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65歳~85歳で1,200万円余分に必要。知るべきあなたの老後のお金

「私の老後は大丈夫なのかしら」とうっすら不安に思っている人は多いのではないでしょうか。仕事をリタイアしたときにどのくらいのお金があればいいのか、これから貯金をして間に合うのかなど、心配は尽きません。ファイナンシャルプランナーの前野彩さんにお話を伺いました。

老後にかかるお金っていくらなの!?

――老若男女を問わず、老後が不安だという人は多いと思います。「年金が信用できない」なんて話もありますし。

前野先生 皆さん不安に思われていますが、国の年金は、老後はもちろん、障がい者になったときや、死亡したときの家族の保障も付いている手厚い制度なんです。とはいえ、今のシニアの人ほどの年金はもらえなくなりますから、早くから老後の準備をしておく必要があります。

――仕事を定年で辞めてからのお金を「老後に掛かるお金」だとすると、どのくらいあると安心なのでしょうか?

前野先生 よく聞かれるのですが、老後の収入も支出も人によって違うので、その質問にお答えするのはとても難しいんです。

――平均でもいいのですが……。

前野先生 お金のことは、平均に近かったから……と言って安心できるものではないので、私はいつも「平均を気にしても仕方ないですよ」と申し上げています。でも、せっかくのご質問なのでお答えしますね(笑)。

総務省が算出したデータによると、高齢者の世帯では、年金などの1カ月の収入が約18万円。それに対して、食費や光熱費など生活に必要なもののほか、税金や社会保険料などの支出の合計が約23万円です。

ですから、平均では1カ月当たり約5万円不足することになります。この足りない部分を貯蓄から出しているわけです。

――すると月々5万円×12カ月で、1年間に60万円。あとは生きる年数分を掛ければいいのでしょうか?

前野先生 65歳から85歳までの20年間で計算すると、1,200万円必要ということになりますね。ただし、これはあくまで平均です。

例えば、持ち家の人では、家賃が要らない分「夫婦2人で18万円あれば十分」という場合もあるでしょう。「賃貸住宅だから家賃も必要だけど、老後は旅行にどんどん行って、思い切り楽しんで暮らしたい」という人は、23万円の支出では足りないでしょう。

――なるほど。

前野先生 まずは、自分の老後を想像して、1カ月当たりの「老後の収入 ? 老後の支出」で足りない金額の20年分を目安にするといいですね。

――平均より、自分のプランが大切ということですね。

前野先生 その通りです。そして、今は生活費だけでしたが、老後は時間ができる分、旅行や孫と遊ぶためのお金も必要ですし、医療や介護に備えたお金も持っていなければなりません。

――そのお金も掛かるんですね。若い人は知らないと思うのですが、介護を受けるためのお金ってどのくらい掛かるのでしょうか?

前野先生 老後の介護は介護保険があるので、利用した介護の1割が自己負担になります。例えば、自宅に洗濯や調理などの援助に来てもらった場合、通常なら1時間2,000円のところを、その1割の200円で利用できるのが介護保険なのです。

――1時間で200円、365日で7万3,000円ですか。たぶん1日1時間で済むことはないんでしょうね。

前野先生 そうなのです。介護が必要な度合いにもよりますが、介護保険を利用した分とそれ以外の介護の負担の1カ月当たりの平均額は、約4.4万円(公益財団法人 家計経済研究所)。平均介護期間は4年9カ月(公益財団法人 生命保険文化センター)といわれていますから、単純に平均すると約250万円になります。

――老後の安心は、生活費のお金を準備したらいいだけではないんですね。

年金ってどのくらいもらえるの?

――老後になると、当然働いていないですから収入は年金によるわけでよね。年金ってどのくらいもらえるのでしょうか。

前野先生 それも働いてきた年数や職業、年収によって人それぞれ違うのですが、目安をご紹介しますね。厚生労働省のデータによると、約36年間働いてきた男性で1カ月約17万円(国民年金と厚生年金の合計で年間約204万円)、約25年間働いた女性で1カ月約10万円(同合計で年間約120万円)がいわゆる平均です。

――ちょっと待ってください。前述の月約23万円の支出ということは、1年間で276万円必要です。全然足りないですね。

前野先生 そう、足りない分は、自分で準備する必要がありますよね。

――だんだん暗い気持ちになってきました。

前野先生 不思議なんですが、こういう数字のお話をしていると、男性は暗くなって、女性は前向きな顔になることが多いんです(笑)。「足りない」ということが目に見えると、「そのために何をやるか」という目標が明確になるので、女性の方がやる気が出るみたいですね。

――女性の方がリアリストということなんでしょうか(笑)。例に挙げていただいた男性と女性が共働きで結婚していたら、その年金は足し算していいのでしょうか。

前野先生 はい。その場合は世帯収入は204万円 + 120万円で、1年間に324万円になりますね。

――それだと前述の270万円を超えますね。結婚した方がいいのかもしれませんね。

前野先生 それも人生設計ですね(笑)。家を買うのか、子供をどうするのかといった要素も入ってきますので、その分のお金も計算しつつ、退職金や今から準備できるお金も含めて老後資金を考えましょう。


■女性誌でも老後の心配をしている!

――若いとあまり真剣にお金の心配をしないと思いますが、やはり考えておいた方がいいですね?

前野先生 最近は、若い人でも気になる方は多いようですよ。『クレア』さんと『an・an』さんにお声掛けいただいて、記事に協力させていただきました。

――えっ、ファッション誌でもそういう記事を掲載しているのですか。

前野先生 はい。やはり老後というのは誰にでも訪れますから。「どうなるか分からない」「考えられない」とおっしゃる方も多いですが、分からないからこそ「もしもこうだったら」と考えてみるのです。

結婚するのかしないのか、子供は持つのか持たないのか、家を買うのか買わないのか、これらを考えることで必要なお金が見えてきますよ。

――若い人にアドバイスをお願いします。

前野先生 お金は使うためにためるものです。早いうちから「いつ・いくら・何に必要か」を考えておくと、お金のストレスから解放されて、人生の選択肢が広がりますよ。

前野彩先生の本が刊行されています!

●『ズボラでも大丈夫!書き込み式 一生役立つお金のキホン』(日本経済新聞出版社)
※今回お話しした自分に必要な老後資金の計算方法が載っています。
●『危うくムダなお金を払うところでした』(産経新聞出版)

(高橋モータース@dcp)

前野彩先生の『FPオフィス will』
http://fp-will.jp/

※この記事は2013年05月07日に公開されたものです

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