お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

犬はなぜお尻を拭かなくてもきれいなのか?

清潔志向で知られる日本人。平成23年度には温水洗浄便座の普及率が70%を超え、いまやお尻は水で洗うのが当たり前になっている。

そんなきれい好き生活も実は歴史が浅く、誰もがトイレットペーパーを使えるようになったのは江戸時代で、人間は長い間、手や小石、木や竹のへらを使ってお尻をふいていたのだ。

紙なし水洗トイレ?

日本に最初のトイレが登場したのは約16,500年前~3,000年前の縄文時代と推測され、川に張り出した板の上から用を足すだけの簡単な構造だった。

やがて飛鳥時代になると敷地内に川の水を引き、建物型の水洗トイレが登場する。トイレを厠(かわや)と呼ぶのも、川の上の建物「川屋」が語源との説が有力だ。

「水に流す」の言葉からもわかるように、いたるところに川や湖がある日本では、早い段階から水洗トイレが利用されていたのだ。

トイレットペーパーの原料でもある紙も歴史が長く、日本製紙連合会の資料によると紀元前2世紀ごろに中国で発明されたと考えられている。その後300年ほどたってから実用的な紙へと進化したものの、製造が難しいため高級品だった。

おまけに麻や樹皮、ボロ布が材料だったので、今の紙とは比べ物にならないぐらい厚く硬かったに違いない。ゴワゴワで高価な紙がトイレで使われるようになるとは、当時だれも想像できなかっただろう。

紙が日本に伝えられた時代は諸説あるもの、厠と同じ飛鳥時代とする説が強い。のちに楮(コウゾ)や雁皮(ガンピ)などの植物を材料にした和紙へと発展する。

やがて平安時代になると、日本初のトイレットペーパーが登場する。ただし貴族など身分の高い人用に限定され、誰も使えるようになったのは500年以上後の江戸時代になってからからの話で、それまで庶民は竹や木のへら、縄を使ってお尻をふいていたのだ。

お尻が痛そう!と思うのも当然だが、紙以外でお尻をふくのは世界的に当たり前で、現代でも紙を使うのは人口の3分の1弱と考えられている。おもな材質と地域を挙げると、

・縄 … 世界中
・樹皮 … ネパール、日本
・海綿(カイメン) … 古代ローマ、地中海諸島
・苔(コケ) … 北極圏
・石 … エジプト
・砂 … サウジアラビア

などだ。木のへらでふき取る姿も強烈だが、エジプトで昼間に用を足したら焼け石でお尻が痔(じ)にならないか心配だ。その点、天然のスポンジである海綿なら使い心地もソフトで安全にふけるだろう。

ただし、古代ローマではみんなで同じ海綿を共有していたそうだから、キレイにしたいのか汚したいのか分からない。

痛いかどうかは二の次で、不衛生過ぎて試す勇気もわかない。昔のお尻は、そうとう頑丈だったに違いない。

犬のお尻はなぜふかない?

犬や猫はお尻をふかなくても大丈夫なのはなぜだろう? これは人間の2足歩行に対し、4本足で立つ構造の違いからだ。人間のお尻・臀(でん)部は、2足歩行の結果として筋肉が発達し大きくなった。

そのため肛門が隠れてしまうのが、ふかないといけない第一の理由だ。また、立ち上がるとお尻は下を向くため、便が重力に引かれて不用意に出てしまわないよう、強い力で肛門が閉じられている。

対して4本足の動物はお尻が水平方向を向いているため、肛門も内蔵も力を入れて保持する必要がない。その結果、便といっしょに直腸の一部が飛び出すため、お尻が汚れないのだ。

人間なら脱肛状態なのでかなりツラそうに思えるのだが、動物界ではこれが当たり前。ふき取る必要がないのは、人間よりもはるかに優れた構造と言えるだろう。

まとめ

2012年度・日本の古紙回収率は79.9%にも及ぶ。ただしトイレットペーパーは水に流してしまうので、リサイクルできない完全消耗品だ。

歴史と消耗品の性質を考えると、トイレットペーパーこそが究極のぜいたくに思えてきた。3ロールで5千円!の高級品もあるので、彼氏にプレゼントしてみるのも一興だろう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2013年09月08日に公開されたものです

SHARE