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デートDVの定義と種類とは? 弁護士が教える原因と対策

刈谷龍太(弁護士)

彼氏が怒鳴ったり、手をあげたり……。時折見せる一面に不安を感じながらも、誰にも相談できないという状況に陥ってはいませんか?

また、直接的な暴力ではないものの、恋人から蔑む言葉を投げかけられたり、態度を取られたりして傷ついている……。

もしかしたら、それは「デートDV」かもしれません。

あなたはデートDVという言葉を知っていますか? 聞いたことはあるけれど、どんなことが当てはまるのか、どう対処したらいいか、くわしくわからないという女性も少なくないはずです。

そこで今回は、デートDVの実態と対処法について、弁護士の視点から解説していきます。

デートDVの定義

「デートDVとは何か」と聞かれて、あなたは説明することができますか? ここでは、知っているようで知らないデートDVの定義について解説していきます。

デートDVとは「恋人間で起きるあらゆる暴力」

デートDVとは、法律用語ではありませんが「交際している恋人間で起きる暴力」のことを指します。日本では配偶者間の暴力をDV(ドメスティック・バイオレンス)と呼んでいましたが、近年では配偶者間だけでなく、恋人間での(身体的・精神的)暴力も問題となっており、これが「デートDV」と呼ばれるようになりました。

言葉の響きから、夫婦間のDVより深刻ではないような印象を持っている方もいますが、デートDVも、特に若者の間では深刻な問題となっています。

デートDVの種類って?

DVは、肉体的な暴力だけにとどまらず、精神的な暴力や過剰な束縛などもそれに該当します。デートDVは、以下の5つに種類分けされます。

(1)身体的暴力

デートDVの種類:身体的暴力

相手の身体を叩く、殴る、蹴るなどはもちろんですが、体を押さえつける、髪の毛をつかむ、さらには当たらないにしても物を投げつける、なども身体的暴力に分類されます。

多くの人がDVと聞いて連想するであろう、典型的なひとつです。

(2)精神的暴力

デートDVの種類:精神的暴力

相手をバカにしたり、大声で怒鳴ったりすることは、精神的暴力です。

「ブス・デブ」などと容姿を否定するほか、「そんなこともわからないのか」「お前は頭が悪い」などと決めつけ、不機嫌になる理由をパートナーのせいにするのもこれに当たります。

また、無視をする、あるいは「別れたら死んでやる」「お前の秘密をバラしてやる」などと脅すことも、精神的暴力といえます。

(3)社会的制限

デートDVの種類:社会的制裁

社会的制限というと、監禁などをイメージしてしまいそうですが、過度な束縛もこれに当たります。

メールや電話を勝手にチェックする、「○○とは遊ぶな」などと友人との付き合いを制限する、服装や行き先などを指示して好きに行動させない、「電話にはどんなときでも必ず出る」「返信は1分以内」などのルールを強要することなども社会的制限です。

(4)性的暴力

たとえ恋人間であっても、無理やり性行為を行うなどは性的暴力になります。

ほかにも、避妊に協力しない、性行為に応じないと不機嫌になる、相手にわいせつな雑誌や動画などを無理やり見せるといった行為がこれに当たります。

(5)経済的暴力

デートDVの種類:経済的暴力

夫婦間の経済的暴力は、主に「生活費を渡さない」というのが典型ですが、恋人間ではデート費用を毎回負担させる、高価なプレゼントを買わせる、などが当てはまります。

お金を借りて返さなかったり、バイトをさせてお金を稼がせたり、または逆にバイトを辞めさせ自由にできるお金を持たせない、などが該当します。

加害者がデートDVをしてしまう心理や原因

そもそも、こういった肉体的・精神的な暴力を交際相手に振るってしまうのには、どんな理由が潜んでいるのでしょうか?

加害者に見られる心理状態は、主に以下の3パターンに分けられます。

(1)愛情表現だと勘違いしている

相手を束縛するタイプに多いのは、「これが愛情表現である」と勘違いしている人です。

付き合っているからには連絡はすぐに取るべき、自分以外と遊ばないのが当然、などという思考で、軽い束縛から過剰な束縛、そして暴力へと発展していくケースもあります。

(2)支配欲が強い

暴力などで相手を支配し従わせることで、自分の気持ちを満たしているタイプです。

一概にはいえませんが、社会との接点が少ない人がそのような傾向になるように感じます。

「相手を繋ぎ止めたい」と思ったときに、暴力などで従わせないと安心できないのではないでしょうか。

(3)暴力、束縛を軽く考えている

たとえば、ストーカーを行う人の大半が自分のことをストーカーであると思っていません。毎日相手を観察したり、付け回したりするのも、「好きなら普通のこと」と考えているのです。

このような思考で「ちょっと小突いただけだからセーフ」「メールを毎日100通送るのなんて彼女なら当たり前」と、自分の暴力や束縛を軽いものだと考えており、場合によっては罪に問われる可能性もある重大な行為という自覚がないのです。

実際のデートDV事例

ここで、デートDVについて理解を深めていただくため、事例を2つご紹介します。※実際の事例を一部変更しています

Aさんの場合「経済的に甘えてる彼」

年下の彼と付き合っていたAさん。当初、Aさんは彼の甘えん坊なところが可愛いと思っていましたが、次第に彼は、経済的にもAさんに甘えてくるようになっていきました。

デートDV事例

最初は、「今持ち合わせがないんだ」などと言う彼に対し、時折食事をごちそうしてあげる程度でした。しかし、気づけばデート代は全額Aさん持ち、プレゼントも高価なブランド品を指定され、断ると機嫌が悪くなる始末。

年下とはいえ彼も社会人として働いているはずなのに、Aさんは自分の生活費を切り詰めてまでデート代やプレゼント代を捻出していました。

ある日、Aさんの疲れた様子を心配した友人から、「それはデートDVだ」と指摘を受け、彼と話し合うことになりました。数回の話し合いを重ね、Aさんに甘えすぎていたと反省した彼とやり直すことになりました。

Bさんの場合「『思い込み暴力』を振るう彼」

Bさんは美人でモテるタイプでしたが、恋愛には奥手な女性でした。そんなBさんに猛烈にアプローチをしてくれた彼。2人は交際をスタートさせましたが、ほどなくして彼はBさんに対して過剰な暴力を振るうようになったのです。

デートDV事例

「ほかの男と話していた」「返信が遅い」などという些細な理由で、殴る蹴るの暴力、ときには髪を燃やされることもありました。「彼が怒っているのは私が悪いからだ」と思い込み暴力に耐えていたBさん。ですが、マンションの階段ですれちがった管理人に会釈をしたのを見た彼に、「色目を使っただろ」と突き落され、入院するに至ってしまったのです。

彼は警察に逮捕され、ようやく異常さに気づいたBさんは、弁護士を入れ「もう二度と接触しない」などという約束を取りつけてもらい、別れることができました。

デートDVを未然に防ぐ方法はある?

デートDVをするリスクの高い男性の見極め方、また回避の方法を知っておくことは、自分の身を守ることに繋がります。

何よりも被害に遭わないことが一番。

これらの知識や判断基準を自身の中に持っておくといいでしょう。

デートDV予防チェックリスト

以下の項目は、デートDVをする男性に共通して見られるポイントです。あなたの彼氏にこんな傾向がないか、参考にしてみてください。

極端な寂しがり屋

今何をしているのかよく確認してくる

気分の浮き沈みが激しい

機嫌が悪いと無視をする

服や髪形などを指定してくる

ケンカのときに机や壁を殴ることがある

会社や仕事内容について口出ししてくる

誰に対しても批判的である

デートDV被害を回避するには?

最初はそんな人ではなかった、ということも多いので、事前に回避するのは難しいかもしれません。とはいえ、いくつかの見極めポイントはあります。

たとえば、お金の貸し借りでは、最初は少額を借りてすぐに返し、どんどん高額となって返済しなくなる。暴力も、最初は肩を押す程度だったのが平手になり、ゲンコツなどとエスカレートしていくといったものです。

大切なのは、「少しでもおかしい」と感じたらまわりに相談し、彼と距離を取ることです。

デートDV被害に遭ってしまったときの対処法

もしも自分がデートDV被害に遭ってしまったら……。あなたは対処の仕方を知っていますか? 万が一、デートDVの被害に遭ってしまった場合は以下の対処をしてください。

(1)相談窓口へ連絡する

デートDVに関する相談を受ける窓口は、各地にあります。都道府県の自治体に相談センターが設置されている場合もありますし、そういった相談を受け付けているNPO法人なども複数存在します。

友人や家族には相談しづらい、本当にデートDVなのかどうかわからない、などさまざまな悩みがあると思いますが、まずは相談して心を軽くするのが大切だと思います。

(2)きっぱりと別れる

デートDVの被害に遭っていてつらいと感じているのであれば、まずはきっぱり彼と別れることをおすすめします。

ただし、こういったタイプの相手は、別れ話を持ち出すと逆上する可能性もありますので注意してください。何かあってからでは遅いので、事前に共通の友人や専門機関に相談しておくといいでしょう。

(3)警察に相談する

「相手方に別れ話をしたら逆上し、恐喝・脅迫された」「肉体的暴力を受けている」場合などには、刑法の構成要件に該当する可能性が高いといえます。

(2)のようにすっぱり付き合いをやめられるのが理想ですが、こじれる可能性も高いです。したがって、身の危険を感じたときは迷わず相談しましょう。

(4)弁護士に相談する

警察に相談したけど被害届を受理されず、対応してもらえないケースはよくあります。特に証拠(医師の診断書、相手方の言動の動画・録音等)がない場合には、警察を動かすことがより難しくなるでしょう。

そのような場合(あるいは警察に相談する前であっても)、弁護士に相談し、代理人として間に入ってもらうことで、DV被害が解決する可能性は高いです。

弁護士があなたの代わりに相手方と連絡をとり、あなたに連絡・接触しないよう警告し、ブロックします。また、弁護士が警察へ同伴することで、警察が動いてくれるケースも多くあります。

無料で相談をしている法律事務所もあります。デートDV被害を受け、別れたいが別れられない、または怖くてできないという方は、まず弁護士に相談することも有効でしょう。

デートDVからあなたを守ってくれる法律

デートDVからあなたを守る法律もいくつか存在します。もしものときに備えて、ぜひ覚えておいてください。

DV防止法(配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律)

この法律は、主に配偶者から暴力を受けた被害者を保護するために制定されたものですが、平成26年から同居している恋人間のDVにも適用されるようになりました。

被害者やその家族への接触禁止命令や、住居からの退去命令などを出してもらうことができます。ただし、同居していない恋人間のDVには適用されません。

ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)

別れたあと、彼がストーカー化してしまった場合は、ストーカー規制法によって処罰されます。ストーカー行為とは、同一の相手に対し「つきまとい等」の行為を繰り返し行うこと。この「つきまとい等」を、法律では次の8つのうちにあてはまるもの、としています。

(1)つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる、住居等の見張りや押し掛け
(2)行動を監視していると思わせるような内容を告知したり、相手が知り得る状態に置く
(3)面会・交際等義務のないことを行うよう要求
(4)著しく下品または乱暴な言動を行う
(5)無言電話、拒否されたのに連続して行う電話・FAX・電子メール
(6)汚物や動物の死体などの嫌悪感や不快感を抱かせるような物を送付したり相手が知り得る状態に置く
(7)名誉を害するような内容の告知や相手が知り得る状態に置く
(8)性的羞恥心を害する内容の告知や文書・図画などを送付したり、知り得る状態に置く

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、警察署長等は、加害者に対して「ストーカー行為をやめなさい」と警告を出すこともできます。また、この警告に従わずストーカー行為を繰り返すと「禁止命令」を出すことができ、さらにこれに従わない場合は2年以下の懲役又は200万円以下の罰金とさらに重い処罰を受けることになります。

警視庁のHPでは、ストーカー行為をやめるよう警察署長等から警告を出されたら、ほとんどのものがその後ストーカー行為をやめているとしています。そのほかにも、防犯ブザーの貸し出しなども行っておりますので、つきまとい等を受けた場合は、すぐに最寄りの警察署に相談してください。

その他の法律

肉体的な暴力は、もちろん法律で罰せられます。

肩を突き飛ばす、腕を強く引っ張るなどの行為は暴行罪(刑法208条)として2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料とされています。たとえば、投げたものが当たらなかったなど肉体的な接触がなかったとしても、暴行罪は成立するとされています。

また、暴行によって怪我を負わされてしまった場合、相手は傷害罪(刑法204条)として罰せられることになります。罪はさらに重くなり、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

「別れるのなら裸の写真をばらまいてやる」などと脅した場合は脅迫罪(刑法222条)として2年以下の懲役又は30万円以下の罰金となりますし、実際にそういった写真をばらまくとリベンジポルノ法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)で3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることになります。

さらに、恋人間であっても、合意のない性行為は強姦罪(刑法177条)が成立する可能性があります。彼女が拒否をしているのに暴力や脅迫によって性行為に及んだ場合には3年以上20年以下の懲役と重い刑罰が待っています。

デートDV対策を知っておこう

デートDVをする相手は「はじめはそんな風に見えなかった」というケースもめずらしくありません。だからこそ、デートDVのリスクが潜む場面や、その対処法について適切な知識を持っておきましょう。

自分の身を守るのは自分自身。万が一のとき、正しい知識はきっとあなたの身を守ってくるはずですよ。

(刈谷龍太/グラディアトル法律事務所)

※画像はイメージです

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