【第1話】モラハラ・不倫・托卵。感情の整理が追いつかない衝撃エピソードの玉手箱
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、『わたしの宝物』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。「托卵」という禁断の決断を下した一人の女性とその夫、そして彼女が愛した彼、3人のもつれあう感情を完全オリジナル脚本で描いた本作。手にした愛と、犯した罪。その運命はいかに――。
※このコラムは『わたしの宝物』1話までのネタバレを含んでいます。
世間から見れば幸せ。その実態は……
神崎美羽(松本若菜)は商社マンの夫・宏樹(田中圭)を持つ専業主婦。イケメンエリートで稼ぎのいい旦那を持ち、都内の広い家に住む専業主婦とあらば、世間から見れば幸せで何不自由ない生活。
しかし、蓋を開ければその夫婦関係はあまりにも歪。宏樹はこの世のモラハラを全てかき集めてろ過し、作り上げたような、濃縮還元10000%の絵に描いたモラハラフルコース夫なのです。
これでもかと降り注ぐ田中圭のモラハララッシュ
宏樹は突然夜中に部下を大量に引き連れ帰宅。これだけでも嫁ブチギレ案件ですが、客人をもてなすために着替えて急遽料理を準備し、文句一つ言わず笑顔で迎え入れた美羽に対し、宏樹は感謝の言葉一つなく、部下の名前を美羽が間違えて呼んでしまったことをただ責めるのみ。
会社の書類を机に忘れれば、「何時に(会社)来れる?」と、美羽の都合などフル無視で、持って来るのが当然のように嫁をバイク便扱い。服装ひとつにもうるさい宏樹を想定して、わざわざ着替えてまで向かったのに、書類はすでに部下に作り直させていて不要な上に、「遅いんだよ。部下に気を遣わせただろ。もうちょっとマシな格好できないのかよ」と、自分が書類を忘れた過失はそっちのけでとにかく全否定。
後輩で即時リカバーできる仕事ならさっさと自分でやっとけだし、今のご時世、紙ベース保管のみでデータが手元にないってどういうことだよ!? と宏樹の仕事能力にも疑問を抱く理不尽モラっぷり。
そもそも来社にあたり、服装の文句つけるなら毎度ドレスコード指定しろよ。高級レストランかよ。と、とにかく視聴者の怒りを煽ってきます。
そして「子どもがほしい」と投げかけてみれば「仕事してる俺の気持ち考えたことある? 暇だから子どもほしいんだろ」とこれでもかと美羽の心をへし折ってきます。
しかし、「ちょっと抜けたいいやつ役」の代名詞のような田中圭のここまで鬼畜な姿を見れるとは……ある意味おいしいドラマなのかもしれません。
ドラマ史上初!? 酢昆布でえげつない優しさを見せつけてくる高等テク
宏樹の要望に全て健気に応えようと頑張る美羽は、自分が無意識に心に蓋をして、笑顔を失い、無理をしていたことに気づきます。それを気づかせてくれたのが、冬月稜(深澤辰哉)との偶然の再会でした。
2人は昔を思い出したようにすぐに意気投合。普段は宏樹の顔色を伺いながら過ごしていた美羽が、冬月相手には冗談も交えながら対等に話していたことに気づき、本来の自分の姿を思い出したようです。
冬月は昔から美羽の心を軽くしてくれる存在でした。母親がシングルマザーで、あまり暮らしが裕福ではなかった美羽は、母の苦労を理解しながら自分の境遇を嘆く自分に罪悪感を抱きつつ、冬月に感情を吐露します。
そんな美羽が、酢昆布のせいにして気兼ねなく泣けるように「酸っぱすぎて涙でるだろ」と、大量の酢昆布を食わせるなど、到底中1とは思えないレベルの気遣いとコミュ力を酢昆布という中1らしいアイテムを使って見せつけてきます。酢昆布でこんなに優しさ見せつけられるとかテクニックが高等すぎます。
突然美羽が姿を消して2人の関係が終わったようですが、この関係の終わり方にも何か伏線がありそうな予感です。
ベッドシーンのえげつない対比からの死亡フラグ
冬月はもうすぐ仕事でアフリカに行ってしまうことから、一瞬の再会で関係が終わるのかと思いきや、ここで運命のイタズラが起こります。
ある日、宏樹に内緒でマーケットの手伝いをすることになった美羽。それに気づいた宏樹はゴルフ後のその足で美羽の様子を見に来るという、フッ軽モラハラっぷりを見せつけます。
そこにいたのは普段自分には見せない笑顔の美羽の姿。その様子に嫉妬や怒りを覚えた宏樹は、帰宅するや否や美羽に力づくで行為を求めます。夫婦間といえどもはやこれはレイプ。
悲しみと失望を覚えた美羽は気づけば、冬月との思い出のある給水塔の下に足を運んでいました。そこでまた偶然にも冬月と再会し、抑え込んでいた自分の感情が溢れ出します。そしてそのまま冬月とも寝てしまうのです。
この2度のベッドシーンの対比が両極端すぎて。手を絡めながら美羽が相手を受け入れる様子が見て取れる、穏やかな冬月との行為と、手首を押さえつけられながら無理やりされる宏樹との行為。
美羽の心の内が全てその手の描写に現れているようでした。
そして冬月は「プロジェクトが軌道にのったら美羽を迎えにいく」定番すぎる死亡フラグのセリフを告げ、海外へ旅立って行きました。
妊娠のち即死とかあり?
宏樹も昔は涙もろく、昔は2人で互いの辛いことに共感しあって泣くなど、気持ちを支え合える心優しい青年だったようですが、一体何が彼をこうさせてしまったのでしょうか。
「(俺が)外面ばっかり良くて笑ってるんだろ?」と、自分のモラを自覚しつつ、コンプレックスに感じながら美羽に八つ当たりしているよう場面もありましたが、何か自信を無くす大きなきっかけがあったのかもしれません。
そんなこんなで美羽は妊娠をします。出生前DNA検査の結果、子どもの父親は配偶者である宏樹ではなく、冬月。「ちゃんと避妊しなかったんかい!」という、視聴者の心のツッコミもありつつ、さらにそこに飛び込んできたのは冬月が海外でテロに巻き込まれ亡くなってしまったというニュース速報。
ドラマの3番手のメンバーが即死ってあります? 普通に考えたら、ふっか1話で死亡。以降出演なし! はないと思うので、もしかして生きてやしないか? という大人の事情的推察も……。
托卵という恐ろしい計画を抱いた美羽
自分を宏樹のモラハラという鳥カゴから連れ出してくれるはずだった王子様、冬月の死と、冬月の子を妊娠したという衝撃の事実。受け止めきれない感情が一気に訪れ、困惑する中美羽はある企みをします。冬月との子どもを宏樹との子どもとして育てる、いわゆる托卵で子どもを産むことを心に決めたのです。
そして、宏樹に妊娠を告げる「あなたの子よ」発言。子どもを妊娠したことをパートナーに伝える際にあえて「あなたの子」ということで、まるで他にも可能性があるかのように聞こえますが、宏樹はそこには違和感を抱かないのでしょうか?
普通ならあなたの子以外、ありえないわけですが……托卵となると、顔など身体的特徴の遺伝のほか、絶対に逃れられない子どもの血液型問題などもありますが、そこら辺もきちんと加味された上での托卵計画なのかが気になります。
浮気、不倫やレスなどの題材を超えた新たなテーマ、托卵。この結末には幸せが待っているのか、ラストまで目が離せません。
(やまとなでし子)