この春、大学を卒業して会社に入ってきたばかりの社員から、給料の使い方について質問を受けました。
「どれくらい貯金に回したほうがいいでしょうか。学生時代のアルバイト代と比べたら大きな金額をもらうようになったので、自由に使いたいとも思いつつ、正解がわからなくて……」
20代からお金の貯め方や使い方について考えることは、将来の豊かさにもつながり得る大切な習慣です。私から伝えたアドバイスは「見える化」、「仕組み化」そして「自己投資」の3つです。
■貯めておいたほうが良い2つの「お金」
まずは貯めておいたほうが良いお金を「見える化」しましょう。
貯めておいたほうが良いお金は「最低限の生活に必要なお金」と「近い将来必要になりそうなお金」の2つとされています。
「最低限の生活に必要なお金」とは、1人暮らしをしていて病気やけがなどで急に働けなくなったときに、食費や家賃、通院費などの生活費を一時的にまかなえるだけのお金のことです。目安は、月々の生活費の3~6か月分とされています。
そして「近い将来必要になりそうなお金」とは、20代であれば賃貸マンションの更新料や引っ越し代、結婚資金など、数年後に必要になる可能性のあるまとまったお金のことを指します。
2つのお金をあわせて「生活予備資金」と言われていて、これを貯金の目標金額とすることをおすすめします。
目標金額は、日々の暮らし方やライフプランによって一人ひとり異なります。自分の財布から出ていくお金や、数年先までに必要となりそうな出費について、大まかでも良いので洗い出してみましょう。
■お金は「仕組み化」で貯めよう
自分にとって必要な「生活予備資金」の金額が見えてきたら、次は月々の収入から無理のない範囲で貯めていくことのできる仕組みを考えてみましょう。
おすすめの方法は、普段から使う預金口座とは別に、貯蓄用の口座を作っておくことです。「使っても大丈夫なお金」を「手を付けてはいけないお金」と明確に区別しておくことができるので、「ついつい使ってしまって貯められない」ということが起きづらくなるでしょう。
「先取り貯蓄」も効果的です。給料が入ったら一定額をすぐに貯蓄用の口座に移すと決めておいたり、勤め先に給与を複数の口座に振り分ける仕組みがあれば続けやすいでしょう。
ここまで話した段階では、相談してくれた社員の顔があまり晴れませんでした。「お金を貯められそうな気がしてきました。ただ、お金を使いたいことも色々とあって…、ここは我慢でしょうか?」
そこで、もう1つのポイントである「自己投資」について伝えました。
■今だからこそ「自己投資」を大切に
「自己投資」は、自分自身の成長のためにお金を使うことです。20代のうちは、「自己投資」を無駄遣いと捉えず、積極的に取り組むことをおすすめします。
年齢が上がり、家庭を持ったり職場での立場が上がっていくにつれて、自分のためだけに使えるお金は減っていくことが多いものです。比較的、時間にもお金にも自由がある今こそ、学びや体験に可能な範囲でお金を使い、知識やスキル、経験値を得るとよいでしょう。
将来的に何が人生の役に立つかはわかりません。資格の取得や英会話、留学など目の前の仕事に直接結びつきそうなことだけではなく、海外旅行や芸術鑑賞などで視野を広げることもいいですね。
このように伝えたところ「今は自分のことだけにお金を使える、貴重な時期なんですね!」と、お金の使い方のヒントを得てくれたようでした。
後日あらためて話してみると、早速、この夏は訪れたことのない地域へのひとり旅を計画しているとのことです。
皆さんもぜひ、今の自分が価値を感じるコトやモノに「使ってよいお金」を投じ、将来のキャリアアップや資産形成につなげていきましょう。