お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

【時候の挨拶】10月に使える挨拶言葉は? 書き方や文例を紹介

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

仕事で案内状などの文面を作成する時、プライベートでかしこまった手紙を書く時など、どう書き始めたらいいか悩みませんか? そこで便利なのが「時候の挨拶」。今回はライティングコーチの前田めぐるさんに、10月の時候の挨拶を教えてもらいました。

紅葉狩りやきのこ狩り、栗拾い、銀杏拾い……秋は、楽しい行楽シーズンでもあるとともに、自然の艶やかさと移ろいを実感する美しい季節です。

夏の疲れを9月で癒やし、いよいよ仕事もプライベートも楽しみたい10月。

ごぶさたしている方へのご機嫌伺いはもとより、新たな出会いのチャンスを得るために、手紙の力を借りるのも良いかもしれませんね。

時候の挨拶とは?

時候の挨拶とは、季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書く言葉や文章を指します。

「紅葉の候」のように、「熟語などの一語」+「候」という形もあれば、「秋風爽やかな好季節」のように、文として書く形もあります。

ビジネスシーンやプライベートでは、書面や手紙での連絡、改まったメールの冒頭部分において使われます。

10月の「時候の挨拶」

10月の手紙に使える時候の挨拶を紹介します。

「○○の候(頃・節・季節)」の他に「〜のみぎり」という言葉もあります。「みぎり」とは、「時、折、時節」という意味です。

「清涼(せいりょう)の候」白露から寒露(2021年の寒露は10月8日)まで

「清秋(せいしゅう)の候」9、10月のスッキリした空が広がる頃(長雨の時期には使わない)

「秋天(しゅうてん)の候」10月上旬

「秋冷(しゅうれい)の候」10月上旬

「仲秋(ちゅうしゅう)の候」白露(2021年の白露は9月7日)から寒露(2021年の寒露は10月8日)頃まで

「清涼(せいりょう)の候」白露から寒露まで

「菊香(きっこう)の候」10月全般

「紅葉の候」10-11月の紅葉の時期

「錦秋(きんしゅう)の候」10-11月の紅葉の時期

「爽秋(そうしゅう)の候」10月全般。爽やかさを通り越して肌寒くなった頃には使わない

「秋晴の候」白露から霜降(そうこう。2021年の霜降は10月23日)の前日まで。澄み渡るような秋晴れの日が続く時期

「初霜の候」霜降の頃から立冬(2021年の立冬は11月7日)の前日まで

上記の時期は、あくまで目安です。

「白露」と「寒露」は、1年を24に分けた「二十四節気(にじゅうしせっき)」の言葉です。「白露」とは草木に降りた朝露が白く輝く頃のこと、「寒露」とは朝夕の冷え込みが増し、露が冷たくなる頃のことを表します。

また、紅葉の見頃は、その年や地域によっても異なります。文面で「紅葉」や「錦秋」などの言葉を使う際には、例年9月末頃に見頃予想が報道されるので、チェックしましょう。

例文

秋気澄む頃、皆さまお健やかにお過ごしのことと存じます。

秋晴れの爽やかな日が続いております。いかがお過ごしでしょうか?

秋深く、カーディガンなど羽織るものが欲しくなる頃です。

○○山が日に日に秋の色に染まる頃、日足も短くなってまいりました。

・このところめっきり冷え込む日が増えてきました。

10月の「結びの挨拶」(例文付き)

続いては、10月にふさわしい結びの挨拶を紹介します。

「結びの挨拶」とは、本文で用件などを述べた後、結語(「敬白」「敬具」「かしこ」など)の前に添えるものです。

「実りの秋、○○さまのご健康とご活躍を願っております」のように、相手の健康や繁栄を願ったり、「○○さまによろしくお伝えください」などのように、伝言を依頼したりする役割があります。

例文

秋冷募るこの頃、お大事にお過ごしください。

味覚の秋、おいしいものをたくさんいただいて、充実した日々を過ごしたいものですね。

秋もたけなわ。紅葉シーズンになったら、ぜひお出かけください。

天候不順の折から、ご壮健にてお過ごしくださいませ。

10月の時候の挨拶「シーン別の例文」

時候の挨拶を組み入れた例文を、ポイントともに以下に紹介します。

今回は、新規営業における面談の依頼状とお礼状の例文です。

新規営業で面談を申し込む依頼状

面識のない相手に送る面談の依頼状では、相手にとって魅力的な情報だと感じてもらう必要があります。

自社の自慢や都合を押しつけるのでなく、相手目線で有益な情報であることを伝えましょう。

例文

拝啓 錦秋の候、貴社におかれましては益々ご隆昌の段お慶び申し上げます。

私は、株式会社○○の第一営業部に所属しております○○と申します。突然お手紙差し上げる失礼をお許しください。

昨今、○○業界でも非接触・非対面がキーワードとなり、新製品やサービスにおいて注目を集めております。(←業界の背景などを簡潔に記す)

弊社におきましても、先般開発したアプリ○○が、現在大変ご好評をいただいております。

ホームページで拝見したところ、貴社の事業とも親和性が高いのではと感じ、ご案内申し上げた次第です。資料を同封しておりますので、ご覧いただけましたら幸甚に存じます。

また、もしご面談の機会をいただくことがかないましたら、ご不明の点やご検討事項などについて直接ご説明させていただけましたら幸甚に存じます。

追ってご連絡を差し上げますので、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

敬 具

新規営業での面談におけるお礼状

新規開拓営業で面会してもらった相手に送るお礼状です。

初対面の相手の印象は、日を追うごとに薄れるもの。訪問した日か翌日までに送ると、印象新たなうちに読んでもらえます。

当日のお礼状では、時候の挨拶やご機嫌伺いを省き、すぐにお礼のメッセージから始めてもかまいません。長々と書くよりも、シンプルで良い印象を持ってもらえるでしょう。

例文

拝啓 本日はご多忙にも関わらず、貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。○○様とのご縁に恵まれ、心より感謝申し上げます。

早速ですが、ご質問いただいた件について、詳しい追加資料を同封しております。ご覧いただけましたら幸いです。

どうぞ、今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

略儀ながら、書中にてお礼とご送付まで申し上げます。

敬 具

時候の挨拶をビジネスレターで使う場合の書き方と注意点

最後に、基本的な手紙の形式と注意点を紹介します。

手紙の形式

手紙の形式に必ずしも決まりはありません。個性的な手紙が喜ばれることも多いものです。

ただし、面と向かって会う時とは違い、特にビジネスシーンでは失礼にならないようにと考えることが多いため、慣習的な順序に沿った手紙の形式があります。

大きく分けると「前文・本文・末文・後付け・副文」の順です。

「前文」:頭語

「頭語」とは手紙の冒頭に用いる言葉で、後述する「結語」と対応するものを用います。

頭語には、次のようなものがあります。

【一般的な頭語】
拝啓・拝呈・啓上・啓白・呈上・拝進

【特に丁重な頭語】
謹啓・粛啓・恭啓・謹呈・敬呈

【返信する場合の頭語】
拝復・復啓・敬復・拝披

【返信が来ないうち再送する場合の頭語】
再啓・再呈・追啓・再白・再陳

【急ぎの場合の頭語】
急啓・急呈・急白・急陳・火急

【時候の挨拶を省略する場合の頭語】
前略・略啓・略陳・草啓・冠省・前省・略省・寸啓

「前文」:時候や安否の挨拶

頭語の後に1文字分空けて、前段で紹介したような「時候の挨拶」を書きます。

事務的な文章では時候の挨拶を省き、「時下ますますご清栄のこことお慶び申し上げます」などと書くこともできます。

安否の挨拶は必須ではありませんが、書く場合には、時候の挨拶の後に続けます。

まず相手の安否に触れてから、次に自分の安否や近況について「私どもは元気に過ごしております」などと述べます。

また病気見舞いや相手側に不幸があった時には、自分側の安否や近況は述べないようにします。

「本文」:起辞

「前文」である時候の挨拶の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

起辞とは、書き出しから用件に移る際の接続詞で、「さて・ところで・早速ながら・このたびは・今般」などがあります。

返信の際には「ついては・つきましては」などを使います。

「本文」:用件

起辞に続いて、用件を書きます。

移転・転任・結婚・転職・退任・お礼など、さまざまな用件があります。気配りをしつつも、誤解や不明のことが生じないよう、具体的に書きましょう。

「末文」:結びの挨拶

「本文」の用件の後に、改行をし、1文字下げて書きます。

基本的には相手の健康や繁栄を願う言葉を書きます。さらに、伝言を添える場合もあります。

「末文」:結語

結びの挨拶と同じ行の最下部か、改行した次行の下方へ配置します。

「頭語」と対応させる言葉を用います。具体的には、次のようなものがあります。

【一般的な結語・返信や再送する場合の結語】
敬具・拝具・拝白・敬白・拝答

【特に丁重な結語】
敬白・謹白・謹具・再拝・謹言・頓首

【急ぎの場合・時候の挨拶を省略した場合の結語】
早々・怱々・不一・不二・不備・不尽

「後付け」:日付

「末文」の後に改行し、2~3字下げて年月日を書きます。

「後付け」:署名

日付の次行の下方に、差出人名を(自筆で)書きます。

「後付け」:宛名・敬称

署名の次行の上方に、相手の氏名を書き、「様」「先生」などの敬称を添えます。

宛名が連名の際は、敬称はそれぞれに付けます。なお、「御中」は会社や団体に用います。

「副文」

副文とは、書き漏れたことや付け加えたいことを短く添える文章のこと。「追伸・追白・尚々」などと書き出します。

ただし、副文には「重ねて申し上げる」というニュアンスがあるため、お悔やみ状や目上の人への手紙では使用しないのがマナーです。

時候の挨拶についての注意点

お詫び状や見舞状など、急な手紙では頭語や時候の挨拶を省き、以下のようにすぐ本文に入ります。

お詫び状(例文)

・先般はご迷惑をお掛けし、大変申し訳なく思っております。

災害の見舞い状(例文)

・このたびの台風○○号による浸水、被害が大きく心配しております。状況はいかがでしょうか。

病気の見舞状(例文)

*・このたびはご入院されたとのこと、驚いております*。

病気見舞いでは「たびたび」「四」などの忌み言葉に気を付けましょう。

また、長期の入院で文通のようにやりとりしている手紙では、季節の言葉も入れて良いでしょう。

五感で捉える「変化の季節」

秋。緑から黄、橙へと変化する色。どこからともなく聞こえる虫の音。サンマを焼く匂いや、爽やかなユズの香り。

暑さから寒さへと移ろう季節に包まれて、私たちの五感はさまざまな情景を捉えます。

そんな豊かな変化を言葉に変えて、秋の手紙に綴ってみてはいかがでしょう。年賀状や暑中見舞いなど定番のタイミング以外で、ふっと届く手紙は思いのほかインパクトがあります。

変化はチャンス、と転じるかもしれません。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

SHARE