アサヒ飲料に直撃取材!飲料開発ってどう行われるの?「試作品数は30~40作る」「炭酸は糖度・酸度のバランスが重要」
日本は自販機大国で、どこへ行っても飲料の自販機があります。また、そこには毎年たくさんの新製品がお目見えします。さて、この飲料の新製品ですが、どのようにして開発されているのでしょうか?
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アサヒ飲料株式会社 マーケティング部 マーケティング第一グループ 炭酸チーム主任 大谷直也さんにお話を伺いました。
――大谷さんは御社でどんな飲料を手掛けていらっしゃいますか?
大谷主任 弊社では「三ツ矢サイダー」「ウィルキンソン」という二つの大きな炭酸飲料ブランドがありますが、この炭酸飲料のシリーズを手掛けています。直近では、つい2週間前に発売された『三ツ矢フルーツサイダー オレンジ』『三ツ矢フルーツサイダー アップル』を担当しています。
――年間にどのくらいの製品を開発するのですか?
大谷主任 そうですね、炭酸飲料だけで年間20種類以上の製品を開発、販売しています。
――製品の企画にはどのくらいの時間がかかりますか?
大谷主任 年間のブランド戦略をたてる時には、3カ月から4カ月ぐらいが企画に要する時間です。マーケティングチームで企画案を持ち寄り、徐々にブラッシュアップしていって開発段階に進みます。これを製品数分行います。
――では、実際の製品作りにどのくらいの時間がかかりますか?
大谷主任 商品によりますが、試作品を作り、試行錯誤を繰り返しまして、実際の製品になるまでにだいたい半年から8カ月ぐらいでしょうか。
――すると、先ほどの企画に要する時間、3-4カ月と合わせてちょうど1年ということになりますね。
大谷主任 そうですね。新製品の開発についてはそのようなスケジュールで仕事をしています。
試作品はいくつぐらい作る!?
――実際に企画段階で想定した味と、試作品ができたときの味が違っている、ということはありませんか?
大谷主任 それはよくあります(笑)。ただ、企画段階で想定した味が必ずお客さまに「おいしい」と言っていただけるかどうかは分かりません。ですから、あくまでも実作でどのようにお客さまに納得していただけるかを考えて試作を繰り返します。
――試作品はどのくらいの数作るのでしょうか?
大谷主任 「三ツ矢フルーツサイダー」の場合は少ない方なのですが、だいたい20ほど試作品を作りました。
――それで少ないのですか。通常はどのくらいの試作品数になるのですか?
大谷主任 そうですね……30-40ぐらいは作りますね。
――それは大変そうですね。もうどれがおいしいのか分からなくなりませんか?
大谷主任 試作品は多くの人数で試飲しますので(笑)。一人で飲んでいるとそうなるかもしれませんが。
成分は分析できても同じものは作れない!
――各飲料メーカーさんごとに固有の特徴があったりしますか?
大谷主任 三ツ矢サイダーは日本では最も歴史のある炭酸飲料で、今年でブランド生誕130周年です。たとえ他社さんで成分を分析しても、全く同じ味を作ることは難しいと思います。
それは自社内にあるフレーバーを作るノウハウが必要なためです。三ツ矢サイダーは果実などから集めたオリジナルの香りが特徴です。「似た味」は作れても同じにはできないのです。
どの炭酸飲料メーカーにもそのような「コアな技術」があって、それはどこも門外不出になっていると思います。お客さまにご支持いただいている弊社独自のフレーバーは、長い間に研究開発を蓄積してきた結果だと思います。
――なるほど。製品の成分分析だけでは同じ味は作れないのですね。炭酸飲料の味を作る上で難しい点とはどのようなことでしょうか。
大谷主任 炭酸飲料の場合、「糖酸比」といったりしますが、
・糖度
・酸度
この二つのバランスがとても重要です。例えば、レモンは、酸味がすごくあるのに生食できますね。あれは、糖度が高いからなんです。酸味だけ強いと人間の舌は「痛い」と感じてとても食べられません。
・糖度を高くして、酸度を低めると、単に甘くてベタベタした味になります。
逆に、
・糖度を低くして、酸度を高めると、今度は「痛い」ような味になります。
糖度と酸度をバランスよく保つと、甘くてもベタベタせず、すっきり、さっぱりした味の飲料になります。炭酸飲料の場合これがとても大事なのです。
これをお客さまが求めているだろうバランスにフィットさせるわけです。「三ツ矢フルーツサイダー」の場合にも、「おいしい果汁炭酸」を作ろうということでいろいろ頑張りました。
――成果はいかがですか?
大谷主任 お客さまに喜んでいただける製品になったと自負しております。
コンセプト作りが楽しい!
――炭酸飲料を開発する楽しさは何ですか?
大谷主任 個人的な感想ですが、コンセプトを作っているときが楽しいですね。「こういう飲み物は今まで誰も飲んだことがないだろう」とか「こういう味でこういう見せ方で」とか、まあ妄想に近いですが、その商品のコンセプト作りが楽しいと思います。
あとは、自分の開発担当した製品が日本中で販売され、たくさんのお客さまに飲んでいただけることですね。これは全ての商品開発に関わる人間の楽しみだとは思いますが。
――開発する上で困難な点とは何ですか?
大谷主任 「お客さまが本当はどう思っているか」が分からないことです。確かにアンケートなど、マーケティング調査を行いますが、残念なことに「本当の気持ち」はつかみづらいものなのです。
お客さまの気持ちを反映した商品になっているのかはいつも不安ですね。
――なるほど。他社の製品などは気になりますか?
大谷主任 そこはやっぱり気になります。新商品が入荷しやすい月曜日、火曜日にはコンビニさんをのぞいたりしますね(笑)。
――ありがとうございました。
いかがだったでしょうか。今回は飲料の中でも炭酸飲料に関してでしたが、商品開発にはやはりそれなりの時間がかかるものなのですね。試作品の数が40にも及ぶことがあるとは驚きではないでしょうか。
あなたが手に取る炭酸飲料も、多くの開発スタッフがかかわってできたものなのです。
⇒アサヒ飲料の公式サイト
http://www.asahiinryo.co.jp/
(高橋モータース@dcp)