「片思い」と「片想い」の違いは? 使い分けを例文つきで解説
「片思い」と「片想い」、どちらもよく使われる漢字ですが、意味に違いはあるのでしょうか? この記事では「思う」と「想う」の漢字の成り立ちから、意味の違いや使い方について例文つきで解説します。
「かたおもい」には、「片思い」と「片想い」の2つの漢字が用いられます。
どちらもよく目にする表記ですが、この2つにはそれぞれにどのような違いがあるのでしょうか。
今回は「片思い」と「片想い」の違いについて、漢字の成り立ちや使い方、意味の違いを解説します。
「思い」と「想い」、それぞれに適したシーンや例文も紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
「片思い」と「片想い」の違い
「片思い」「片想い」の違いについて、それぞれの意味と使い方の観点から解説します。
意味の違いは「頭でおもう」か「心でおもう」か
まずは「思」と「想」、それぞれの漢字の成り立ちをもとに、「片思い」と「片想い」の意味を解説します。
「片思い」は「頭でおもう」こと
「思」という漢字は、既存の漢字である「田」と「心」を組み合わせてできた漢字です。
「思」の「田」の部分は、人間の頭を表しています。「心」の部分は、「こころ(=感情の働きや考え)」を意味する漢字として、心臓の形から成り立っています。
これらを組み合わせた「思」は、「『おもう』ことが頭で生じる」という意味であるとされています。
そのため、「片思い」は「頭で好きな人のことを考える」といった意味合いになると考えられます。
「片想い」は「心に浮かべる」こと
「想」の「相」は「木」と「目」から成り、「対象である木を見る」ことを表しています。
「心」は先ほど述べたように、心臓の形から、「こころ(=感情の働きや考え)」を意味する漢字として成り立ちました。
これらを組み合わせた「想」は、「対象となるものの姿を心で見る(=思い浮かべる)」ことを意味しています。
このことから、「片想い」は「好きな人を心に浮かべる」という意味であると考えられます。
「片思い」と「片想い」の使い方の違い
「片思い」は広辞苑にも記載されている表現です。しかし「片想い」は広辞苑やほかの辞書に記載されていない表現です。
そのため、「片想い」は公的な表現ではないといえます。公的な表現が求められる公文書やビジネス文書では、「片思い」を使う方が良いでしょう。
一方、表記に縛りがないプライベートな手紙や歌詞、小説などでは、「片想い」を使うことで相手を思う微妙なニュアンスを表すこともできます。
「思い」と「想い」の使い分け(例文つき)
ここでは「片思い」と「片想い」の使い分けをイメージしやすいよう、「思い」と「想い」をどのように使い分けるのか、例文を用いて紹介します。
「あの子のことが好きだと思う」
「あの子のことが好きだと思う」という時、「自分はあの子が好きだ」と頭で判断しています。そのため、「思う」という漢字を使うのが適しているといえます。
「好きなあの子のことを想う」
この場合は、「あの子」のことを頭で論理的に考えるというよりも、対象である「あの子」のことを心に浮かべているニュアンスが強いといえます。
そのため、この場合は「想う」を使うのが適していると考えられます。
「大好きな人に片想いしている」
「大好きな人に片想いしている」というように自分で相手に対する恋心を語る時は、対象である好きな人について頭を使って考えるというよりも、その人の姿を心にイメージしている状態であることが多いのではないでしょうか。
特にプライベートの場面でこのような気持ちを表現したい時は、「想う」を使うとニュアンスが伝わりやすいといえます。
「おもう」の漢字には「惟・念・憶・慮」もある
ここでは番外編として、「思う」「想う」以外の「おもう」という漢字を紹介します。
「おもう」の漢字には、「思」「想」以外に「惟」「念」「憶」「慮」があります。それぞれの意味は以下の通りです。
惟:ある一点について考える。よく考える。
念:願う。
憶:さまざまなことに思いをはせる。
慮:思いをめぐらせる。はからい。
「おもう」という言葉には、多くの複雑なニュアンスがあります。そのため、このような多様な漢字が生まれたのかもしれません。
「片思い」と「片想い」の使い分けをマスターしよう
今回は「片思い」と「片想い」の違いについて紹介しました。
「思う」と「想う」には、「頭でおもう」か「心に浮かべる」かの微妙な違いがあることが分かりました。
基本的には常用漢字である「片思い」で問題ありませんが、特別な気持ちのニュアンスを表したい時は、今回紹介した意味の違いを意識して使い分けてみてください。
(#Lily_magazin)
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