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ビジネスで「差し支えなければ」はどう使う? 意味や使い方・言い換え表現を解説

前田めぐる(ライティングコーチ・文章術講師)

「差し支えなければ」という言葉。耳にしたことはあるけれど、あまり使ったことがないという方も多いのでは? 実はこのフレーズ、知っておくとビジネスシーンでも重宝する言葉です。ライティングコーチの前田めぐるさんに、「差し支えなければ」の意味や使い方、例文を教えてもらいました。

「差し支えなければ、お願いできますか?」は、仕事でもプライベートでも、よく使う言い回しです。

遠慮がちながらも、お願いしたいことをしっかり伝えたい時に便利な表現ですが、言われた相手にはどのように受け止められるものでしょうか?

誤解や勘違いが起こらないように、意味や使い方、言い換えの表現などをマスターしましょう。

「差し支えなければ」の意味

「差し支え」について調べてみましょう。

「差し支え」の「支え」は、「ささえ」ではなく「つかえ」と読みます。

「排水管に小枝が支えて水がうまく流れない」という時の「支える(つかえる)」ですね。

「支え」という単語だけでも、何かの障害になることを意味します。

さしつかえ【差し支え】
さしつかえること。都合の悪い事情。さわり。さまたげ。支障。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)

つまり、「差し支え」とは、「何が妨げとなるようなことがあって、物事が前に進まなかったり、滞ったりするような障害や都合の悪いこと」だと理解できます。

「差し支えなければ」の「なければ」は、形容詞「ない」の仮定形に接続助詞「ば」の付いたもので、「もし、それがないなら」と仮定条件を示す言葉です。

以上のことから、「差し支え」に「なければ」を加えた「差し支えなければ」とは、「もしも妨げとなるような都合の悪い事情がなければ」という仮定を示す言葉だと捉えることができます。

さらにクッション言葉として使われた時は、後に続く依頼の表現をやわらげる役目を果たします。

「差し支えなければ」を使う上で知っておきたいポイント

使い方を紹介する前に、まずは「差し支えなければ」を使う上で知っておきたいポイントを紹介します。

断られても構わない依頼をする時に使うこと

前段で述べた通り、「差し支えなければ」は、「もし、妨げとなるような都合の悪い事情がなければ」という仮定の条件を示す意味であると分かりました。

私たちは普段「差し支えなければ」を、「差し支えなければ、○○をお願いできますか?」というように、何かを依頼する時のクッション言葉として使います。

この時、依頼する側は「お願いしたい気持ちはあるけれど、無理なら断っても問題がありませんよ。あなたの都合を最優先してくださいね」というニュアンスを伝えているわけですね。

そうすることで、依頼者としては頼みごとにありがちな「押し付けがましく思われないだろうか」という不安を払拭でき、頼みやすくなります。

一方、相手としても、前提付きのお願いであるため、もし差し支えがあって断る場合でも、負担や決まり悪さを軽減できます。

お願いする側にはお願いしやすく、お願いされた側にも万一無理な場合に断りやすくする「差し支えなければ」という言葉は、相手への配慮を大切にしたい場面で、非常に重宝する表現だといえるでしょう。

断られると困るような場合には使わないようにする

依頼する側・される側両方のハードルを下げる「差し支えなければ」という表現は、その後に続く依頼が断られても問題がない時に使います。

つまり、断られては困ってしまう場合には使わない方がいいということですね。

多少の無理を通したい場合には「ご無理を承知でお尋ねするのですが」など、別のクッション言葉を使いましょう。

「差し支えなければ」は目上の人やメールでも使える?

「差し支えなければ」は目上の人や、口頭以外のメールなどでも使える表現なのでしょうか?

それぞれについて解説します。

社外や目上の人に対しても使用できる

「差し支えなければ」という言葉自体は敬語ではありませんが、相手の都合を最優先する表現なので、社内外の目上の人にもそのまま使うことができます。

ただし、その後に続く文章については、「差し支えなければ、お名前を伺ってよろしいですか?」のように、「(お名前)を聞く→伺う」、「いいですか→よろしいですか」など、敬語に変換する必要があります。

メールや手紙でも使える

「差し支えなければ」という表現には、相手の都合を最優先する配慮の気持ちが含まれているので、顔が見えないツールでも、相手に無用な負担を強いることがありません。

口頭で直接伝える際に使えるのはもちろんですが、ビジネスメールやSNSでのメッセージ、手紙など書き言葉でも役に立つ表現です。

「差し支えなければ」はどんな時に使える?(例文付き)

「差し支えなければ」は、断られても構わない前提で使う言い回しなので、相手を悩ませるほどではないような依頼をする時に使います。

例えば、時間のある時に話す時間を都合してもらいたい、相手の得意なことを披露してもらいたい、相手のことを紹介したい、名前や住所などを個人情報が必要なので教えてほしいなどの場面で使います。

実際に、場面別での例文を紹介します。

時間を都合してもらいたい時

例文

・この後のご予定に差し支えなければ、会を終えてから5分だけお時間を頂戴できませんか?

相手が知っていることを教えてもらいたい時

例文

差し支えなければ、先ほどのお話をもう少し詳しくお聞かせ願えませんか?

名前など個人情報を教えてほしい時

例文

差し支えなければ、お客様のお名前と年齢、ご住所をお教えいただけますか?

相手のために良かれと思っていることをしたいと申し出る時

例文

差し支えなければ、本日ご出席の皆さまにあなたをご紹介したいのですがよろしいですか?

「差し支えなければ」の言い換え表現

ビジネスシーンでは、「差し支えなければ」のように配慮を要する場面が多々あります。

同じ相手に続けて何度も「差し支えなければ」と繰り返せば、「またか」と受け止められることがあるかもしれません。

次に挙げる言葉も取り入れながら工夫して、円満なコミュニケーションを目指したいですね。

「ご都合がよろしければ」

「差し支えなければ」同様、相手の都合を尊重した言い回しです。

「都合」という直接的な言葉を使っているので、相手にとっても「差し支えなければ」よりさらに断りやすい打診の仕方です。

敬語表現なので、お客様や目上の人に対して使います。

同僚や目下の人には「都合がよかったら」と言い換えられます。

例文

・もしご都合がよろしければ、この後少しお茶でもご一緒しませんか?

「駄目元でお尋ねしますが」

「駄目で元元」の略。カタカナで「ダメモトで」という書き方もよく見かけます。

駄目で元元のつもりで尋ねていると感じた相手は、思い悩まず気軽に返事をしてくれるでしょう。

略語なので、公式な文書にはふさわしいとはいえませんが、知っている相手に対してメールなどで率直に尋ねたい場合に向いています。

例文

・来週の水曜日にそちらへ出張することになりました。駄目元でお尋ねしますが、少しお会いできませんか?

「ご面倒でなければ」

「差し支えなければ」は広い意味での障害を意味していますが、この場合は「面倒かどうか」と「手間や面倒」に焦点を当てています。

ちなみに無理な場合の答え方としては、「面倒ではありませんが、少々時間が厳しいので」など別の理由を添えましょう。

例文

ご面倒でなければ、本日弊社にお立ち寄りいただけませんか?

「差し支えなければ」と打診された時の答え方は?

このように配慮のある打診に対しては、答える側も「いいですよ」「できません」「無理です」など無造作な返事はふさわしくありません。

OKなら「喜んで」「もちろんです」NGなら「あいにく先約がありまして」「残念ですが」などと答えましょう。

ビジネスシーンでも使いやすい「差し支えなければ」

今回は「差し支えなければ」というクッション言葉について解説しました。

お願いする側にはお願いしやすく、お願いされた側にも無理な場合に断りやすくする「差し支えなければ」という言葉。

何かを依頼する、されることが多いビジネスシーンでは、重宝する表現だといえるでしょう。

意味や使い方を押さえて、ぜひ実践してみてくださいね。

(前田めぐる)

※画像はイメージです

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