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太陽の熱が地球まで伝わる仕組みとは?「放射で電磁波を地球が吸収するから」

太陽と地球は遠く離れています。その距離はおよそ1億5000万kmと、光の速さでも8分以上かかる距離です。
こんなに離れていて、しかも宇宙空間は何もない真空なのに、どうして太陽の熱が地球まで届くのでしょうか。

熱の伝わり方とは…

熱の伝わり方には、「伝導」、「対流」、「放射(輻射:ふくしゃ)」の3種類があります。

「伝導」とは、熱が触れ合った物質の中を直接伝わっていくもので、このとき物質そのものは移動しません。
金属棒の片側の先を温めると、その熱が反対側の先にまで伝わりますが、これが伝導の一例です。

次に、物質の移動に伴って熱が伝わる現象が「対流」です。

例えば、やかんに水を入れて火にかけると水全体が温まり、氷を水に浮かべると水全体が冷えますが、これらは対流によって起こります。部屋を冷やすためのエアコンなども同様です。

つまり、金属のような固体の場合には「伝導」で、水や空気のような液体や気体の場合には「対流」によって熱が伝わるということが言えます。

そして最後に「放射」ですが、これは熱が電磁波として伝わる現象を指します。電磁波というと、体に良くないイメージがあったりもしますが、実は電波・赤外線・可視光線・紫外線・エックス線・ガンマ線、これらはすべて電磁波の仲間です。

放射の場合には、相手方がこの電磁波を吸収することによって熱が伝わるという仕組みです。電磁波のため、間に何もない真空でも伝わる性質があります。

たき火や電気ストーブは、直接触れなくても手を近づけるだけで温かく感じますが、これは放射の身近な例と言えます。

ちなみに、表面温度などを調べることができるサーモグラフィーも、この放射を利用して、発生している電磁波の波長から測定をしています。

太陽の熱が伝わる仕組み

さて、それでは太陽の熱は、この3つのうちどの方法で地球まで伝わってくるのでしょうか。

まず、伝導や対流の場合は、その間に物質があることで熱が伝わります。

しかし、宇宙空間は真空であるため、太陽と地球の間には何も存在しません。

つまり、太陽の場合は、3番目の放射で熱が伝わっていることになります。
太陽からは、可視光線のほか、赤外線や紫外線のような電磁波が「太陽光」という形で、放射により地球まで届きます。

なお、地球の大気圏外で受け取る太陽エネルギーの量は1平方メートル・1秒あたりで1.37kWで、これは1ccの水の温度を1分間で2℃上昇させるぐらいのエネルギー量です。

ただし、実際には大気で反射や吸収・散乱してしまうため、地表まで届くのは、その6~7割程度と言われています。

ちなみに、放射の場合は物体に当たった時に初めてその電磁波を吸収するという点が特徴です。

太陽と地球の間にある、真空の宇宙空間が太陽光で暖まらないのはこのためです。

光が当たると暖かく感じる理由

ところで、太陽の光が当たるとなぜ私たちは暖かく感じるのでしょうか。

太陽光の成分は、そのおよそ半分が赤外線、残りは可視光線とわずかな紫外線です。

これら(特に赤外線)が物質に当たると、その物質を構成する分子が刺激されて激しく振動します。

人体の場合も同様に、体を構成している分子が振動します。すると、その振動によって熱が発生するため暖かく感じるのです。

電子レンジは、電波の一種であるマイクロ波が物体の水分子を振動させることで、熱を発生させて物を温めることができるという仕組みですが、原理的にはこれと同じと言えます。

まとめ

熱の伝わり方には、「伝導」、「対流」、「放射」の3種類があり、そのうち太陽からの熱は真空の宇宙空間でも伝わる「放射」によって届けられています。

私たちが住む地球は普段何気なく太陽からの恩恵を受けていますが、1億5,000万kmも離れたところから届くエネルギーを受けて生物たちが生活できているなんて、とてもありがたい話ですね。

(文/TERA)

●著者情報
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2013年07月22日に公開されたものです

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