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【第5話】全女性の気持ちを代弁してくれた母と、ドライヤーに見えた息子の性格

#海のはじまり考察

やまとなでし子

恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、『海のはじまり』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。自分の子どもが7年間生きていることも、これまでをどう生きてきたかも知らなかった夏と、突然自分の人生に現れた海。2人の関係や、亡くなった彼女と娘との“母と子”の関係――。本作はさまざまな形の“親と子”のつながりを通して描かれる愛の物語。

※このコラムは『海のはじまり』5話までのネタバレを含んでいます。

©フジテレビ

やっぱり毒親だった弥生の母

学生時代の彼女・水季(古川琴音)がひっそりと産んでいた子ども・海(泉谷星奈)の存在が7年越しに発覚し、人生が大きく変化しだした夏(目黒蓮)。

海との距離を縮めていくために、恋人の弥生(有村架純)に髪の結い方を習います。子どものことが全く分からないながらに考えた、できることの一つが「髪を結ぶこと」なのも、生真面目に弥生に結い方を習っているのも夏らしくて和みます。

弥生に子どもができたことを告白した時も、弥生の母は一切弥生に寄り添わず、自分のことばかり心配していましたが、今回の会話から、弥生の母が毒親であることが分かりました。

毒親ゆえに弥生が優等生になったという皮肉

子どもの頃、母が弥生の髪を結ぶ行為は、弥生にとって「痛くて早くて作業って感じ」だったということから、母にとっては「手間であり、早く終わらせたいもの」だったことが伺えます。

忙しい中で毎日のことであれば、愛があっても手間と感じてしまうのは人間なのであることですが、「弥生が父に頼むと不機嫌になる」ということから、やはり自分の気持ちを優先して周囲をコントロールするタイプなのでしょう。

それで父が母に気を使い出すことも敏感に弥生は感じ取り、空気を読んで自分のことは自分でするようになったのですね。

模範的な優等生のように、人に甘えたり一切負担をかけたりすることなく、物分かりよく自分一人できれいに物事を完結させてしまう弥生の性格は、この毒親からきているというのも皮肉なもの。

「嫌いでいいよ。親だって人だし」という夏の言葉は弥生にとって大きな救いになったことでしょう。自分の本心を受けとめてくれる夏という存在が弥生にできて、本当によかった。

夏と朱音が家族になった瞬間

©フジテレビ

水季の母であり、海の祖母である朱音(大竹しのぶ)。当初は夏のことをけげんに扱っていましたが、だんだんと夏を認め、心の距離が近づいてきたようで、まるで息子のように扱う場面が随所にありました。

海の存在をまだ家族に明かしていない、という夏の手を叩き「さっさと言いなさいよ」と説教し、「私でよければ(説明するから)呼んで。俺のせいだ、俺が悪いって話ややこしくするでしょ」と夏の性格まではっきり見抜いて、フォローをしようとしてくれた朱音の気持ちがとにかく温かくて。心から心配するような叱り方がまるで本当の家族のようでした。

ちなみに同じことで夏が弥生から叱られた時、朱音だけでなく、弥生にまで手を叩かれていたのもクスリときましたね。

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海が朱音に「転校したくない」と本音を漏らした時も、「夏休みの間にみんなで考えよう」「夏君も?」「うん。家族みんなで」と返しており、朱音が夏を家族として認めてくれたことが、ここでもはっきりと表現されていました。

そして、朱音が説教をするときのちょっとクセのある感じの言い回しが、水季とも少し似ているようで、なんだか笑ってしまいます。

全女性の気持ちを代弁してくれた夏の母

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夏はとうとう家族に海の存在をカミングアウトします。弥生との結婚報告だとばかり思い込んでいた家族は「子どもがいる」という言葉足らずな夏の発言を、弥生との授かり婚だと勘違いして、手放しで喜びます。

しかし、その事実を知った時、この世の全女性を代表するかのように、母・ゆき子(西岡尚美)は夏を厳しく叱咤します。

「彼女妊娠させて隠したの? 学生の分際で。男だから隠せるって思ったのよ。サインしてお金出して優しい言葉かけて終わり。体が傷つくこともない。悪意はなくても隠したってそういうこと」「弥生ちゃんのことは任せる。でも何か強要させるのは許さない」

「子どものことを隠した」という事実を再認識させ、「生きていたからよかった」で終わらせないために、しっかりと夏が背負うべき責任を突きつけ、その後で「名前は?」と海の話題に移しながら「お母さんちょうど孫が欲しいなって思ってたとこ。連れてきて、会いたい」と優しくフォローし、全面的に受け入れる一連の流れが完璧な母すぎて……。

弥生が「どうやったら月岡くんみたいな子どもが育つのか?」と言っていましたが、この母にして、今の夏になったのだとよく分かるシーンでした。

水季が一人で頑張っていた謎

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夏の母が「水季ちゃんが誰にどのくらい助けてもらったのか分からないけど、知ろうとした方がいい。学ぶこと多いよ」と言っていましたが、水季が元気だった頃、ほとんど人の手を借りることなく、唯一水季を助けていたのは津野(池松壮亮)のみだったよう。

実家を頼ることがなかったのには何か理由があるのでしょうか。当初は困惑があったものの、両親ともに孫ができることを喜んでいましたし、仮に水季が朱音と険悪だったとしても、父・剛が間に挟まって、朱音の裏でフォローをしそうなものですが……。

水季の性格的に、「一人でなんとかする」という強い意志があってのこと、とも考えられますが、「病気が分かったり死んでから現れるなんてみんな調子いいよね」という水季の元同僚の言葉を聞くと、水季が一方的に遠ざけていただけではなさそうです。

今回の冒頭で、水季が海の髪を結っていたボンボンのついたゴムが津野の家のソファの隙間から出てきたのがまた切なくて。きっと津野が海の髪を結ってあげることもあったのでしょう。

水季というつながりが消えてしまった今、あんなにも面倒を見てあげていた海との関係がこんなにも希薄になり、一気に外野と化してしまった津野。

法でも血でもつながらない関係の弱さを嘆いていましたが、朱音が以前津野のことを少し煙たがっていたように見えたのも、何か理由がありそうで気になります。

夏は今後、母の教えに従って、津野に海と水季のことを聞きに行くことになるのでしょう。そこでこれらの疑問が明かされるのでしょうか。

ドライヤーに見える夏の性格

夏の些細な行動に性格が現れていて、くすりとくる場面がいくつかありました。

弥生の髪で三つ編みを練習する時には「痛くない?」と優しく配慮し、夏が海の髪を乾かす時にはあのロングヘアーに対して「風ほとんど届かないだろ!」ってくらいめちゃくちゃ遠距離でドライヤーをあてて いました。

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「風邪ひくわ!」と朱音に突っ込まれた後も「熱かったら熱いって言ってね」と言いながら、髪との距離はほとんど変わらず。火を恐れる動物ばりに、温風を子どもにかけることを恐れすぎている。大丈夫。そんなんじゃ火傷しない。

とにかく配慮に溢れまくった夏の優しい性格が髪を扱う2つの場面で見えました。

そして、弥生の優しさも垣間見えました。1話でスーパーのコロッケを夏が「おいしい」と褒めた時に、弥生が「別にコロッケなんか作れないですけど?」と言っていましたが、今回弥生がコロッケを作っていましたね。夏と海に食べさせるための練習でしょうか?

重い議題がテーマですが、こうやって登場人物どの人も、端々に愛と優しさが溢れるから安心して見ることができるのでしょう。

©フジテレビ

次回は夏のお泊まり本番です。海のどんなことを知って、二人がどう距離が縮まっていくのか、楽しみです。

(やまとなでし子)

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