※このコラムは『御曹司に恋はムズすぎる』11話までのネタバレを含んでいます。
■自信を失い、全てを捨てた昴
祖父である会長の入院や、社長のクーデター、親友の裏切りなど、あらゆる関係が一気になくなってしまった昴(永瀬廉)。
一連の出来事から自信を失った昴は、服天も退職することを決意し、恋人であるまどか(山下美月)にも別れを告げます。
「言葉だけじゃ伝わらないと思うから、ながーい時間をかけて俺はお前のそばからいなくならないってことを証明する」と、数話前では言っていたにも関わらず、恐ろしいほど短期間でまどかの前からいなくなった昴。
別れを告げられたまどかは日課であるお弁当を作る気力さえわきません。それを見た後輩リリー(中村里帆)は「さては天堂さんとうまくいってませんね? 分かります! あの人は服天の御曹司だから光り輝いていただけで、金なしニートじゃ100年の恋も一瞬で冷めます」と、しっかりめに昴をディスります。もちろんまどかの本心はそうではないのですが……。
しかし、昴とそこそこ絡みのあったリリーですら昴に対してこの評価。結局、周囲は昴を「服天の御曹司」としてしか見ておらず、その先の人間性といった魅力は一切見てくれていないことに物悲しさを感じます。
■自分の欲に蓋をして服天第一で動く成田
落ち込むまどかの様子を見た成田(小関裕太)は「今夜家に行ってもいい?」とまどかに声をかけます。
これだけ聞くと即セクハラで通報されそうなセリフですが、そうはならないのが成田の日頃の行いと人徳。
そしてこれは昴のいない間に、まどかにちょっかいをかけようという趣旨ではなく、昴を思っての行動だったのです。
成田は、まどかの家で作ったカレーを持って隣に住む昴の元に訪れ、元気づけようとします。そのカレーは天堂家の秘伝カレー。「もしかして食べたことあるんじゃ? と思って」と、実は血縁だった二人の共通点を元に、本音を伝えながら昴を奮い立たせようとします。
「同じ孫なのに会長に愛情を注がれ後継者として期待される君がずっと君が羨ましかった。だからなんとしてでも実力でその座を奪い取ろうと思っていたが、会社が東雲社長のものになった時思った。僕と君は同じ想いを持ってる」
そして昴が提出した退職届も上に掛け合い、止めていた成田。GJすぎます。
「創業者である会長と一番長く時を過ごし、想いを受け継いでいるのが君(昴)だと思う。だからもう一度考えてみて」と、自分の想いや欲に蓋をして、会長が作り上げてきた理想の服天を取り戻すことを第一に考えて行動する成田の姿勢に、服天への並々ならぬ想いを感じます。
昴の当て馬ポジションにも関わらず、これまで1つもダメなところがない。完璧すぎます。
結婚してください。
■新卒履歴書の志望動機のように志は眩い2人
住んでいた村が災害に遭い、避難生活中に物資として届いた服天の服の暖かさと柔らかさに生きる気力をもらったことから、「高機能なのに庶民でも手が届く価格」の服天の服をたくさんの子ども達に届けたい、という想いで服天を志望したまどか。
子どもの頃に馴染めなかったカナダ生活で服天ブームが起き、生まれも容姿も違うと思っていた人々が同じ服を着ていることに感動し、服天をよりグローバル化し、世界一のアパレルメーカーにしたいという想いで働く成田。
みんな新卒履歴書の志望動機欄の見本のような美しい志と、その眩しさに目がやられそうになります。
一方で「服天の服はダサい」と思い、着てこなかった昴はこの2人の強い想いに気持ちを改めたようです。
■昴だから、もう少し信じてみようと決めたまどか
昴を信じて交際を決めたはずが、秒で約束を反故にされたまどか。「やっぱり誰とも恋はできない。口では好きといっても結局みんないなくなる。もう誰も信じられない」と、恋に抱いていた不安をそのまま昴に喰らわされてしまいました。
一方で、昴を裏切ってしまった自分が許せず、高待遇を捨てて退職を決めた友也。その友也と偶然鉢合わせたまどかは、「昴ならきっと戻ってきます。昴ほど前向きで自信満々な人を見たことがないから、ここで諦めるなんて想像つかない」と友也に後押しされ、まどかももう少し昴を信じてみようと思いを改めます。
■スバルのネーミングセンスのなさで感動エピソード霞む事件
にしても、昴が友也とやってきたブランド名には痺れましたね。「スバルライジング」「スバルリボーン」「スバルフェニックス」。
ドラゴンボールのタイトルの後ろに付くアレみたいな、少年漫画の続編を思わせる、スバルの後に付く厨二病感あふれる名付けの数々に、友也を大切にしていた昴の友情エピソードが霞みかけました。
なぜ昴はファッションセンスはあるのにブランドネーミングセンスは皆無なのか。
ライジングで昇らなかったスバルブランドが次はリボーンで生まれ変わったものの爆死。からのフェニックスで不死鳥のように再度復活。のち無事死亡というストーリーも込められてそうなブランド名。もし次があったならスバルフォーエバーあたりでしょうか……。
■一度は爆死したスバルフェニックスと化した昴
昴も子どもの頃に着ていた服天の服。
それと同じものを幼い頃に愛用し、その後は自分の子どもに譲ることで、1着の服天の服を何十年と着続けてくれている人に昴は偶然出会います。
作られた服に詰まった機能や想いを受け止めて、実際に長年愛用してくれている人を目の当たりにし、「じいちゃんである会長がやりたかったこと」がしっかりと形になっていることに、尊敬の念を抱くと共に、自分も仕事への気持ちが奮い立たせられます。
昴はすぐさままどかの元に戻り、「服天で働く! じいちゃんの想いを守る! お前のそばから2度と離れない! だからもう一回俺を信じてほしい!」と仕事も恋ももう一度向かい合うことを宣言します。この姿こそまさにスバルリボーンでありスバルフェニックス!
昴を信じると決めたまどかも、「私ももう逃げません! ちゃんと伝えます! 大好きです!」と、はっきりと気持ちを伝え、互いの心が通じ合いました。
昴は最終回でどのような底力を見せてくれるのでしょうか。
「全てあなたの思うままになっていますよ」と眠る会長に語りかける東雲社長(筒井真理子)。一見会社を乗っ取るように見えた彼女ですが、これらは昴を焚き付けて後継者として成長させるためのシナリオだったのでしょうか?
次回明かされるであろう、東雲がまどかを捨てた本当の理由も気になるところです。
ラストを楽しみに待ちましょう。
(やまとなでし子)