしているが、刺激や攻撃を受けると鮮やかな黄色に変わる。同時に、蛍光ブルーのヒョウ柄が浮かび上がることから豹紋(ひょうもん)の名がついた。
およそ食欲をそそらない色彩は警戒色や危険色と呼ばれ、自分には毒があることを明示し捕食者に襲わせないようにするのが目的だ。スズメバチの身体やけばけばしい色のキノコも同様で、人間界では注意を呼びかけるための黄/黒のストライプに応用されている。
タコは貝や甲殻類などを好み、魚を捕食することもある。8本の足で相手にしがみつき、足の中央にある口から取り込む。タコをさばいたことがある人ならご存じと思うが、この口の部分には「くちばし」があり、毒性のある唾液を注入し獲物をマヒさせる注射器のような役割も果たす。
これは、食用にしているマダコやミズダコを始めほとんどのタコに共通で、概して言えばタコは毒性生物なのだ。
ただしマダコやミズダコは人間に致命傷を与えるほどの毒はなく、鋭いくちばしでかまれた傷の方が心配だが、ヒョウモンダコの毒はフグと同じテトロドトキシンを含むので、たった15cmのタコでも人間を致命的なダメージを与えるのだ。
テトロドトキシンは細菌によって作り出される有機物で、同量なら青酸カリの800~1,000倍の毒性を持つ。摂取すると20分から3時間程度で症状が現れ、厚生労働省の資料によると、
・第1段階 … 口や舌のしびれ、頭痛や腹痛
・第2段階 … おう吐、血圧降下、知覚まひ、言語障害
・第3段階 … 全身まひ、血圧が著しく低下、呼吸困難
・第4段階 … 意識消失、呼吸停止、心臓停止
と、いずれも恐ろしい症状を引き起こす。
ヒョウモンダコにかまれた場合、食べるよりも速く毒が巡るので、15分で呼吸まひ、90分で心臓停止の例もある。
有効な解毒剤がないのもテトロドトキシンの恐怖だ。200℃でも分解しないこの毒が入ったら、時間とともに抜けるのを待つしかない。古来日本では、フグに当たった人は顔だけ出して土に埋めるなどの対処がとられていたのも、あながち間違えとは言えないようだ。
暖かい気候を好むヒョウモンダコは、今まで日本沿岸であまり見かけなかった存在だが、この数年で九州を始め、関東にも登場するようになった。海で出くわしても、決して触らない方が身のためだ。
食用厳禁なカニ
千葉から沖縄にかけて広く生息するスベスベマンジュウガニは、名前の由来となる滑らかな甲羅を持ち、赤褐色のベースに白っぽいまだらの地味なカラーリングながらも、煮ても焼いても消えない毒を持つカニだ。毒の成分はまひ性貝毒で、エサの藻から取り込み体内で濃縮される。
そのため地域によって毒の有無/性質が異なるのも特徴だ。
症状はフグによく似て、食後30分程度に軽いまひから始まる。やがて全身がまひし、最終的には呼吸困難につながる。水によく溶け熱にも強いため、調理すると毒が広まりやすい。ヒョウモンダコと違って触れても安全だが、誤ってみそ汁の具に使った中毒例が多い。
他にもウモレオウギガニやツブヒラアシオウギガニも毒を持っているので、カニは決して安全ではないと注意していただきたい。
まとめ
この先、外来生物と同様に知らない生き物が多く登場するだろう。知らなかったでは済まされない被害も多いので、事前に調べて自衛する必要があるのかもしれない。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年01月27日に公開されたものです