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単純にエレベーターで逃げろってことじゃない!? 東京消防庁に話を聞いてきた

消防車先日、東京消防庁が防災指導のひとつとして「火災の場合、歩行困難者はエレベーターで避難すること」を推奨したと報道されました。本来、エレベーターでの避難はするべきではないというのが通説でしたが、なぜこの方針が打ち出されたのでしょうか? 東京消防庁に今回の指導内容について伺いました。

■前提にあるのは一時避難スペースの確保

――今回の防災指導についてお話を伺いたいのですが、決定に至る経緯などを教えてください。

この対策は、高層建築物での歩行困難者の方のための避難安全対策です。高齢の方の増加、また高層建築物の増加している現在、街中ではバリアフリーの考えが浸透してきていますが、火災の際は依然として「階段で避難するよう」指導しています。そこで、東京都の火災予防審議会でどのような対策をすればいいのか検討を進め、今回の指導の推奨に至りました。

――避難安全対策の内容を改めて教えてください。

まずひとつは階段などを使わずに同じ階の安全な場所に避難していただく「水平避難の対策」です。消防隊が救助に駆け付けるまで待っていただく一時避難エリアの設置を重点に指導を行います。

――なるほど。同じ階に避難場所があれば歩行困難な人でも避難しやすいですね。

この「一時避難エリア」があることを前提にして、そこに「非常用エレベーター」があり、なおかつ安全に避難誘導のできる人間がそこにいる場合に限り、非常用エレベーターを使っての垂直避難の考えを推奨してもいいのではないかという提言がなされました。

この考えを実際の建物などに反映させ、指導していくと策定したのが今年の10月1日になります。

――何でもかんでもエレベーターで避難すればいいというものではないのですね。

はい、前提にあるのは「救助が来るまで、歩行が困難な方が安全に待てるスペースを作ってください」というものになります。そして、自衛消防隊による避難誘導のもと、可能であれば非常用のエレベーターで避難してくださいというものなのです。一般のエレベーターでの避難の推奨ではありません。一般のエレベーターは火災の際ストップしてしまいますから、これまでどおり絶対に使わないでください。

――そこを勘違いしないようにしないといけませんね。

■自分で勝手に避難するものではなく救助に使われるもの

――非常用エレベーターの避難についてですが、これは自発的に行うものなのでしょうか?

いえ、自分でエレベーターを呼んで避難するのではありません。非常用のエレベーターを消防隊用に切り替えた場合は、エレベーター内で操作した階にしか止まりません。火災の際に使う場合は、消防隊か建物の自衛消防隊の方が操作して、緊急性の高い階から救助を行います。

――一般の方が思っているようなエレベーターの使い方ではないのですか。だからこそ一時避難エリアの確保が大事になってくるのですね。

はい。そこで待っていただくということです。

――緊急避難に使われる非常用エレベーターは一般の人でも見分けがつくようになっているのですか?

一般のエレベーターと非常用エレベーターには表示のちがいがありまして、「非常用エレベーター」と書かれたプレートが貼られています。今回の避難誘導に使える非常用エレベーターは、さらにいくつかの要件がありまして、それをクリアしたものに避難誘導用の非常用エレベーターだというマークを貼ってもらうように指導していきます。

避難誘導用非常エレベーターのマーク

避難誘導用非常エレベーターのマーク

――なるほど。これはわかりやすいですね。

また、一時避難エリアもわかりやすいようにマークを貼っていただきます。

一時避難エリアのマーク

一時避難エリアのマーク

――こうした一時避難エリアや非常用エレベーターが設置されている建物は現在どれくらいあるのでしょうか?

指導基準を策定したばかりですので、現状ではこのマークが貼られている避難エリアや非常用エレベーターはありません。今後、新たに建てられる建築物での指導や、現在ある建築物で指導内容の要件に沿う建物があれば設置されていきます。

――「わかりやすい」ことは大切ですし、もしもの場合に避難しやすい建物が増えるといいですね。

この避難指導は、現在東京消防庁だけの取り組みとのことです。しかし、今後は各地方でも、こうしたお年寄りなど歩行が困難な人が避難しやすい取り組みがされるといいですね。

(貫井康徳@dcp)

※この記事は2013年10月22日に公開されたものです

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