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富士山が日本一では無くなる日

「日本一高い山は?」と聞かれたら、誰もが迷わず「富士山!」と答えるでしょう。

【男性に聞く!富士山の撮影スポットランキング1位「ダイヤモンド富士」】

標高3,776mを誇る富士山は、まぎれもなく日本一高い山です。

でも、もしも日本一高い山が富士山じゃなくなるとしたら…?

今回のお話では、そんなちょっと危険な可能性に迫ってみたいと思います。

富士山の頂上は誰のもの?

そもそも、日本一高い場所である富士山の頂上は何県になるのでしょうか。

地図を見ると静岡県と山梨県のちょうど県境に位置している富士山ですが、麓(ふもと)に近い方は静岡県の富士宮市や裾野(すその)市、山梨県の富士吉田市など両県にまたがっていることが分かります。

しかし、頂上に近づくにつれて県の境界線はなくなり、8合目から上はどちらの県だか分からなくなってしまいます。

…というのも、これは富士山の頂上がどちらの県にも属していないためです。

現在、富士山の8合目から山頂までは「富士山本宮浅間大社(ほんぐうせんげんたいしゃ)」の境内(けいだい)となっています。これは、江戸時代に幕府から富士山8合目以上の支配権を認められたためで、そのまま今に至ります。

なお、富士山本宮浅間大社は全国にある浅間神社の総本山であり、静岡県の富士宮市内にあるものが、その本宮(本殿)となっています。

富士山で繰り返されてきた崩壊

現在の富士山はとてもなだらかな円錐形をしていて、これがまた人気の理由でもありますね。

しかし、過去の富士山を見てみると、1万年に1~2回のペースで「山体崩壊(さんたいほうかい)」という大規模な山崩れを繰り返してきたという歴史があります。

この崩壊によって富士山には巨大な谷がいくつも誕生しましたが、その後も大きな噴火を繰り返してきたことによって、その谷は埋められて現在のような美しい形となりました。

日本一では無くなるかも…?

もしもこの先、富士山が噴火によって再び山体崩壊を起こしたとしたら、どのような姿になってしまうのでしょう。

そのヒントになるかも知れない山が、かつて「アメリカの富士山」とも呼ばれていた「セント・ヘレンズ山」です。

ワシントン州にあるセント・ヘレンズ山は、1980年に頂上付近での大噴火によって直径1.5kmに及ぶ火口が姿を現したとともに、大規模な山体崩壊を起こした結果、それまで2,950mだった標高が一気に2,550mにまで減少しました。

実に、400m近くも崩れ落ちてしまったことになります。

富士山でも、最近では2900年前に山体崩壊を起こしたという記録があり、もし噴火によってこれと同じようなことが起きれば、日本が誇る富士山の標高が低くなってしまう可能性も十分にあると言えるわけです。

ちなみに、日本で二番目に高い山である山梨県の「北岳」は標高3,193mですので、セント・ヘレンズ山を超えるような規模の山体崩壊が起こったとしたら、富士山が日本一高い山では無くなる日が来るかもしれません…。

山体崩壊による影響

富士山のような巨大な火山が崩壊を起こすと、「岩屑(がんせつ)なだれ」や「土石流(どせきりゅう)」などを起こし、大規模な災害につながるケースがあります。

日本における山体崩壊の例としては、1888年の磐梯(ばんだい)山の崩壊が有名ですが、このときには岩屑なだれが発生し、ふもとの村をいくつも飲み込んだとされています。

また同様に、富士山の2900年前の山体崩壊でもやはり岩屑なだれが起き、富士山の東側にある御殿場(ごてんば)市付近に大量の土砂が流れこんだということです。

岩屑なだれや土石流が起こると、時速100kmを超えるような速度で大量の土砂が流れてきますので、発見してから逃げていては間に合いません。そのため、たとえ数千年に一度の出来事とはいえど、この前兆をいち早くキャッチして、事前の避難につなげることが重要です。

まとめ

2013年、ようやく念願の世界文化遺産に登録された富士山。

富士山の頂上が富士山本宮浅間大社の管理下にあるのも、実は富士山の噴火を鎮めるために水の神を祀った(まつった)ものであり、現在のような雄大な姿になるまでには、数々の大規模噴火が起きているという事実も決して忘れてはなりません。

そう考えてみると、現在のようなとても美しい富士山の姿が眺められるというのは、もしかしたら貴重なことなのかもしれませんね。

(文/TERA)

著者紹介

小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年01月05日に公開されたものです

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