夜が暗いのはナゼ?~宇宙にまつわるパラドックス~
パラドックス(逆説)とは、一見すると正しそうな前提+妥当な推論から、明らかにおかしな結論が導き出されることを言います。
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このパラドックスには様々なものがありますが、今回は宇宙にまつわる有名なパラドックスをご紹介しましょう。
パラドックスの代表例
…とその前に、まずはパラドックスがどんなものかをイメージするため、身近な例でご説明したいと思います。
そんなパラドックスの例としては、「アキレスと亀」のお話があります。
これは、古代ギリシアの哲学者「ゼノン」が考えたパラドックスで、「足が速いアキレスも、歩みの鈍い亀に追いつくことはできない」というものです。
どんなお話なのか簡単にお話しますと…
アキレスが前をゆく亀と競争をするとします。
亀に追いつくためには、アキレスは亀のいた位置まで走らなければなりません。けれども、アキレスがその場所へ到達した頃には、亀はもう少し先の地点へ進んでいるはずですね。
そのため、アキレスはさらに亀が進んだ地点まで走らなければなりません。しかし、その頃には亀はまた少し先の地点まで進んでいるはずです。
つまり、これをどれだけ繰り返しても、アキレスは一生亀に追いつけないことになります。
もちろん、実際にはそんなことは起こらないとすぐに分かるでしょう。
前提自体は何となく正しそうですが、結論は明らかにおかしいですよね。これこそがパラドックスです。
ちなみに、ここでは「アキレスと亀」のパラドックスの解決については省略しますので、よかったら一度考えてみてください。ヒントは「時間」です。
オルバースのパラドックスとは…
さて、パラドックスがどんなものか分かったところで、いよいよ本題に入りたいと思います。
宇宙に関するパラドックスとして有名なのが、「オルバースのパラドックス」です。
これは、19世紀に活躍したドイツの天文学者「オルバース」が提起したパラドックスで、「もし宇宙が無限に広く、恒星の分布がまだら無く均一だとすれば、空全体が星の光で明るく輝いて見えるはずだ」というものです。
当然のことながら、夜空は暗いのでこの説が正しくないことはすぐに分かるでしょう。
…でもちょっと考えてみてください。
あなたは今、夜空の星を見上げているとします。
すると、2つの星Aと星Bの間には、別の星Cがあります。さらに星Aと星Cの間にもきっと別の星Dがあるでしょう。
これを繰り返すので、どの方向を見てもそこには必ず星があるはずです。もちろん遠くの星は暗いですが、その数が無限に多ければ空が真っ暗になることはないですよね。
そう考えると、この説もあながち間違いではないのかと思えたりします…。
オルバースのパラドックスを解く
このパラドックスを解くカギは「無限」というキーワードです。
宇宙の広さが有限なのか無限なのか、その答えはまだ科学的に証明されてはいません。
ただ、ハッキリ言えることは、無限の星の光が地球に届いているわけではないという点です。
現在、地球から見ると他の星がどんどん遠ざかっていることは科学的に分かっています。
それも遠くの星ほど速いスピードで。
つまり、ある一定の距離よりも遠くにある星は、光の速さを超える速度で遠ざかっていることになり、その星から発せられる光が地球に届くことは決してありません。
そのため、地球まで光が到達できる星の数は有限なのです。
また、太陽の寿命がおよそ100億年であるように、星の一生も無限ではないため、そこからの光が永遠に地球に届くわけでもありません。
このような理由から、オルバースのパラドックスは誤りであることが説明できます。
まとめ
今回は、パラドックスの身近な例として「アキレスと亀」のお話と、宇宙に関する「オルバースのパラドックス」についてご紹介しました。
どちらも一見すると正しそうに感じてしまうパラドックスですが、ちゃんと解決できるものになっています。
このようなパラドックスは世界中にまだまだたくさんありますので、興味のある方は一度調べてみてはいかがでしょうか。
(文/TERA)
著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。※この記事は2014年01月13日に公開されたものです