■今の職場で昇進したい?
Q1. 今の職場で昇進したいですか?
はい:46.8%
いいえ:53.2%
昇進したい女性は全体の半分弱。これは多いのか少ないのか。人によって意見は分かれそうですが、個人的には、思ったより多い! と感じました。
というのも、前述したように日本は女性管理職の割合が低いから。その一因として、昇進を望まない女性の多さもあるのではと推測していたからです(ちなみに2021年の男女共同参画局の調査によると、諸外国の女性管理職の割合は概ね3割以上で、日本はわずか13.2%です※1)。
株式会社あしたのチームが今年3月に20~40代の会社員男女を対象に実施した調査では、「出世したい」女性は約32.3%で、最も多い20代でも35%でした(※2)。マイナビウーマンは働く女性向けのメディアで、回答者も働くことへの意識が高めである可能性が高いため、出世したい割合も高めとなったのかもしれません。
■昇進したい理由は?
Q2. 昇進したい理由に近いものをすべて選んでください。
所得を上げたいから:31.1%(回答数50)
成長実感を得たいから:11.8%(回答数19)
マネジメントに興味があるから:10.6%(回答数17)
責任ある仕事をしたいから:8.1%(回答数13)
より大きな仕事に関わりたいから:6.8%(回答数11)
マネージャーに適性があると思うから:5.6%(回答数9)
裁量の範囲を広げたいから:5.6%(回答数9)
自分のキャリプランに昇進が必須だから:5.6%(回答数9)
より高みを目指したいから:4.4%(回答数7)
昇進を目指すのは当たり前だから:3.7%(回答数6)
経営に関わりたいから:3.1%(回答数5)
社会的な名誉を得たいから:2.5%(回答数4)
その他:1.3%(回答数2)
昇進したい理由、ダントツ1位は【所得を上げたいから】。コメント欄には、生活の安定や将来を見据えた、堅実志向の言葉が多く並びました。
「給料が低いのでせめて生活に困らないだけ欲しいから」という回答には、やるせない気持ちに……。昇進でもしないと生活が成り立ちにくい、今の日本の問題点が浮き彫りになっていると感じました。
2位は【成長実感を得たいから】。「やはり、人間ですから、何か目標がないと……」というコメントには頷くばかりです。仕事熱心かどうかにかかわらず、目標がないとつまらなくなっていくのは、多くの人に当てはまることだと思います。
■昇進したくない理由は?
Q3.昇進したくない理由に近いものをすべて選んでください。
責任を負いたくないから:21.6%(回答数37)
昇進しても給与がそこまで上がらないから:18.7%(回答数32)
仕事よりプライベートを重視しているから:18.7%(回答数32)
昇進しても給与以外の見返りが少ないから:11.1%(回答数19)
マネージャーに向いていないと思うから:8.2%(回答数14)
自分にできることだけをしたいから:7.0%(回答数12)
昇進した場合の人間関係が不安だから:4.7%(回答数8)
職場に女性管理職が少なく、イメージがわかないから:4.7%(回答数8)
現場で働き続けたいから:2.3%(回答数4)
家庭での役割が忙しいから:2.3%(回答数4)
その他:0.6%(回答数1)
昇進したくない理由、1位は「責任を負いたくないから」。2位は同率で、「昇進しても給与がそこまで上がらないから」と「仕事よりプライベートを重視しているから」。
このうちの2つ、あるいは3つを同時に選んでいる人が多く、昇進したくない理由はこれらが相互に絡んでいるケースが多いのかも、と感じました。
例えば「働きに対して精神面や給与面で割に合わないから」というコメントからは、責任が増える、その割に給与は上がらず、精神的なストレスが増えプライベートにも余波が及ぶ、という現実への不安と不満が見え隠れ。上位3つの理由が三位一体となっています。
「メリットと比較し、デメリットが多い」など、昇進で得るものと失うものとで後者の方が多いことを示す回答も多く、皆さんが冷静に状況を捉えていることが伝わってきました。
■昇進するかしないかを選べる時代を目指して
昇進したい女性、したくない女性。両方の回答を読みながら、どちらの言い分も分かる……と思いました。
ひとつ言えるのは、今「昇進したい」と思えるのは、ある意味ラッキーだということ。なぜなら、今いる職場に希望を持っているということだから。
昇進したくない人の理由には、こんなコメントもありました。「レベルの低い人たちしか上層部にいないから」。「女性の上司がいる職場で女性同士のイジメが起きていない職場を知らないので、管理職に就きたくない。憧れもない」。つまり今の職場に絶望しているのです。
これは「職場に女性管理職が少なく、イメージがわかないから」という回答にもつながってきます。目指したいロールモデルが身近にいない。それどころか、ああはなりたくないという気にさせる反面教師ばかり。そりゃ、昇進したいとは思わなくなりますよね。
でも、私は言いたいです。そんな職場ばかりではないよ! と。今いる職場に固執しなければ、昇進したくなるような職場に出会えるかもしれないよ、と。
もちろん、簡単ではないと思います。女性の管理職の割合が先進国のみならず近隣のアジア諸国と比べても低い、というデータが困難な状況を物語っています。
昇進を望まなくなる原因のひとつに、日本ならではの「男女の役割分担」もあるでしょう。
例えば日本の女性、特に母親になった女性は、働いていても毎日ごはんをきちんと作るのを期待されている感があります。食卓にはおかずが何品も並び、子どものお弁当にも栄養バランスと彩りを考え、中にはプロ顔負けのデコ弁やキャラ弁を作る人もいる。働く女性がここまでごはん作りに努力する国が他にあるだろうか、いや、ない(あったらスミマセン)。
私がかつて住んでいたドイツでは、子どものお弁当はチーズやハムをはさんだパンとリンゴ、なんてのが普通。タイや台湾の都市部では、共働きが多く、暑いので家で火を使うのを避けたい、そもそもキッチンがない物件が多いなどの背景もあり、ごはんは屋台で食べたり買って帰ったりする人が多い。そしてドイツもタイも台湾も、女性の管理職比率が日本よりはるかに高いです。
日本も夏は猛暑だし、共稼ぎも今や7割に上るのだから、そろそろ手作り至上主義の呪縛から開放されてもいいのでは? 手作りするも良し、しないも良し、半々も良し、の社会になったら、つまり働く女性が外食やテイクアウトに罪悪感を抱かずに済む社会になったら、「昇進してもいいかも」と思う女性はかなり増えるんじゃないかと私は踏んでいます。空いた分の時間を子供と過ごす時間や趣味の時間にも充てられますよね(もちろん好きで料理している人はいいのですよ!)。
あとは、共働きで稼ぎが同じくらいであっても女性の方が家事・育児負担率が高くなりがちなこと。また、これは男女問わずですが、コメントにも多くあったように、役職が上がって責任が増えても報酬はさほど上がらない企業が多いことなども、昇進欲を阻む要因ですよね。
前者は、少しずつではあるものの変わってきてはいると思います。後者は、行政とも連携した上での改善を期待したいです。出世は責任が増えるから嫌、という人でも納得できる報酬が出るなら心が動くものだと思うので。
もちろん、昇進を望むも望まないも自由。人生で何を優先したいかは人それぞれで、それは他人がどうこう言えることではないですよね。
どちらを選ぶにせよ、「私はこっちがいいな」と思った時に、自分ではどうにもできない障害が減っていってほしいなと思います。前向きな気持ちを失わず、今日も頑張っていきましょう!
(文:ヨダエリ、イラスト:フルカワチヒロ)
※画像はイメージです。
※マイナビウーマン調べ
調査日時:2025年4月18日~5月16日
調査人数:会社員、公務員、団体職員の20代~30代女性(139名)
参考
※1 男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版 第4節 経済分野
※2 株式会社あしたのチーム「出世に関する意識調査」